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山の雪

 わが国の山岳地域の生態系は積雪の影響を強く受けているし、山岳地域の積雪は水資源(天然の白いダム)としても重要な役割を果たしている。そのため、山岳地域の積雪の多寡が、気候変動によって如何なる影響をうけるのかも重要な問題である。2014年12月12日に気象庁と環境省から発表された「日本国内における気候変動予測の不確実性を考慮した結果について」では、現在(1984年~2004年)と比較した将来(2080年~2100年)の気候変動の予測結果を取りまとめている。それによれば、年最大積雪深はすべてのシナリオで減少し、降雪量はほとんどのシナリオで減少する。特に減少量が大きいと予測されている東日本日本海側地域の代表としてあげられている新潟では、現在の冬季でも雪/雨の閾値付近の気温であるため、気温が上昇するシナリオでは、降雨が増え降積雪量が減少するのは当然である。現在でも、低標高地点では暖冬の年は降雨率が高い。一方、上記の予測では、北海道の寒冷地では降雪量が増加となる地域もある、と報告されている。現在でも、暖冬か寒冬かに関わらず、北海道の年累積降雪深はほとんど変わっていない。北海道の冬は、雪/雨の閾値よりも低い気温で降水となるので、わずかの気温変動では、降水粒子が固体から液体になることはないためである。では、なぜ、同じような気温条件で雪が降っている本州の山岳地域でも、将来は降雪量が多くなると予測されないのだろうか。それは、観測地点の配置に問題があると言わざるを得ない。気象庁による、積雪深も含めた有線ロボット気象計としては、日光の1292 mが最高所で、次いで菅平の1253 mである。つまり、1292 mより高所では、気象庁による降積雪量の観測がなされていないのである。富士山(観測地点の標高:3775 m)では、2004年まで積雪深が観測されていたが、測候所の廃止とともに観測されなくなったのである。ちなみに、富士山で観測された1966年から2004年までの年最大積雪深は、統計的に有意な増加傾向を示している。菅平や白馬(標高:703 m)でも、アメダスの観測期間では年累積降雪深の変動傾向が正である(統計的には有意ではないが)。金沢(標高:5.7 m)、富山(8.6 m)、高田(12.9 m)などでは、観測値による累積降雪深の減少傾向は統計的に有意であることとの差異は、雪氷学会の皆様にはご理解いただけるのではないだろうか。       (「雪氷」77巻1号より その4)

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