***今回の記事は,信州大学で行われているシニアサマーカレッジのエクスカーションで訪れる霧ヶ峰の植物の案内です***

信州大学シニアサマーカレッジに参加されている皆様.
 理学部の島野光司と申します.皆さんが霧ヶ峰の八島湿原や忘れじの丘で見られる植物をまとめておきます.ご参考して頂き,これが信州の自然を楽しむ一助 となれば幸いです.
 それでは.

霧ヶ峰.忘れじの丘から車山を望む

 忘れじの丘に上がるスキーリフト(夏期営業)

忘れじの丘の頂上

忘れじの丘を降りる

ヒヨドリバナの変種,ヨツバヒヨドリバナ.
 キク科ヒヨドリバナ属.代表的な高茎草本の一つです.夏から秋にかけてさく,信州の高原を代表する植物です.


イブキトラノオ.タデ科イブキトラノ属.
 「イブキ」は滋賀県と岐阜県の県境にある伊吹山のことです.花が穂になってつき,虎のしっぽのように見えるところから「虎の尾」.においをかぐと独特のにお いがします.ある学生によれば,「納豆」とか.

コオニユリ.ユリ科ユリ属.
 霧ヶ峰や美ヶ原などの草原で見られるものです.森林では見られません.これに似たオニユリはムカゴを葉の付け根につけますが,コオニユリはつけません.

コウリンカ.キク科コウリンカ属.
 実は絶滅危惧植物です.花期は初夏なので,この時期見られるのはほんのわずかです.

シラヤマギク.キク科シオン属
 キクの中では大きな葉をつけます.写真は特別花びらが少ないわけでなく,一つの集合花に5つ程度の舌状花を持つ,ふつうのタイプ.残りは筒状花となります.

ネジバナ.ラン科ネジバナ属.
 これでもランの仲間.明るい草原,シバ地などに出ます.刈り取りなどの管理をしないとすぐに出なくなる.松本地方には希ですが諏訪ではしばしば見られます.

ツリガネニンジン.キキョウ科ツリガネニンジン属.
 釣り鐘型の花を放射状に多数つけます.これの高山型はハクサンシャジンと呼ばれます.

ツリガネニンジンの花のアップ

タチフウロ.フウロソウ科フウロソウ属.
 フウロソウの仲間で有名なのはゲンノショウコですね.ゲンノショウコは低標高の里地里山で見られるが,これはもう少し標高の高いところで見られる.地面をはわ ずに立ち上がるところからタチフウロと名付けられたようです.

ハバヤマボクチ.キク科ヤマボクチ属.
 同じキク科のアザミに似た印象の花をつけます.この,ハバヤマボクチやオヤマボクチは広い葉の後ろに白い毛を密生し,これをそば打ちのつなぎに使う地方 が あるとのこと.

タムラソウ.キク科タムラソウ属.これもアザミに似るが,葉は触っても痛くありません.花は上向きに咲きます.

ナンブアザミ.キク科アザミ属.
 こちらはアザミ.野山でもっともポピュラーなアザミの一つ.花を包む総包片が外向きに開くのが特徴.葉を触ると非常にいたいですね.

エゾカワラナデシコ.ナデシコ科ナデシコ属.
 いわゆるナデシコ.信州にはカワラナデシコと,エゾカワラナデシコがあります.標高が高く寒いところはこちらのエゾカワラナデシコが多いように思われます.エゾカワラナデシコは萼が2対4枚なのに対し,カワラナデシコは3対6枚(例外あり)となります.

オミナエシ.オミナエシ科オミナエシ属.
 ススキなどとともに秋の七草の一つ.元々はポピュラーなものとされましたが,今は非常に少なくなっています.里山の柴刈りなどの手入れがされなくなり,明るい林床, 草地が少なくなったことが原因です.
 ちなみに秋の七草は,オミナエシ,ススキ,キキョウ,ナデシコ,フジバカマ,クズ,ハギ,の7種.

ワレモコウ.バラ科ワレモコウ属.
 かって中国の皇帝が「世界中の赤い花をあつめろ」と命令を出したとき,この選定に漏れたこの花が「我も紅なり(われも こうなり)」と名乗り出たという伝説もあります.
 中国語ではなんといったんでしょうね.

ヤマハハコ.キク科ヤマハハコ属.
 ハハコグサは田畑の周りに見られるいわゆる雑草ですが,これは山の草原に生育します.

トモエシオガマ.ゴマノハグサ科シオガマギク属.
 写真では見にくいですが,花びらの形が巴(ともえ)型についています.巴,というのは渦巻き型のことです.確かに上から見るとそう見えますね.

