島野です.香川シリーズ2回目の今回は,香川大農学部 小林 剛 准教授の固定調査地を見せて頂く,というものです.
 小林先生は,大学から車で数十分の県有地を借りて,モウソウチク林の研究をされています.県の方も,拡大し続けるモウソウチク林には危機感 を募らせているようで,ぜひ研究してほしい,ということなのでしょう.
  私は,不勉強 & ミーハーなので,難しい内容はともかく,拡大するモウソウチク林に浸食される常緑広葉樹林,それを防ごうとする研究者の戦いを見る,といった所です.
  後は,日頃,信州で見られない植物が見られたら,良いな,と言う感じ.  では,どうぞ.

「やあ,島野研ホーム・ページをご覧の皆さん,こんにちは.私が小林です.

あまり研究ばかりやっていても,疲れてしまうでしょう.今日は気晴らしに,私の調査地でも歩いてみませんか.

えっ,讃岐うどん?
そりゃ毎日食べますよ」

ハイ,じゃ,よろしくお願いします.

研究室の小林 剛 准教授
椅子はもちろんプレジデント・チェアーだ.

 まず,香川といえばため池です.いや,本当は香川といえば讃岐うどんなんですが,食べることに夢中だった私は,讃岐うどんの 写真,セルフ店の写真,後は製麺所の中でうどんを食べられたりするんですが,そうした写真なんかは撮っていないんですね.ダメですね.
 ため池とうどんは全然関係ないことではなく,この地方は雨が少な い,で,ため池で農業用水確保,また,水田のように水を使わない小麦の生産が盛んで,うどん文化を生み出すきっかけになっている,といったつながりがあり ます.


 写真が暗いのもありますが,モウソウチク林にはいると,うっそうとしています.夏とかは,蚊が出て大変そう.

「そうなんですよ,夏は暑いし,蚊は出るは,で調査にならないんですよ」
「なるほどー」
「で,こういう季節の方が,やりやすいんですよね.ヘビもまだでないし」
「うーん,ヘビかあ」
モウソウチク
 モウソウチクは,皆さんご存じのように,地下茎で繁殖します.繁殖に関しては圧倒的な有利さ.しかも,林床を被って暗くしてしまうので,他の植物はどん どんいなくなってしまいます.

香川の里山,ピンチ!

 こちらは,小林研究室の皆さんが手入れ・管理をしてモウソウチクの侵入を阻んでいる所です.落葉広葉樹のもとにアオキやヒサカキなんかが生えていて,と ても良い里山状態です.

「どうやって竹の侵入を阻止するんですか?」
「いや,そりゃもう,出てきたのをひたすら抜きます」
モウソウチク
 モウソウチクについて,少し勉強しましょう.小林先生は,香川でモウソウチクをする前から,アズマネザサ(竹)や各種ササについて研究を続けられた,タ ケ・ササのエキスパートです.

「こうやって,黄色くなってくると,後2,3年で枯れちゃうんですよ」
「ほー,なるほど」
モウソウチク
「こうやって,まだタケノコの時の皮が残っているのがあって,こういうのは,去年出たばかりのやつですね」

「ふーん,なるほど」
モウソウチク
「後は,島野さん分かると思いますけど,モウソウチクは,節のリングが一重なので,たとえ細くても他のタケと間違えません」

「うーん,まったく」
カナメモチ
 で,タケ以外に出てくる植物を見ていきましょう.どんな種類なら生き延びやすいか,タケを除いていったら,どんな植生が回復するかを知る鍵になります.

金比羅さんでも見たカナメモチが枯れずにがんばっていました.
カゴノキ
 そしてこの幹肌,そうです,これが鹿の子模様のカゴノキです.
カゴノキ
 カゴノキ,葉っぱはこんな.暗いんでストロボ炊いたら,夜中の写真みたいになってしまいましたね.
ナナミノキ
 でた!ナナミノキ(ナナメノキ).私の中では新種です.最初分からなくて,鋸歯と葉の質,脈の感じからアオハダかと思ったんですが,アオハダは落葉,こ ちらな常緑です.あと,こちら,ナナミノキの方が葉の先が尖っていますね.
 あとから図鑑で調べて分かったんですが,アオハダと同じ属で,常緑,落葉の違いはあっても兄弟みたいな種のようです.
 私の勘もまんざらでもないですな,フッフッフッ.

 小林先生は林冠観測用のタワーを持っています.建築作業用の足場をくみ上げて(もちろん業者さんにやってもらいますが),フェノロジーの観察,光合成, 蒸散量,その他の測定をします.

 私は,煙と何とかの何とかの方なのでとりあえず高い所から見る風景が好き.
 しかし,モウソウチクの樹冠を観察できるタワーなんてなかなか無いでしょ?

「ま,日本に二つあるうちの一つがここです」
「おーお」
ネズミモチ
 タワーをおりて,フロラを見ていきましょう.
 調査用紙とかは持っていないので,とりあえず見た種は全て写真にとります.で,あとで写真を整理して,フロラを整理.
 こちらは,ネズミモチ.関東ではさんざん見ましたが,信州ではとん とご無沙汰.

モチツツジ
 モチツツジですね.私も久しぶりです.
モチツツジ
 葉をめくると,裏面脈上に腺毛がびっしり.
アラカシ
 アラカシ.カシの仲間でも,土壌の状態があまり良くない所に出るとされています.ここはマサ土で水はけも良すぎるようで,尾根沿いは乾燥しそうです.
ヒサカキ
 こちらはヒサカキ.鋸歯のないサカキは,前回,金比羅さんで見ました.
ヤブツバキ
 ヤブツバキ.基本的なものはきちんと出てきますので,典型的な常緑広葉樹林の里山といえましょう.
 ここで調査した結果が,それ故,普遍性を持つということです.
ホソバタブ
 ホソバタブのように見えます.タブノキ,ホソバタブ(どちらもクスノキ科タブノキ属)は,冬芽が特徴.
 で,タブノキは海岸沿い,ホソバタブは山中ということなので,ホソバタブで良さそうに思うんですが,どうでしょうか>小林先生
2007.05.15追記.
 その後小林先生から連絡を頂き,「ホソバタブは山地渓谷に出る種だ」ということを教えて頂きました.冬芽も小さいし,前述のカゴノキかもしれませんね.常緑樹の修業の道はまだまだ遠いです.
藤尾山
 せっかくですので,もう少し足を伸ばして,藤尾山という神社にやってきました.香川のように,あまり高い山がない,古くから開拓されてきた地域では,自 然林があるのは,もう,神社のまわりとかしかないんじゃないかと思います.山を除けば.

 この神社,建物の一部ががけの上に張り出していて,そのため自然の常緑広葉樹を上から見ることができます.
 うーんすごい.
 ちなみに,奥に茶色い山が見えますが,あれ,みんな竹林です.

いやー,堪能しました.ナナミノキのような新種も見ましたし,タワーにも登らせて頂きましたし.

あとですね,うどんは完全に生活の一部なんですよ,香川の人たちにとって.




たとえば信州でそばが名物,といっても,信州人が毎日店に行って,そば食べないでしょ?手打ちだと800円 とか1000円とかして 高いし.

でも,讃岐うどんは,基本150円とかで,具を付けても300円とか何ですよ.だから毎日のように,ではなく,本当に毎日食べるんです.昼食とかに.

左の写真は,香川に滞在中,朝食を食べた食堂の脇で撮影.ええ,うどんでした.

讃岐は,気候も穏やかで和みます.

小林先生,ご案内頂いて,ありがとうございました.
次回,香川に残る,貴重な太平洋型ブナ林について.

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