第90回 物質循環談話会

陸域生態系アセスメント手法の開発を目指して
 −イヌワシを頂点とする生態系の解明


 梨本 真 先生
 (財)電力中央研究所 環境科学研究所 生物環境領域

 日時:2005年10月27日(木)16:30〜
 場所:多目的ホール(理学部A棟1F)

 平成11年に施行した環境影響評価法では,生物の多様性の確保と自然環境の体系的保全の視点から従来の「動物」「植物」に加え,新たに「生態系」が評価項目に加えられた。しかし,法施行後5年以上が経過し,生態系アセスメントの事例が徐々に増えてきているにも関わらず,「生態系への影響をどのように評価すればよいのか」社会全体での模索が続いている。

 我々は,生態系アセスメント手法の開発を目指し,イヌワシを頂点とする生態系をモデルとした研究を進めている。イヌワシとその主要な餌動物の食物連鎖に焦点を絞り,それらの生態や生息環境などに関する調査を実施し,イヌワシの必要餌資源量や潜在的餌資源量などのデータを得た。そして,GISなどを利用した解析を行い,仮想事業による土地改変の影響予測を試行した。また,研究の過程では従来の調査手法に代わるDNA解析を用いた新しい手法の開発を試み,ノウサギの生息状況と食性の解明などに成果を挙げた。

 本研究を通して明らかとなったイヌワシを頂点とする生態系の特徴および生態系アセスメント手法の現状と課題などについて紹介する。