まず初めに,サドノウサギ(Lepus brachyurus lyoni). サドノウサギは,佐渡島のみに生息しています.この写真では夏毛のため茶色ですが,冬は白色に変わります. 近年,減少が著しいために準絶滅危惧種に指定されています.*1そ のため,サドノウサギの天敵や生態を知ることは,保護や保全を行う上で重要です! |
今年の夏は,夜に同じコースを回り,目撃した動物をカウントしていくライトセンサスを 行いました. 林道でサドノウサギを目撃!!! 夜間,林道を走っていると動物(サドノウサギ,ホンドタヌキ,ホンドテン,フクロウなど)に出会えました. |
サドノウサギの捕食者として考えられているホンドテンは,元々佐渡島に生息していませんでしたが,島内で
スギ植林が盛んになった時に,スギの幼樹を食害するサドノウサギを駆除するために本土から移殖しました. 佐渡島でサドノウサギが減少した理由とされているのが,ホンドテンの捕食です.しかし,佐渡島で実際にホンドテンがサドノウサギを捕食しているという報告 はありません. そこで今回,ホンドテンの食性を把握するために,エサ資源の乏しくなる冬期にホンドテンの糞を採取して内容物調査を行いました. |
ホンドテン(Martes melampus melampus) 夏毛は,顔が黒いですが,冬毛になると顔が白く全身黄色となります. |
ホンドテンの糞 積雪上の足跡を追っていくと発見できます. 冬は,積雪のおかげで動物の行動を知ることができます. |
このように,積雪上に残ったホンドテンの糞を採取して,1mmのふるいによって水洗して内容物を観察しました. 採取した10個体のうち,2個体に動物と思われる毛があり,違う2個体に鳥と思われる羽がありました.そのほかは,植物の種子,樹皮などがあり,種子につ いては日本植物種子図鑑*2を用いて 同定しました. しかし動物の毛は,実体顕微鏡を用いて観察をしましたが,わからず・・・(>_<;). |
そこで,電子顕微鏡を用いて分析することにしました. 植生学会でお世話になった蛭間博士のいる飯田市美術博物館で電子顕微 鏡の使い方から原理まで丁寧に教えていただきました!!! 飯田市美術博物館 *開館時間:9:30〜17:00 *プラネタリウムもあります☆ |
飯田市美術博物館*3 |
電子顕微鏡の使い方をご指導くださった蛭間博士. 電子顕微鏡マスターである村松さんには,電子顕微鏡のデータの写真の 撮り方を教えていただきました. |
蛭間さん:「原理としては,試料が入っている場所を真空にして,試料に光(電子線)をあててその反射で物体をみるんだよ.」 清水:「すごいですね!!!」 飯田市美術博物館では,毎週日曜日の午前10〜11時,午後2〜3時に「電子顕微鏡 観察教室・自然相談」を行っており,電子顕微鏡を用いて気軽に「微の世界」を楽しめます. また,蛭間さんや村松さんのような自然学芸員の方 々が自然分野の相談にも応じてくれる貴重な場があります!!!ぜひぜひ活用していただきたいです. |
Ion sputter(イオンスパッタ) 試料を真鍮(しんちゅう)の上に両面テープで貼り付け,このIon sputterにセットします.この機械で試料をプラチナでコーティングするそうです. |
走査電子顕微鏡 左側の筒の場所に試料をセットして倍率などを調整すると画面の右側のような映像が見れます.そして,写真の右側の黒いものがカメラです.画面に映 し出されたものをフィルムにうつせます. |
国立科学博物館のホー
ムページに実験バ
ンクというサイトがあり,そこにノ
ウサギの毛や他の動物の電子顕微鏡の写真が載っていました*4.これをもとに今回の試料と比較しました. |
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★今回,観察された試料 (積雪上のノウサギと思われる毛) これは,積雪上に落ちていたサドノウサギの毛と思われていたものです. キューティクルがよく似ており,中央部が凹んでいます. |
★ホンドテンの糞から発見された動物の毛@ こちらは,ホンドテンの糞から見つかった毛です.キューティクルが少し乱れているようですが,中央が凹んでいるのがノウサギの毛とよく似ています!!! 佐渡に生息するノウサギはサドノウサギのみなので,サドノウサギの毛であると判断しました. |
ここからは,わからなかったものの紹介です・・・わかる人がいたら教えていただきたいです!!! 私も今後,調べていきます!!! |
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★ホンドテンの糞から発見された動物の毛A 動物の毛@ちはまた違ったキューティクルです. 肉眼で見た時は,ネズミの毛かな??と思ったのですが,ネズミの毛のキューティクルの画像がないためわかりません・・・わかる人がいたら教えてください (>_<) |
★ホンドテンの糞から発見された鳥の羽@ 鳥の羽は,電子顕微鏡でみると羽の中にまた羽があるように見えますね☆ うーん.羽による違いが・・・見つけられないです... |
同定はまだまだですが・・・. 佐渡に生息しているホンドテンの糞からノウサギの毛に似た毛が発見されたことはとても重要です. 今回の調査で,ホンドテンは,冬期にサドノウサギのような動物質と果実類(主にマタタビ類,カキノキ,アケビ)のような植物質のもの両方を食べていまし た. ホンドテンは,佐渡においても雑食性であることがわかりました. |
★ホンドテンの糞から発見された鳥の羽A 上記の鳥の羽@とは,また違う鳥の羽だと思うのですが・・・わかりません. |
☆ライトセンサスについて 佐渡に生息している動物の把握を行うために,8月と11月にライトセンサスを行いました. 8月にはサドノウサギ,ホンドテン,ホンドイタチ,ホンドタヌキなどをみることができたのですが,11月にはホンドタヌキとホンドテンしか見られませんで した.サドノウサギやホンドイタチは季節によって行動が異なるのでしょうか? これからも調査を続けて,サドノウサギをとりまく環境の把握を行っていきたいです!!! |
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左:蛭間博士 右:島野先生(植生学会にて) |
飯田市美術博物館の蛭間さんおよび村松さんに大変お世話になりました!!!とても丁寧に教えていただきましてありがとうございました!!! また,研究のことなど,助言をよろしくお願いいたします. お忙しいところ,ありがとうございました.この場をおかりしてお礼申し上げます!!! |