3 エオリア諸島の火山

 

エオリア諸島の火山は,沈み込み帯の火山とみなされている. つまりイオニア海プレートが北西方向へ沈み込んでティレニア海の地下には深発地震面も形成されている. ただし,Salina,Lipari,Vulcanoの3火山は島弧に直交する方向に配列している. なお,NapoliやRome地域の火山もこの沈み込み帯に関連してできたという考えもあるらしいが,それらはアドリア海のプレートが東から西に沈み込む(んだ)ことに関連しているという見解もあるようである.


図3-1 エオリア諸島および周辺海域の海底火山の分布(Beccaluva et al.,1985より引用)


1) ストロンボリ火山

ストロンボリ島は北東-南西方向に伸びた長方形に近い形をなし,人家などは北東辺の海岸沿いにある. 島北西部は大きくえぐれていて,これは1万3千年前の山体崩壊によってできた馬蹄形カルデラの痕跡. その中にある現在の火口からストロンボリ式の噴火が続いている.


図3-2 港から見上げたストロンボリ火山

海抜高度は924mであるが,海底からの高度はおよそ3000mになる.


 

図3-3

山頂に向かう登山道から北に白亜の人家・ホテルを見る. その向こう海岸から約1.7kmの海の中にStrombolicchioという名の小島が見える. これは約20万年前の火山の火道が侵食され残ったもの. 1930年の噴火では噴石が火口から4.5kmのStrombolicchioまで飛んだという.


図3-4

登山道から島北西海岸のえぐられた崖,Sciara del Fuocoを見る. 崖には溶岩層が露出し,多くの山羊が草をはんでいる.


図3-5

元気のある人たちは山頂まで登頂したが,それ以外の人は7・8合目あたりで時間切れとなる. それでも,約30分ごとに起こるストロンボリ式噴火を見ることができた. ところがそれをカメラに収めるのは至難の業で,ドーンと激しい音が聞こえた時にはすでに赤熱したマグマ片の噴出は終わっていて崖斜面をころがるのが見えるだけ. 天候はあいにく夕方から小雨.


2) リパリ島

エオリア諸島の中で最大の人口をかかえる島. 数万年前に活動したサンタンジェロ火山や,北東部のピラト火山など数個の流紋岩質火山からなる. ピラト山の北東部は海岸に向かって開いており,黒曜岩質溶岩が流出している.


図3-6 リパリの町から北方を見渡す

正面のお城(要塞?または修道院?)の基盤の岩石が”リパライト”の模式地. この岩石名は現在では使われていないが,昔の地質屋の間では流紋岩の別名として用いられていた. 写真左(西)側の山がサンタンジェロ山.


図3-7 ピラト山の北側にある採石場

8世紀ころに黒曜石の溶岩流が流出した.


3) ヴルカノ島

島北部のFossaという名のコーンとVulcanelloが歴史時代の火山活動場である. その島北部のPortoという村には250人の住民がいるが,観光シーズンには人口は一挙に1万人以上に膨れ上がる. そうした状況での火山災害対策が問題となっている.


図3-8 リパリ島から南にながめたヴルカノ島

奧のスカイラインを作る山々から右手の海岸沿いの岩場までが島の北西部を形作るカルデラの外輪山となっており,その中に回転楕円体形のコーン(基底2km,海抜390m,山頂の火口直径500m:Fossaと呼ばれる)がおさまっている(はげ山の部分). 手前の小島はヴルカネロという小火山で,ヴルカノ島とは繋がっている.


図3-9 コーンの南端から北を見る

はるかにヴルカネロとリパリ島が見える.この火口(Gran Cratere)からの最新の噴火は1888-1890年.


図3-10 火口付近のヴルカノ式噴火による投出岩塊

放射状の冷却節理がきれいにできている.


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