イブキボウフウ.セリ科イブキボウフウ属.
 このイブキ,も伊吹山のこと.セリ科ですが食べられません.小さな花が集まって花序を作ります.夏の花.

メタカラコウ.キク科メタカラコウ属.
 オタカラコウ,メタカラコウと似た種類があって,オとかメというのは,それぞれ雄と雌のことです.フキのような大きな葉をつけます.

クルマバナ.シソ科トウバナ属.
 何々トウバナ,という似た植物がたくさんありますが,これは萼の部分が赤くなるので分かります.
 シソ科は皆,葉が対生につき,茎の断面が四角いのが特徴です.

ヒョウモンチョウsp.
 sp.というのは,種は分からないけどその仲間の種(species)という意味で使います.
 多分,ヒョウモンチョウそのものでいいと思います.であれば,食草はワレモコウということに.

ハクサンフウロ.フウロソウ科フウロソウ属.
 ハクサン,とは,石川や岐阜,福井などにまたがるの白山のこと.長野県内にも多く分布します.アサマフウロが花の色がもっと濃い赤紫色なのに対し,このハクサンフウロは明るいピンク色の花をつけます.
 札にハクサンフウロと名前が書いてあったので間違いないとは思いますが,写真では,タチフウロのようにも見えますね.花はそっくりで難しいです.立つか立たないか,だけではないと思いますが,違い.

ハンゴンソウ.キク科キオン属.
 2m近く,背が高くなります.写真はこれから花が咲く個体.黄色い花を多数つけます.代表的な高茎草本.
 最近,オオハンゴンソウという外来植物が蔓延して困っています.

ツクバトリカブト.キンポウゲ科トリカブト属.
 毒草として有名なトリカブト.分類は非常に難しいです.近寄ってみないといけませんし.種としてはヤマトリカブトと一緒で,葉の切れ込みが深いものが変種のツクバトリカブトとされています.
 ちなみに伊達政宗が母親に飲まされて死にかかった毒がトリカブト毒といわれます.

オオヒナノウスツボ.ゴマノハグサ科ゴマノハグサ属.
 もう花が終わって実になってしまっています.花の時期には,濃い赤紫色の花をつけます.

ヤマハッカ.シソ科ヤマハッカ属.
 ハッカ,と名前が付いていますが,食用にはしません.秋に咲く植物で紫色の花をつけます.

フシグロセンノウ.ナデシコ科マンテマ属.
 これも夏の花なので,もうそろそろ終わりです.茎の葉のつく部分(節)が黒っぽくなるので,節黒,の名前があります.

ヤナギラン.アカバナ科ヤナギラン属.
 ランという名前が付いていますが,ランではありません.スキー場に夏場出かけると,道脇に大群落を見ることがあります.葉の形が柳の形にいているという ことでこうした名前があります.

アキノキリンソウ.キク科キリンソウ属.
 秋の野山を代表する種です.山の標高が高くなったところに出るものは背が低く,これをミヤマアキノキリンソウ(ミヤマは,深山の意味)と呼び変種に分け ますが,変化が連続していて分けられない,という意見があります.
 セイタカアワダチソウは,分類的にはこれに近い仲間です.

ハンゴンソウ.
 さっきも出ましたね.こちらは花が咲いている写真です.

ヤブジラミ.セリ科ヤブジラミ属.
 ふつうは河原の土手など,路傍に出現する種ですが,ここ霧ヶ峰でも見られます.

オオダイコンソウ.バラ科ダイコンソウ属.
 食べる大根はアブラナ科です.これは葉の形が大根に似ているからということでこうした名前が付いています.

ユウガギクです.キク科キク属.先日まで間違って種名をリュウノウギクと書いていました.すみません,訂正します.
 似た花はたくさんありますが,枝が横向きに広がるので見分けることができます.
 これも夏から秋にかけての花です.



 現在の御射山まつり.
 2才になる子供の健康を願います.ドジョウ...ではなく,ウナギを放流するのが習わしだったそうです.が,平成になってからはドジョウを流すようになったとか.御射山社だけでなく,下社の秋宮でも遙拝所をもうけ,同じくドジョウを流していま す.写真は下社秋宮.

 下の水路はせき止めてあって,ドジョウは回収できるようになっています.暗渠に入っても死んでしまうので,妥当な措置でしょう.
 ネットの情報で,「御射山祭りはウナギを流す」とあったのですが,現場で取材すると,どう見てもドジョウ.で調べたら,
http://www.kyodoshi.com/news/2795/
ということが分かった次第です.

ということで,信州の自然,歴史,文化をお楽しみいただければ幸いです.では.


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