どうも,島野です.久々の更新になってしまいました.いやあ,授業が始まってしまうと大変なんですよ,結構まじめにやっちゃうんで.それと,国 土交通省の関係でやっている,千曲川の河畔植生の調査が大変で,週2回でかけたりしています.こんな調査ができるのは私の部屋の学生諸君のおかげです.あ りがとう,竹内君,清水さん.

 で,今日のお話は,千曲川でもブナ林でもなく,松本市内の水生生物の話なんです.
 松本は,大きく見ると北アルプスや美ヶ原・霧ヶ峰高原に囲まれた盆地なので,市内のあちこちに湧水が見られます.こうした,水のある町って言う は,水が飲める井戸があると言うだけではなく,その井戸,湧水を起源とするきれいな水路が町の中を流れているということにつながります.私が松本に越して きて思ったのは,こうしたきれいな水路がいくつかあることでした.
 松本の人たちは,こうした状況を,本来誇りに思っていいのだと思いますが,余所と比べないことには,なかなかこうしたすばらしさが分からない, と言う状況ではないでしょうか.
 最近,NPOの「川の自然と文化の研究所」の有志の皆さんと,そう した水路に,どんな生き物がいるのかを調べに出かけたんです.今回はそこで見られた水生生物を,動植物こみこみで紹介しようと思います.こうした水生生物は,水のきれいさを反映する,指標生物でもあります. ムシのアップ写真とかもあるので,苦手な人は注意.



源智の井戸
 ここは,松本市内では有名な,源智の井戸,という所です.井戸にはきちんと屋根がついていて,周囲もきれいにされています.
 大勢の人たちが,ポリタンクを持って水をくみに訪れています.

 周囲の水路.ごちゃごちゃして見えるかもしれませんが,汚らしい泥なんかはたまっていませんし,いやな臭いもしません.セリだとか,エビモなんかが生育 しているのが見えます.

 こちらは,伊織の井戸,といわれている所.水が出ている所は,写真を撮っている私の右側で,道路を挟んだ所なんですが,その周囲が,こんな風にちょっと した公園のように整備してあります.
 いいですね!

 ショウブかなんかは,植えられたものだと思いますが,セリは自然でしょうし,水中にはエビモが見られます.
エビモ
 これがエビモ.エビのような形をした藻(モ)という意味でしょう.これは,水のきれいな所から,比較的汚れた所まで,広く生育しているということのよう です.
サワガニ
 サワガニもいます.淡水で,体に毛のないかにを見つけたら,このサワガニです.きれいな水の指標.毛のあるのは,ええと,なんだっけな...調べておきます.
アオウキクサ
 田んぼなんかでも,こんなのが浮いているのがよく見られますね.地面に取り出して,観察してみましょう.アオウキクサです.
アオウキクサ
 アオウキクサをひっくり返すと,真ん中から根が1本生えているのを見ることができます.アオではないウキクサという種類もありますが,こちらは,5-7 本まとまって根が出ますので,こうしてひっくり返せば見分けることができます.
ヒルの仲間.イシビル?
 いやー,写真の上に写っているのは,ヒルです.シマイシビルやナミイシビルなどのイシビルの仲間だろうということです.これがウニョーン,ウニョーンと動くんです.
 今は,縮んだところ.
ヒルの仲間.イシビル?
 のびるとこんな感じ.これを繰り返して,移動します.身近な水路にヒルなんているのか,と思ったんですが,専門家にいわせると「そりゃいるよ」というこ とのようです.
 ちなみに下に写っている巻き貝は,カワニナに似ていますが,コモチカワツボという外来種だそうです.
ブユ(ブヨ)の幼虫
 イヤーンな感じが続きますが,ブユ(ブヨ)の幼虫だということです.写真中央の小さな石に体の後ろの部分をつけて,写真のように,立ち上がるようにして います.で,私がカメラのファインダーを覗いている間,体の下の部分を支点にして,あっちこっちに,グイングインと動きます.
イトミミズ
 イトミミズだそうです.私は,高校時代に生物とかやらないできたので(なんと物理で大学受験した),大学時代から勉強した植物以外の動物,特にこういう のは,からきし弱いんですよ.
 イトミミズ,名前はもちろん聞いたことはあったんですが,こんなにアップで見たのは初めて.
フロリダマミズヨコエビ
 こちらはヨコエビ.何でも水中を横になって泳ぐのでこうした名前になったとか.卵を抱えているんですかね,この写真の個体は.
 ...と書いていたんですが,どうもこれ,フロリダマミズヨコエビのようです.外来種.訂正.
ウズムシ・プラナリア
 こちらはウズムシ.というよりも,プラナリアといった方が,分かる方が多いのではないでしょうか.よく理科の実験とかで,カミソリで半分にしても,再生して2個体になってしまうやつです.私も自分でやったことはないんですが,テレビで見ました.
 この写真もよく見ると目が写っていて,なかなか愛嬌があります.
ユスリカの幼虫
 こちらは,ユスリカの幼虫です.これも,ずっと元気に動くので,なかなかピントが合わせられません.
ユスリカの幼虫
 こんな感じで,元気に動きます.
トビケラの幼虫.マルバネトビケラ,エグリトビケラ
 石ころやら,ゴミやらが棒状に固まったようなものが見えますが,筒状になっていて,中にはトビケラの幼虫が入っています.
トビケラの幼虫.マルバネトビケラ,エグリトビケラ
 科学のためです,出てもらいましょう.全体に大きな筒と,小さな筒があって,この2タイプ,どうやら別種のようです.大きい方はマルバネトビケラ,小さい方はエグリトビケラではないかということです.私にはもちろん分かりませんが,マルバネトビケラは水のきれいな所に生息するということです.いいじゃないですか!
トビケラの幼虫
 こっちは,小さい筒の方.大きい方は,植物の葉だとか木片なんかも使っていましたが,小さいやつは,石だけを使っていました.
トビケラの幼虫
 写真を撮るのにグリグリしていたら,中から出てきました(出させてしまった?).うわ,すごい凶暴そうですね.エグリトビケラとはまた別のトビケラかもしれませんが.
 あ,それから誤解がないようにいっておきますが,これらの生物は,井戸の水が流れ 込んでいる水路にいるもので,井戸の中にすんでいるわけではありませんよ.井戸の水を飲んでいる方,安心して下さい.

