集合は飯田市美術博物館に朝の8時とか.そんなの松本から出て間に合うわけないよね.で,前日,蛭間くん
の家に泊まらしてもらって集合. 飯田・下伊那周辺の熱心な皆さんと共に,山を超え,川をわたり,今回の現場へ. 南信はですね,関東で言うところの「太平洋型ブナ林」に植物の種組成が似ています.そのため,奥多摩や丹沢を学生時代に見てきた私 としては,懐かしい組成というか,植物たちに出会うことができます. 昔愛した女性たちに会うことは,もう,ないですけどね(笑). |
まずは,これ,ミツバウツギ.うん,太平洋側には出ますね.渓谷沿 いの山道などを歩くと出会うものです.対生,三出複葉,細かい鋸歯.ウツギに似た白い 花を咲かせます. |
こちらはエドヒガンザクラ.サクラです.我々が見るエドヒガンの 99%は公園や庭だどに植えられたものですが,この辺には自生のエドヒガンがあり ます.他のサクラに比べると,側脈が多く,葉の裏に茶色い毛があるのが特徴と言えましょうか.オモテ面は色が濃く,やや光沢がありますね. |
おなじみ,フタリシズカ.ヒトリシズカの葉が四輪生のように見える のに対し,こちらは明らかに対生の葉が二組四枚だとわかります. |
おっ,これは珍しいですね.タチガシワという草本です. |
タチガシワ,花はこんな感じ.5数性ですが,合弁です.枯れかかっているわけではなく,こんな褐色の色が本来の色のようです. |
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ええと,こちらはコバノイラクサですね.対生,単葉,鋸歯.もちろ んイラクサ科です.イラクサの仲間は,種によって刺を持っているので注意.刺さると後 々痛いで す.これは単なる物理的な痛さだけではないからです.以前はギ酸という化学物質を持っているため,とされていましたが最近はヒスタミンであるという説が有 力のようです.ですから,これの棘が刺さった場合(すっごく細くて抜こ うとしても難しい),石鹸で手を洗うというのは,気休めでなく,意味があることです. |
アカネ科のクルマバソウです.これは,茎に毛(刺)がないのが特徴 です.クルマムグラも似ていますね.同様に茎に毛がありません.オククルマムグラは茎 に下向きの毛があり,これで区別できますが. で,クルマバソウとクルマムグラの違いですが,色々調べても現場での決定的な区別は難しいです.輪生する葉の枚数は絶対的ではないし,茎の断面が四角形 なのも同じだし,標本にして乾いたら黒くなるとか現場ではわからないし,花がついていない時期は花で見分けられないし. そういうわけで,区別するのはやはり葉の形でしょうか.写真のように葉の付け根側 が広く,先に行くほど細くとがるのがクルマバソウ.全体に長楕円形 で,葉の先の方も丸く広いんだけれど,先っぽだけ短くとがるのがクルマムグラ. それとクルマムグラは葉の縁にトゲ状の毛があってこれが肉眼でわかるぐらい目立つ. クルマバソウもルーペで見ればあるんですが,これが目立ちません. |
アカバナ科のタニタデです.タデ科ではなくアカバナ科というところ がポイント.葉は対生です.対生,単葉,鋸歯.鋸歯の数は側脈数に比例して5から6個 といったところでしょうか.必ずしも谷に出るものではないですが,尾根や乾燥したところでは出ませんね. |
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似た種に日本海側に出るヒロハテンナンショウというのがあります.ヒトツバテンナンショウとは別種ですが. どう違うかというと,このヒトツバテンナンショウは花(仏炎苞の部 分)が葉の位置より上になっていますね.ヒロハテンナンショウは花茎 が短く花が 葉の高さよりも低いのが特徴. 花がなかったらどうやって見分けるのかというと,どうするんでしょうかね(笑).教えてください. |
これはですね,私にとっての新種です.ウラジロウツギ.はじめはヒ メウツギだと思ってみていました.ただのウツギに比べ葉柄が長く(ただのウツギはほと んど葉柄がない),この点はヒメウツギの特徴なんですが... |
葉の裏をめくると,真っ白.こんなウツギがあること,知りませんでした.my新種です. |
