雑感

UPDATE: 2006年7月21日

ジャガイモの芽は毒...から考える家庭の崩壊/文化の衰退

 東京は江戸川区立鎌田小学校で,理科の授業で栽培したジャガイモを皮ごと茹でて食べてしまい,教員二人,児童(6年生)75人が食中毒を起こしたという事故が起こりました(7月20日東京都福祉保健局発表.毎日新聞21日ネット版より).私は下鎌田西小学校という所の出身なので,なんというか,比較的ご近所の小学校です.

 事故にあった方々には,早く回復して頂きたいと思います.しかし,「ジャガイモを皮ごと食べてしまうなんて,なんてことを!」と申し上げたい.

 理科の教員だから,云々(うんぬん)の前に,この人たちは,教員も子供も,多分,自分で料理したこと無いんでしょうね.親の手伝いをしたこともなかったし,親も手伝わせなかった,そんなことではないかと推測します.もちろん,全くやったことがないということではないんでしょうが,ジャガイモのような「身近な食物が毒をもっている」事を知る(教える)ことは,包丁の使い方,ガスの使い方(元栓の開け閉め,換気,燃えるものをそばに置かない)などとともに,もっとも基礎的なことです.

(この先は,さらに「うち,オール電化なんだもん」ということで,ガスを使ったことがない人たちが教員とかになって,服の袖を焦がしたり,中毒を起こしてしまうようになってしまうのではないかと心配です.)

 ジャガイモの芽は,ソラニンという毒を持っているため,取り除いて食べないといけません.それから,ジャガイモを長期に保存していると(特に日を当てたりすると)緑色になってきますが,こうした部分も同様です.私も,保存が悪くて緑っぽくなったジャガイモを,もったいないので食べることがありますが,ものすごく皮をあつくむきます.このソラニン,熱を加えてもほとんど分解しないとされています.ですから,茹でたりあげたりしても,ダメなんです.詳しく知りたい人はネットで調べて下さい.「ジャガイモ ソラニン」とか「ジャガイモ 毒」で検索すれば,いくらでもヒットします.

 自分が中毒で入院するのは自業自得,仕方ないとしても,人様を巻き込んでは大変なことになります.ジャガイモは,非常にポピュラーな食べ物です.若い方々は,ハンバーガーの付け合わせや,ポテトサラダなどでお世話になることが多いでしょう.しかし,食べるばかりで作ったことがないと,今回のようなことを引き起こしてしまいます.

 もちろん,料理なんかしなくても,そういうことを知っていて,きちんと対処できるのであればそれでも問題ありません.ですが,実際,自分で経験していかないとなかなか身に付きませんし,親と一緒に台所に立つ機会があれば,自然と「ジャガイモに毒がある話」を聞かせてもらえるはずです.

 私は今回,知識のなさよりも,そうした経験のなさに怖さを覚えます.今回の事故は,日本人が(いや,どこの国でも同じでしょうが)引き継ぎできた文化,伝承が,きちんと引き継がれていない,今後ますます引き継がれないようになってしまうことを示唆しているように思えます.今回のことから,家庭の崩壊や,文化の衰退(もちろんジャガイモは日本にとって新しい食べ物ですが)を懸念するとしたら,私は心配しすぎなんでしょうかね.

 知識の詰め込みばかりでなく,そうした生活に必要な経験を積つませていく,コミニュケーションをとれるように子供を育てていく,これが小学校などの総合学習で必要なことではないかと思うんですが,どうでしょう.その上で,国語,算数などの基礎学力,理科や社会科などを通じての考える力(原因と結果から)などをしっかり身につけてほしいですね.知識も経験もたくましく積んでほしいと思います.なぜなら,これからの日本は,これまでの(バブル期までの),右肩上がり・バラ色の発展はなく,自分を頼りにして生きていかなければならないんですから.