今回は飛行機で参加.松本-福岡間は毎日飛んでいるわけではないので,大会開始より一日早く福岡行き. 良い天気でした.写真は多分木曽御嶽山.清水さんが撮影. |
大会は明日から,ということで,この日は九州の植物調査. 白水さんの母方のご実家が,神社の神職をされているとのこと.という縁があって,大分は中津市の神社に.若籏神社(わかはたじんじゃ,籏はたけかんむり のある,難しい方の字)と言うところです.八幡様をまつっています. |
立派ですね.奥に本殿があって,手前は神楽を奉納する舞台です.お祭りの日でもないのに,しめ縄に紙 垂(しで,白い和紙で出来たギザギザの紙)がき ちんと付いていました. |
狛犬は奥にある(いる)のですが,そのさらに外に二体の人物(?) が.初めて見ました. 白水さんの弟さんが色々詳しくて,話を伺うと,これ,仁王像(にお うぞう)なんだそうです.金剛力士.国東半島を中心に,日本の天台宗 を開いた最澄の影 響があって,神仏習合から神社に仁王様がまつられていると. 狛犬も,仁王様も,左右で口の形が違います.片方は開いていて「阿(あ)」もう片方は閉じていて「吽(うん)」,両方あわせて阿吽(あうん)です.始ま りの言葉と終わりの言葉で,宇宙を表すとか. |
こちらは本殿. お寺と違い,神社の周辺はその山自体や樹木,滝などの水の流れ自体が神様だったり,神様のおりる舞台なので,自然な環境が残っています.ですので,神社 林はその地域の自然,特に植生環境をを知るのに適した場所なのです. |
さて,お礼申し上げて,見ていきましょう.ポピュラーなものから.こちらはネズミ モチ.モチノキ科です.常緑,全縁で葉が対生しているところがポイン ト.サカキなんかは互生です. |
似た種類に,トウネズミモチ,という中国原産の外来種があります. 見分け方は,写真のように空に透かしてみたときに,葉脈が透明に透けて見えればトウ ネ ズミモチ.この写真のように透けて見えない状態のものは,ネズミモチ,です.というわけで,こちらは,在来種ですね. |
どのへんがネズミなのかというと,この実の形.ネズミの糞に似ているから,という理由でつけられました. ま,今の大学生でネズミの糞を見たことをある人は少ないでしょうが. |
言わずとしれたアラカシ.特に九州は多いようです.葉の上端半分が 大きく鋭い鋸歯をもっていますね.これがポイント. |
神社といえば,サカキ.常緑,全縁で「互生」です.枝のさきに, ヒュッ,と伸びた冬芽をもちます.鋸歯があればヒサカキ.後で出ています. 神棚に供えるのがこのサカキです.ので,スーパーの花売り場とかで売っていますね. |
おっ,ナギですね.マキ科マキ属と言うことで,これでも針葉樹の仲 間と言うことになります.春日大社や熊野大社で有名. |
私も実をつけているのは初めて見ました.オリーブの実をやや大きくしたような感じ.食べられないとは思いますが... |
境内から少し離れます.こちらはナワシログミ.葉の裏が白っぽく, 褐色の毛がぽつりぽつりと生えます(鱗状毛). |
花にも鱗状毛があります.写真は実の状態ですが,実のさきに花びらの名残が残っていますね. |
最初,タチイヌノフグリかと思ったんですが,どうも雰囲気が違う. 帰化種のフラサバソウじゃないかと写真をたっぷり撮ってきて,調べて みたらやはりフラ サバソウ. ヨーロッパ,アフリカ原産.長崎から日本に入ったものをFranchetさんと,Savatierさんが報告したとのこと.二人の名前を記念して和名に 取り入れたのがフラサバソウの名の由来だそうです. |
どこが違うかというと,一つはこの毛の多さ.茎や萼に長めの毛が びっしり生えているのが肉眼で見て取れます.タチイヌノフグリは,毛はあるものの,こんなに密ではありませ ん. それとタチイヌノフグリは花茎がほとんどありませんが,こっちはたっぷりとあります. 存在は知っていましたが,初めて見ました. |
もう一つ,私にとっての新種.ヒメウズです.キンポウゲ科で,比較 的トリカブトに近い仲間.和名のウズというのは,トリカブトのこと.ですから,和名の 意味は「小さなトリカブト」という意味ですね.もう少しで満開と言うところ. 写真を撮って,何だっけなあ,何だっけなあ,と逡巡していたのですが,突然「ヒメウズ」と思い浮かびました.見たこともないのに. ハッ,これって神様が... |
春を告げる植物たち.ノカンゾウかヤブカンゾウですね.いわゆるカンゾウ,で,これぐらいのサイズのものを取って (取るのであれば,根は残しましょ う),熱湯でさっと茹でます.で,酢みそ(普通の,みそ汁に使う味噌 とかを,お酢で溶いたもの.砂糖を入れるとマイルドになります)にあえていただくと最 高.癖のない日本酒や焼酎でどうぞ. |
