バスを借り切って上高地へ.安曇村が松本市に合併になって,上高地は松本市内なんですが,だからといって自転車で行ける距離ではありません. |
釜トンネルをくぐると上高地らしい地形になってきます.梓川に土砂が堆積し,その新しくできた裸地に陽樹のカラマツが生育します. |
正面に見えるのが焼岳.あとに出てくる大正池を作った山です. |
緑のトンネルを抜けて. |
上高地のバスターミナルまで行かず,大正池のところで降ります.で,歩き.歩いてこそ見えるものがあります. |
早速ゼミ.大正池の出来方(焼岳が噴火して梓川をせき止めた),焼岳の話し,まわりの植生の話など,あらかじめ調べてきたことを発表してもらい,それを 現地で確かめます.これぞエクスカーションの醍醐味. |
ま,そうはいっても堅い話ばかりではなんなので,自由時間を設けて各自楽しんでもらいます.集合時間には集まって下さい. |
こちらは田代湿原.遠く正面が穂高岳になります. |
こちらは田代池.私はこちらをまわるのは初めてです.福島先生によると「昔より浅くなった」とのこと.遷移が進んでいますね. |
で,河童橋へ向かうコースを行きます.水面にバイカモが.真ん中に花が一輪咲いているの,分かりますね?誰も興味なさそうで,ちょっと寂しいですね. |
梓川のほとりで昼食.福島先生がコースを知り尽くしているので,トイレも近くにあって,河辺に降りられて,と言う場所に,いい時間に到着.さすが福島先 生ですね. |
歩道脇の林床にはカラマツソウが咲き乱れています. |
河童橋に到着.「はいはい,みんな並んで」 福島先生が学生のカメラで撮ってあげています.私はその後ろ姿をぱちり. では,行きすがら見てきた植物を,いくつか紹介していきましょう. |
トリカブトの仲間は難しいですね.昔だったらヤマトリカブトとか言っていれば良かったんですが,いまは分類が進んで,ヤマトリカブトってあまりないよう
です. |
トモエソウ.オトギリソウ科です.花びらの形が巴(ともえ)になっているので,トモエソウ.ともえ,とは,渦巻き型のことです. |
オノエヤナギ.何処にでも出る普通種ですが,上高地にも出ます.葉の縁が裏側へ巻き込むのが特徴. |
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すごいでしょ? |
グンナイフウロ.霧ヶ峰でも見られます.明るい草地の種. |
オオカニコウモリ.葉の形をコウモリのハネに見立てたコウモリソウというのがありますが,それよりも,葉が大きく,丸くふくらんでいる種です.で,オオ カニコウモリ. |
センジュガンピ.誰も興味持ってくれないけど,なかなか見られないんだぞ(笑)! |
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マルバダケブキ.日本語の意味を考えると,次のようです.まず,葉が同じキク科のフキに似ています.で,山の上にあるので「岳ブキ」.さらに葉が丸いの で「丸葉岳ブキ」です.全部漢字にすると丸葉岳蕗. |
目指すは,明神の上高地ステーション. 梓川をさかのぼります.実は学生諸君に「長距離を歩くのでザックで来るように」って言っていないんです.だから,みんな,スポーツバッグみたいな手で 持ったり,片肩に提げるようなカバンできていて,これは結構大変.福島先生にアナウンスをお任せしていたんですが...これは,我々,教員側のミスです ね. |
やっと明神岳が見えてきます.今日とまる信州大学山岳科学総合研究所の上高地ステーションはこの明神地区なので,やっとゴールに近づいたという感じです. 私はまだokなんですが,学生諸君,もう少し. |
ここが河童橋から徳沢へ向かう道の,明神での分岐.ですが,私も上高地ステーションへ行くのは初めてなので詳しい場所は分かりません(笑).もちろん福 島先生も(笑笑). で,この分岐には写真右手に見える明神館という小屋(小屋と言っても,食道があり,売店があり,宿泊もできる山のホテル)で,さりげなく買い物をし,お 金を払うときに道を聞きます. と言うようなマナーを,みんなも知っておこう! |
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さて,ここまで,教員は私と福島先生だけだったのですが,ここで鈴木先生(山岳研究所の所長でもあります)と,戸田先生が合流. さらに,環境マイスター,地質コースのおつきあいで偶然(?)上高地にいらしていた生物科の佐藤先生もちょっとだけ合流. で,炭で火をおこして,バーベキューです.学生諸君も,なかなか炭で火をおこす経験はないでしょうから,いい経験です.自分で火をおこし,自分で焼い て,自分で食べる. |
