付加体の構造形成過程の研究
付加体は,プレートが海溝で沈み込むときに,海洋地殻の一部とその上の堆積物が,大陸の縁に押しつけられてできた地質体です.チャートなどの遠洋性堆積物,海溝に堆積した砂岩泥岩などの堆積物,それに海山などをつくっていた玄武岩や石灰岩などによって構成されています.部分的に初生的な層序「チャート砕屑岩シークェンス」が認められますが,普通は著しく変形して,岩石は「切れ切れ」「バラバラ」になっています.このようなひどく変形した岩石からなる地質体は「メランジュ」(melange)とよばれています.
わたしたちは,メランジュを含む付加体の構造やその形成過程を明らかにすることを目的として研究を進めています.
褶曲したチャート(岐阜県各務原市)
褶曲の姿勢と非対称性から,変形時にはたらいた単純剪断の方向を復元することができます.
チャートとともに褶曲した砂岩シル(愛知県犬山市)
砂岩シル(白矢印)はチャートと調和的に滑らかに褶曲しています.
混在岩中の砂岩のクラスト(長野県開田村)
変形したクラストの非対称性から,変形時にはたらいた単純剪断の方向を復元することができます.
混在岩の顕微鏡写真(長野県安曇村)
微小なクラストの変形構造も,単純剪断の方向を復元するうえで重要な情報を提供します.
断層破砕帯(岐阜県各務原市)
断層破砕帯の構造から,付加体の成長に関連した断層の運動方向を知ることができます.
L−テクトナイト(長野県高遠町)
高封圧下で一軸性の伸長変形を受けたことがわかります.
炭質物(長野県木曽福島町)
輝炭反射率から地質体がおかれた温度条件を知ることができます.
粘板岩中のイライト(東京都奥多摩町)
イライトの結晶度やb0値から,地質体がおかれた温度・圧力条件を知ることができます.