お,ヤマハタザオですね.アブラナ科で花びらは4枚です.平地のハ タザオは花が黄色いですね.これは山地に生育して花は白いです.それと... |
葉が茎を抱くようにつきます.この特徴はハタザオ,ヤマハタザオ共通の特徴です.ミヤマハタザオの葉は茎を抱かないですけどね. |
ヒメレンゲですね.花に近い,上の方の葉は線状に細長 く(先の方が太い),根元の方にある葉はスプーン型.へっこまないけど.湿った岩場,崖地に生育するようです. 下の方のスプーン形の葉だけ見ているとマルバマンネングサも似ていますね.長細い葉は出さないようですが. |
こちらは小さいですが木本です.ミヤマハハソ.ハハソとはコナラの 古名.ですが,コナラはブナ科,ミヤマハハソはアワブキ科で,他人の空似(そらに)と いうことになります.太平型ブナ林や二次林でよく見ますね. |
葉の大きなヤナギです.バッコヤナギ.典型的な陽樹.川沿いなどで 川の洪水で撹乱を受けたあとの裸地で真っ先に定着・成長をする種です. |
外見上の特徴は,葉の裏に密生する白い毛.オオバヤナギも裏面は白いですが,オオバヤナギは葉の裏面が白いものの,毛が白いわけではありません.バッコ ヤナギは葉の裏の毛が白いんです. 脈も葉の裏側に浮き出て見えるぶん,オモテ面はへこんで見えますね. |
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こうした植物が出現する立地は,主に土壌が薄く礫が露出するところです.ササが優占しない,シカが苦手な急斜面ということで多様な植物が出現します. |
アイズシモツケですね.シモツケの葉がもっとシャープで細長いのに 比べると,アイズシモツケの葉は葉身の基部を中心に丸く膨らんでいます. |
イタヤカエデですが,どうも専門家の皆さんはこれを変種レベルで細 かく分けたがります.で,このイタヤカエデですが,細かく変種レベルに分けるとアカ イ タヤ(カエデ).どこがどうかというと,葉柄が赤いのが特徴と言っていいでしょう. |
マメ科のユクノキです.他のマメ科の樹木と同様,羽状複葉なんです が,普通のマメ科の樹木は奇数羽状複葉が一般的で頂小葉を除いては,あとの側小葉は対 生するのが一般的なのに対し,これは側小葉が互生というか,ずれて小葉がつきます.これが特徴.私は以前秩父で見た以来です. |
イヌブナです.ブナは太平洋側でも日本海側でも生育しますが,イヌ ブナは雪の少ない太平洋側だけです.葉の外見上は,ブナに比べ側脈数が多く,葉の裏に 長い毛があることがブナとの違いですね.見慣れれば見間違えません.萌芽も激しいし. |
で,そうしたイヌブナですが,一度定着すると萌芽を出しながら一カ所に居座るので斜面が崩れようとするのを抑える役割があります. |
バラモミですね.マツ科トウヒ属でバラモミ節.茎の部分を見てくだ さい.見づらいけど.茎の表面がつるつるでなく,ブロック状にわかれていますね.で,さらに葉の 部分はペッシャンコでなくて立体的に膨らんでいますね. こんなところがバラモミの外見上の特徴でしょうか.雪の少ない地域の,土壌の浅い,もしくはないと ころですね. |
うーむ,シダです.イワオモダカ.葉は鉾型で三つにわかれています ね.写真のように岩場に生育するもののようです. |
ま,シダですので,葉の裏の胞子の着き方は記録しておかなければなりません.こんな感じです. |
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ミヤマタニワタシ.マメ科で小葉二枚で一セット,一枚の葉です.マ メ科は羽状複葉が多いですが,それが縮まって二枚だけになったような印象ですね.フタ バハギ(ナンテンハギ)も小葉が二枚ですが,小葉はこんなにとんがりません.このとんがり具合がミヤマタニワタシの特徴です. |
キランソウが生育していました.畑のあぜ道とかで見る印象ですが, 山の中の崖地です.ま,こういうのもありなんでしょう.青紫色のシソ科特有の花をつけ ます.花茎は短いためか花はそんなに目立ちませんね. |
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シダです.イワデンダ.名前のとおり,こんな崖地,岩のところから 長細い葉を垂らします. |