Spring has come! という感じ. 「え,これがなんなの?」という人も多いと思いますが,これがノビル. ユリ科でネギやなんかの仲間です. |
畑の脇の雑草ですので,一本だけ拝借.地上部が二つに分かれていますが,この二つの葉をぴっちりくっつけると,円柱になります.円柱を二つに割って葉に なっているということで,この辺の構造はアカマツなんかの葉と一緒. |
それと地下部に鱗茎(りんけい)が出来ます.これも食べられます. さっと熱いお湯で茹でて... (以下,省略) 面倒なら,水洗いしたものを,味噌をつけて食べるだけでもいけます.癖のない日本酒か... (以下略) |
おお,これも暖温帯にこないと見られません. カニクサ,というシダ植物です.シダ植物なんですがツ ル.珍しいですね. 暖かい暖温帯常緑樹林の林縁なんかにでますが,カニクサ自体は夏緑,つまり冬は枯れてしまいます. といった感じで若籏神社を後にします. お世話になりました. |
先ほどの大分県中津市は,宇佐市と隣り合わせ.せっかくですので足を伸ばし,宇佐 神宮の神社林も見ていきましよう. ここは全国の八幡様を祭った神社の総本社です. |
いきなりですが,宇佐神宮の拝殿.何か,普通の人たちと違うコースで,いきなり拝殿の正面にでてしまいました.普通は土産物屋を通ったりするようです. 参拝をするのはこの拝殿からで,本殿は奥になります.本殿は国宝だそうですが,写真,撮り忘れてしまいました.いや,撮らない方が良いのかな. 普通は二礼二拍手一礼ですが,ここでは四拍手するのがしきたりだとか.ぱんぱんぱんぱん,と小気味いい音が境内に響きます. |
で宇佐神宮の神社林はイチイガシ林の天然記念物になっています.ス バラシイ. |
イチイガシ林なんですが,写真はミミズバイ.おお,またしても My 新種.常緑で,互生,単葉,ほぼ全縁.当年枝が太く,褐色の毛に覆われています (後に落ちるようですが). |
シダ植物,イノモトソウです.オオバノイノモトソウかと思って 写真を撮りましたが,羽軸に翼があるのでイノモトソウでした.オオバノ イノモトソウは,羽軸に翼がありませんでした. 先日までここに「オオバノイノモトソウ」としていたのは間違いでした.お詫び して訂正します. |
こちらは植木でよく見ますね.ヒイラギモクセイ.ヒイラギに比べる と葉が大きく,鋸歯の数も多いです. |
写真左はヒメアリドオシ. アリドオシ,というのがあって,このアリをも刺してしまう様なトゲが特徴.で,ヒメアリドオシは葉が小さいのでトゲの長さは葉の長さの3分の2以上になり ます.アリドオシは葉も大きいんですが,大小の葉が交互に付きます.オオアリドオシは,葉が大きいので相対的にトゲが小さく,葉の長さの1/3くら い. アリドオシ3種,完璧! |
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知っている植物にあうとホッとします.ヒサカキ.先ほど,若籏神社 でサカキを紹介しましたね.あちらは全縁,こちらは鋸歯. |
花というか,実というか,枝の途中にぽろぽろと咲きます. |
これも私には新種でした.調べるとクスドイゲ.イイギリ科クスドイ ゲ属の樹木です.属の名前すら聞いたことがありませんでした.いやはや,まだまだ修行 が足りないですね. |
物の本によると,海岸近くの林内に生育とか.しかしすごいトゲですね. 今回は南方新社の「九州・野山の花」という図鑑に助けられました.4000円ぐらいして,安くはないのですが,お勧め. |
ヒメイタビです.イタビカズラの仲間.写真だと分かりませんが,葉のサイズは長さ2-3cm,若い枝か らでる葉には2,3個の鋸歯があります.イタビカズラや オオイタビ(後で出てきます)には鋸歯は出ません. イタビカズラは葉が尖り,オオイタビはあまり尖りません.3種,完璧. |
春と言えばスミレですね. |
さて,発表当日.ポスター発表は,説明するタイミングやなんかが難しいですよね.慣れないと.それと,相手がどの程度の知識を持っているか,興味を持って いるか. ま,それで,そういうことを通して勉強していってもらえばいいと思います. 白水さん,井出君,清水さん,ありがとうございました. |
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一方,関口君は得意の話術をひっさげて,口頭発表.物循の修論発表会では賞を取った発表でしたが,専門家の皆さん相手に,どうだったでしょう. 「いやー,ちょっとしゃべりすぎちゃいましたね」 「少し時間があって,質問なんかがたくさん出る方が,勉強になったりするね」 「イヤー,そうすねぇ.またがんばります」 はい,またがんばって下さい. |