 いろいろ場所を移動しながら,場所別の生物を見ていきます.
セキショウ
 水辺の植物ですが,セキショウというものです.いや,だそうです.今回,環境調査のプロ,百瀬さんに教わりました.
セキショウ
 葉はこんな感じ.裏にも表にも中肋(太い線のように見える部分)はありません(目立ちません).
セキショウ
 花の部分です.もう季節的に終わってしまいましたが,一応記録しておきましょう.
トビケラの幼虫
またトビケラを見つけました.小石だけをまとっていますが,先ほどの小さいタイプ(小石だけをまとっていた)とも,また別種のようにも見えます.
トビケラの幼虫
例によって,出てきてもらいました.わたしはペンタックスのマクロレンズで写真を撮るだけ.後は専門家の先生方にお任せです.
チドメグサ?
 チドメグサが水路に水没していました.この仲間にはいくつかあるんですが,それはまた今度.
 ひょっとしたらノチドメかもしれません.
ナガエミクリ
 やっぱり,植物の方が,見ていて安心できますね.水路に葉を長くのばしている植物があったんですが,ナガエミクリだそうです.
 図鑑の写真では水から出ているんですが,流水中では沈水してしまうんだそうです.
ナガエミクリ
 水の中にあるものを遠目に見るとセキショウにも似ていたりするそうですが,この仲間は葉が肉質で, 葉の断面が三角形になるそうです.
 それに対してセキショウは,上で見たように平ら花を持ちます.
ナガエミクリ
  ナガエではない,ただのミクリという植物もあるんですが,これは,流水中でも葉が立つということです.
 ほかにエゾミクリというのがあって,ナガエとにているんですが,花で区別しないといけないそうです.
 百瀬さん,ありがとうございます.

 自転車で,お城の北側に回ったり,いろいろ.私も知らなかったんですが,本当にいろいろな所にあるんですね.
ミズムシ
 名前が笑っちゃいますが,ミズムシというんだそうです.
 足がかゆくなるミズムシとは,もちろん全然関係ありません.あっちは白癬菌という,なんというかカビの仲間ですよね.
カワモズク?
 なんだろうなあ,このカワモズクみたいなの,という話でした.カワモズクって,なんか素人が適当に付けたような名前ですが,れっきとした標準和名なんで すね.藻類のはずです.
モノアラガイ
 巻き貝を見つけました.先ほど見たコモチカワツボとは違いそう.
モノアラガイ
 しばらくすると,平らな角(触角)を出してきました.モノアラガイのようです.サカマキガイという外来の巻き貝がいて,似ているんですが,貝の巻き方が 反対なので見分けられるそうです(それで名前が逆巻貝).
コモチカワツボ
 こちらは,触角を出した状態のカワニナで触角はとんがっていますよね...と書いていたんですが,間違いです.これ,現在各地で繁殖しているコモチカワツボらしいです.
 カワニナのかわりに,ホタルの餌として持ち込まれたりしているようですが,実際にはゲンジボタルには食べられず,地域の動物相を壊してしまいます.要注意!
ミズハコベ
 こちらは,ミズハコベだそうです.物の本によると,昔はどこに出もあった種らしいですが,水の汚染や農薬などでどんどん減ってきているとか.
 
ミズハコベ
 このミズハコベ,水中の葉は線型で細く,水から出た所のは葉は広くなるんだそうです.うーん,すごいですね.

 といった感じで,モノアラガイ,カワモズク(だったら,ですが),そしてサワガニなど,水がきれいでないと見られない生物がいくつも見られました.また,こうした町中の 湧水起源の水路は,農薬なんかから逃れているため,ミズハコベなんかが生育できる,貴重な環境になっていることが分かりました.
 足下の環境も,もっと見直して,こういうものを大切にしていく必要があると感じた,初夏の一日でした.まる.


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