イワデンダの先の部分はこんな感じです. |
こちらはおなじみ,マルバウツギ.対生,単葉,鋸歯.葉柄がほとん ど無く,葉は下膨れで広く,触るとざらつきます. |
花はありませんがフジアザミですね.大きく,切れ込みのある,そし て照かりのある葉です.生育地はこうした,土の無い礫地です.確か多年草ですので,今 年は花をつけず,二三年後に花をつけるのかもしれません. |
ユリの茎葉が垂れていますが,ヤマユリだそうです.私は雪の少ない 地域で南信(比較的西日本要素が出現する)なのでササユリではないかと思ったのです が... 蛭間博士によるとこのヤマユリの方は,立たずに崖から垂れて生育した場合,葉が平面的につくのに対し,ササユリの方は葉が平面的でなく,立体的に付くと いうことです.また今度,花のある時期に観察してみましょう. |
ヒナウチワカエデですね.ヤマモミジは5から7裂なのに対しこちら は9から11裂.かといってハウチワカエデやオオイタヤメイゲツ(カエデ)に比べると 長さで半分以下,面積で四分の一以下の大きさ(小ささ)です. 切れ込みの具合がやや独特で,魅力的です.よく,「小股の切れ上がった」という表現がありますが,そんな感じ(笑). |
ヤマシャクヤクですね.花があると綺麗で立派なんですが.「立てば シャクヤク,座ればボタン,歩く姿はユリの花」なんて言いますが. |
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葉はこんな感じ.質はウラジロノキに似ていないこともなく,ウラジロノキの重鋸歯を単鋸歯にした感じと言えなくもない. |
ウラジロノキに比べると側脈数は全然少ないですけどね.こんな感じです. |
キク科の草本.キッコウハグマ.葉身の形が亀甲(キッコウ),つま り,亀の甲羅みたい,ということで名付けられています.雪の少ないところの分布ですよ ね. |
ザリコミだと思います.バラ科の木本.互生,単葉,切れ込み,鋸 歯.スグリの仲間と近いやつ. |
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ツツジ科ですが,ウスギヨウラクですね.花は終わった後ですが. |
葉の表面はこんな感じ. |
ウスギヨウラク,裏面です.ウラジロヨウラクはもっと葉の裏が真っ白,コヨウラクは葉がもっと小さい,といったことで区別がつくと思います.葉裏の主脈 上に大きく白い毛があるのは,ウラジロヨウラク,コヨウラク,ウスギヨウラク共通の特徴ですね. |
ヤシャビシャク,という樹木です.私も初めて知りました.my新種 です.他の樹木に着生していました.ユキノシタ科でスグリ属.その意味ではザリコミと 一緒です. |
こちらはベニドウダン.ドウダンツツジの仲間ですが... |
枝が赤いですね.いや,普通のドウダンツツジも赤いですが,ドウダンツツジは葉の 先の方が広い菱形で,全体にスマートな印象ですね.こちらのベニドウダ ンの方が葉のサイズも小さく,形も可愛らしい感じです. |
ウリハダカエデに似ていますが,ホソエカエデです.どう違うかとい うと,まずは,歯の全体の形を見ると三裂の形がシャープですね.それと... |
それと,主脈と側脈の分岐する部分なんですが,カエルの足の水かきのように膜が張 ります.この写真だとちょっと見にくいかもしれませんが. こんなところがホソエカエデの特徴です. |
これ,ハニヤミツバというやつだと思います.いわゆるミツバと種は 一緒なんですが,その品種.木曽とか南信の方でミツバの小葉の切れ込む種が知られてい て,これが多分それ.図鑑によると三つある小葉がそれぞれ3全裂するとされています.似た仲間にウシミツバというのがあり,こちらは小葉に欠刻があるも の,だそうです.品種なので,主としてはミツバでokです. |
キケマンの仲間を発見.キケマンじゃないし,ミヤマキケマンでもない.なぜって,つるっぽい.で,ヤマキケマン. ツルキケマンというのもあるん ですが,図鑑によるとツルキケマンは茎に稜があるとのこと.こちらはない.で,ヤマキケマンに落ち着きます. 私も初めて見ました. |