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時間を見つけて行動しましょう.いや,時間は作るものです. |
香川大・小林准教授(以下小林) 「島野さん,今回,どっか行きました?」 私 「柳川で川下り」 小林「ええ?良いなあ,連れてって下さいよ(笑)」 私 「いやいや,柳川も,遊びじゃないから.私も,神社林とか,水辺林とか,研究分野が定まっていないと,色々忙しいんですよ(^^;」 |
船頭さんの解説付きです.柳川の水路は水堀の役割をもたせて人工的に作ったもので,その護岸のためにヤナギを植えたりしたとのこと. なるほど,成長がはやく,根の活着が良く,水環境に強いヤナギの特性を 良く生かしています. |
ケヤキ(確か)の枝にカラスの巣がかかっていました.ハシブトかはシボソかは分かりません. 巣材は木の枝に加えて針金のハンガーが多く使われていました.いまどき,ですね. |
柳川は北原白秋の生家.ここまで来たのですから拝見していきましょう. |
白秋の「からたちの花 」って童謡,聞いたことありますね.これがカラタチ.花ではなくて枝 ですが,このすごいトゲが特徴.ミカン科ですので,まさにミカンのような実をつけま す. 病気などにも強いため,温州ミカンなど,他のミカンの台木に使われ るようです.つまり,カラタチの根っこの上に,他のミカンを接ぎ木し て使う,と. |
水路を歩いてもどります. ありました.オオイタビ.木性のツルですが,なかなかでかい.実が なっているのが見えますが,ウメの実ぐらいの大きさです. 他の仲間との見分け方は先にヒメイタビのところで説明したようなこ とです. |
イタビカズラと違い,オオイタビの葉の先はあまり尖りません. イタビカズラに付いては,佐渡植物記4で 紹介しています.ね,イタビは葉が尖っているでしょ? 先のヒメイタビも,このオオイタビも信州では分布しません.viva 柳川!viva 九州! |
で,ですね,柳川から帰る,ほぼ通り道なんです,太宰府天満宮.一応乗り換えはするんですが.何か今回は,神社づくしな感じですね.藤原道真.学問の神 様. 西鉄という私鉄で福岡から出かけるのですが,「太宰府,柳川観光切符」というのがあって,これを使うと便利で,安いです. |
ちょうど,神主さんが祝詞をあげられていました. 鏡が見えますね.神社のご神体として鏡が上げられているのは良くあることのようで,内在神に感応するとか.いや,私は素人なので,よく分 かりませんが. |
なんかのお祭りです.牛の行列.牛は天神様のお使いということですが,人手が多かったので,なかなか大変. |
ええと,飲んだり,出かけている写真ばっかりですが,生態学会参加中は話をしっかり聞いていて,だいたい会場に缶詰になってしまうので,写真はありませ ん. 大会はこの日で終了.ささやかに打ち上げます.博多の飲み屋にて. 博多は安くてうまい店が多い.気取らずに楽しめます. |
後はもう帰るだけなんですが,福岡空港から松本行きのフライトが午後1時過ぎなんですよ. ホテルはチェックアウトしないといけないし,どこへ行こうかというと...白水さんのお薦めで櫛田神社へ.祇園山笠で有名ですね. |
御際神は大幡大神,天照大神,素戔嗚尊の三柱(さんはしら).神様のことは,ひとはしら,ふたはしら,と数えます.松本に四柱神社というの がありますが, そういう意味です. 修正.前回まで大幡大神と八幡様を混同していました.謹んでお詫び申し上げ,訂正させて頂きます.wikiによれば「大幡大神は,天御中主神の19世の子孫で、北陸地方で怪物を退治したとされる」そうです.古事記をめくったんですが,ちょっと分かりません.また時間のあるときに調べさせて下さい. |
早咲きのサクラとして知られている,ヒカンザクラ.ちょうど見頃でした. |
こちらは神社内の「博多塀(はかたべい)」.豊臣秀吉が太閤町割をしたときのこと,古い瓦などを塀の中に入れて,作ったもののようです.当時の博多の職人 さんたちの,町の復興が願われているとか. |
ま,そんなこんなで,やっと飛行機.予想通り,福岡から飛ぶのが遅れました.14:05発. DHC8型というプロペラ機.長野県民の皆さんは「ジャンボの方が」といいますが,乗ってみた感じとしては,ジャンボじゃガラガラで赤字でしょう. プロペラでも航路が残っただけありがたいと言うべき.乗るときに狭くて頭ぶつけちゃいましたが. |
信州松本空港.荷物の受取所.こんなに小さなのは初めて見ました.八丈島でももっと大きかったんじゃないかな? |