私や福島先生は,もう,ぐったり疲れてしまったんですが,さすがに元・南極越冬隊員の鈴木先生は違います.体力,気力,バリバリ.学生たちと一緒に, 「ダル マさんが転んだ」をやています. いま鬼なのが鈴木先生 |
学生諸君も元気元気.何処でひもを見つけたのか(持ってきた?洗濯ロープ?)縄跳び.最後は10人くらい一緒で飛んでたんじゃないかな. |
私が疲れ,腰掛けていると,ルリタテハが. |
と言うわけでこの日は終了.ステーションには布団はないので寝袋(シュラフ)にもぐります. |
で,翌日. 右は上高地の夜明け. |
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朝早いので,散歩します.戸田先生は「おれ布団でねたいなあ」と言うことでこちらの宿にご宿泊. |
明神はですね,穂高神社の奥社のあるところなんです.ご神体は明神岳自身.この,奥社はその玄関というわけです. |
神社の参拝自体は free of charge ですが,数百円払うと,神社の敷地になっている明神池を見ることができます.こんな感じ. 森の奥深い,秘密の場所と言った雰囲気です. |
ね,幻想的でしょ. |
見る向きを変えるとこんな感じ.箱庭のようです. |
これ,花茎の部分が粘ります. |
散歩から戻ると,朝食班が準備中.朝食も自炊.炊飯器が小さかったので,鍋でのご飯焚きに挑戦.きちんと炊けた! これでステーションをあとにしますが,記念写真を一枚. |
明神から上高地のバスステーションに向かう間に見た植物を紹介しましょう. まずはヒロハヘビノボラズを発見.これ,絶滅危惧種なんです.で,これを食草とするチョウの方も絶滅危惧. |
これはサンカヨウ.深山に来たなと感じるものですが,学生諸君はあまり興味がありません. |
ミヤマカラマツ.ミヤマというのは,深山のこと.なかなか繊細な花です. |
サワグルミの 実生.四つに切れ込んでいるのは双葉.で,本葉が一枚だけ出ています.本当は奇数羽状複葉ですが,はじめは一枚だけ. |
オオヒョウタンボク.平地じゃなかなか見られないんですが. |
で,貸し切りバスに乗って乗鞍へ移動. |
ようこそ,乗鞍岳へ. |
いやー,来ました乗鞍.雪がまだ残っています.登山道には雪はなく,okですが. |
写真中央に見えるのが乗鞍の剣が峰.あれを目指します. |
途中の急登,大変でしたね.いろいろ大変でしたが,全員登頂.標高3026m.で,記念写真. |
山頂にはお宮がありますので,無事に登れたお礼を申し上げます. 学生諸君は皆おみくじを引いていました. どんな結果だったでしょうか. |
では,途中出てきた植物を見ていきましょう. 真ん中のピンクの花がヨツバシオガマ.写真の個体は5枚出ていますが.左の白いのがイワツメクサ.黄色い花は ミヤマアキノキリンソウ. |
コマクサももちろん出てきます. |
アオノツガザクラですね.これでも木本(樹木)です. |
イワツメクサ,少しアップでとるとこんな感じ.ナデシコ科で花びらは5枚なんですが,切れ込んでいるので10枚に見えます. |
クモマナズナですね.アブラナ科. |
アシボソスゲだと思います.多分. |
イワスゲ?ロープが張ってあって,近寄れません. |
こちらは,コイワカガミ. |
ハイマツです.エロージョンが起きていますね. |
こちらもエロージョン.表面の植物が地面が流れるをのおさえていますが,ちょっと深刻です. こうやって,植物のカバー(植被といいます)は,大地を守っているんですよ. |
こちらは,ハクサンイチゲ.キンポウゲ科です. 見事な花ですね. |
ミヤマダイコンソウ.バラ科.ダイコン(大根)自体はアブラナ科の植物ですが,ダイコンの葉に似た葉を持つダイコンソウ(バラ科)という植物があって,そ れの深山型です.で,深山→ミヤマ,のダイコンソウ,ということ. |
私もよく知らないんですが,シナノヒメクワガタのようです.ヒメクワガタと言うのがあるんですが,その変種に位置づけられています.ゴマノハグサ科. 初めて見ますが,いままではヒメクワガタだと思っていたということでしょう. |
ツガザクラ.これも木本ですね.ツツジ科ツガザクラ属. |
ミツバオウレン.これは,本来はオオシラビソなんかの,針葉樹林の林床で見られるもので,あんまりオープンなところで見られるものではありません. |
オンタデ.イタドリの仲間ですが,高山の礫地に出るものです.一次遷移の初期に出るもののひとつ. |
という感じで,ただ山を登るだけでなく,そこに生育する植物を知っていたり,あるいは植物でなくても,地形とか,岩の種類なんかを知っていると,楽しめま す.岩石はマニアックかな(笑). |
と言うことで皆さん,ご苦労様でした. |