〜昆虫における翅の起源の解明〜
<背景として>
と、いうことで現生の有翅昆虫(翅をもった昆虫)で最も原始的とされるカゲロウ類を用いて翅の起源を解明しようと試みています。なぜ翅か!?昆虫類は、動物群の中で最初に翅を獲得した分類群で、少なくとも4億年前には飛行していたと考えられています(
Engel, Nature 2004
)。このころというのは、植物はシダ植物しか存在していなかった時期であり、植物でさえさほど進化していない時代から昆虫は飛行していたようです。そして、この
「翅の獲得」
によって、捕食の回避、空いたニッチの独占的使用(自由な移動分散)が可能になり、現在のような多様化が起こっていると考えられます。以上のようなことから、、昆虫の多様化(進化)を考える上で
「翅の獲得」
はその最大の要因とされています。そして、
「翅の起源」
が分かれば昆虫の多様化の謎・道筋が明らかになるのではと考えています。
<目的として>
昆虫の翅は、もともとは付属肢と呼ばれる肢の1部に由来すると考えられている(化石昆虫などの研究から)。しかし、現生の昆虫には、その翅になった付属肢と相同な付属肢が無いため検証は不可能であった。また、付属肢が飛行できるほど大きな構造になるまでの機能というものが疑問で、もともと翅のように大きな構造として付属肢が存在したわけではなく、小さなものから、今のような大きな翅になったわけで、その進化の過程で翅の前の機能について謎が残っています。(もし、翅の前に何も機能が無ければ、その構造は進化の過程で淘汰
されてしまいます)現在、さまざまな説がある中で、最も有力視されている説は
「鰓起源説」
で、これは名のとおり翅は、、鰓から進化してきたというものです。鰓と翅の機能・構造を比較しても、共通する部分が多いですよね。また、鰓自体も付属肢から進化したものと考えられており、翅の進化は、
『付属肢→鰓→翅』
という順に
起こったと考えられます。
しかし、さきほども述べたように昆虫には付属肢がないため鰓と翅の比較だけでしか直接的検証がでいない状況でしたが、今回翅の進化の鍵を握る付属肢の残存を発見したため直接的な検証が可能になりました。そこで、
付属肢・鰓・翅の相同性を検証
し翅の起源を明らかにしようと考えます。
モデル生物として扱うオビカゲロウは、非常に珍しいカゲロウで、源流域の飛沫帯にしか棲息していません。また、低密度で棲息することが多いので発見も非常に困難です。この種はレッドリストに載っている希少種です。なので、サブテーマとして保全の際検討が必要とされる地域個体群間の遺伝的特性を比較しようと思います。