信州大学交響楽団50周年記念演奏会(2010/11/27)と,その後に買ったCDのはなしなど.

UPDATE: 2010年12月18日

行ってきました.↓無駄に長かったので,ちょっと改変.

 ええと,春秋恒例の信州大学交響楽団の演奏会ですが,行ってきました.いや,今回の記事は秋の演奏会に当ててのものなんですが,春の演奏会もいき ました.いろいろ楽しかったです.

 春の演奏会はですね,当,物質循環学科3年生のフルート担当のI さんがシューマンの交響曲1番「春」の第4楽章で完全ソロだったり,別の曲の演奏の中で,フルート吹かないからどうしているのかと思ったら,演奏の途中か らセカンドバイオリンのあたりをふらふらと立ち回り(本番 中!),どうなっちゃうかと思ったら鉄琴かなんかを演奏することになったという「 I さん鉄琴事件」とか(いや,本人にとっては別に事件じゃないですよね. 見ている私が慌てて,私の中ではミニ事件),コンマスが一人立ち上がっての文字通りスタンド・プレーとか,さらに,コントラバス奏者の物質循環学科3年生 のS君はパート・リーダーで後輩の女子学生に囲まれてウハウハとかいろいろあったんですが,ま,それはいいでしょう(笑).あ,あと,パンフレット中の パート紹介で「せかんど だもの」って,笑った(笑).相田みつおか!← 一応ツッコミ入れておきます.

 春の演奏会で楽しかったことをもう一つ.はじめは一階のフロアーに座りました.一応戦略があって,バイオリンの高さと自分の耳の位置が会うように座りま した.自由席だから.で,これは成功して,一階に座っているうちは,弦楽器を中心にそれぞれの楽器の音,というか演奏を楽しむことができました.で,休憩 のあとはですね,2階の上がったんです.気分を変えて.そうすると,これは味わい方が全然違って,個別の楽器のパートの演奏を楽しむとかじゃなくて,塊と なって体を包む音に体を包ませて,パートとか何とかじゃない中で音楽全体を楽しむ,という感じでした.いや,自分でそういうことを主体的にしたことはな かった ので,これは私にとって新しい発見でした.テレビでN響アワー聞いていても,決してわかりませんから.皆さんも色々試してください.どっちがいいとか悪い とかじゃなくて.一階と二階,移動してみましょう(演奏中はダメですよ).

 で,秋の演奏会なんですが,時間がわからなかったので,当日,キャンパスをうろうろして情報収集.


 (当日,1時過ぎに大学をふらふら.どっかにチラシがあるはず...)


 (あった,これ.13:30開場か)
 今回,当日の入場券も,信州大学交響楽団50周年にちなんで,500円で は入れました.当日券.いつもは800円とかそこらだけど.いや,別に安く聴こうとは思っていませんが.
 (で,松本文化会館へ)

 さて,この日のプログラム,メインはドボルザークの交響曲9番,「新世界より」.前菜は同じドボルザークの作品でスラブ舞曲,作品46の1番,8番,そ の後がチャイコフスキーのロミオとジュリエット.順番に聞いていきますが,それに先立ち,団長が壇上で挨拶(ダジャレじゃないよ.水嶋ヒロじゃないんだか ら).で,ファンファーレ,という曲目のファンファーレで開演(いや,ほんとに.水嶋ヒロみたいで申し訳ないけど(笑)). (チケット,胸のポケットに入れっぱなしにしてい たら,折れてしまった)

 ええと,今回はですね,去年の記事のように,「金管はがんばりましょう」とか,そういうことは言いません(笑).で,素人の感想を少々.

 スラブ舞曲の1番と8番,どちらもエスニックですね.素人的にはドボルザークの代表作は確かに「新世界より」ですし,私なんかはそう思いがちです が,やはりドボルザークは故郷チェコのバック・グラウンドを持った作曲家なんだとあらためて感じました.で,その民俗学的なところをアメリカに行って 後,打ち破ったり,新しいものを自分の中に取り入れたりしたところがドボルザークの評価すべき点なんだろうかと思いました.いや,いい出会いをいただきま し た.今回の演奏会がなければこれらの曲に,今,出会えなかったでしょう.

 これ,演奏はたのしみました.で,1番と8番なんですが,今回のお客さんは,全体に拍手が遅いタイプの皆さん.8番が終わったあと,すぐに拍手が来な かったことを察知した指揮者,桜井優徳氏は,演奏直後,オーケストラの団員を立たせ,観客に向かって「演奏が終わった」ことをアピールしました(笑). で,観客はおもむろに拍手(笑).この,今回拍手の遅い観客というのは本当で,例えば後のメインになるシンフォニーの第四楽章のあとでも拍手が遅い(なか なか起こらない,よく言えばたっぷり味わうタイプ)お客さんが多かったので,演奏する皆さんは,気が気でなかったかもしれません.「演奏終えたよ!もっと タイミングよく拍手してくれよ!」なんて.

 続いては,チャイコフスキーのロミオとジュリエット.みなさんがロミオとジュリエットで思い浮かべる曲は,多分携帯電話のCMで流れたことのある曲じゃ ないか と思うんですが,あっちはプロコフィエフ作曲のバレエ音楽で「モンター ギュー家とキャピュレット家(← わかりやすい所だけのピアノ版)」. そっちじゃありません.映画,ロミ オとジュリエットのテーマも美しいですが,そっちでもありません(笑).今回はチャイコフスキーです.

 で,メインの「新世界より」.皆さんそうだと思うんですが,若ころに,あるいは初めて聞いた演奏が自分にとってのその曲の演奏のスタンダードに なったりしますね.私の場合は,ジョー ジ・セルのクリーブランド.ソニーのCDです.昔はですね,今のように通販でCDを買ったり,ネットで音楽をダウンロードできなかったので,レコード屋 (CD 屋)で現物を買うしかなかったんです.で,もちろん,秋葉原まで行けば,いろんな演奏の「新世界より」が手にできたと思うんですが,当時,身近にレコード (CD)を得ようとすると,ま,例えばCBSソニーとかだったんです.CBSソニーで,「新世界より」なら,セルのクリーブランド.ですが,こうしたシス テムのいい面もあって,私がグレン・グールドに出会ったのも,この,CBSソニーのゴールドベルクに当たったからだということもあります.

 遠回りしました.で,今回の演奏,私の聞き慣れていたセル,クリーブランド基準からすると,ちょっとゆっくり目で始まります,第一楽章.

 第三楽章.物循Sくんとのちょっとしたエピソード.ええとですね,コントラバスのパート・マスターのSくん(物循3年)が,私の「植物生態」の実習を受 けてくれていたんですね,今年度の前期(2010年前 期).で,基本的に私の車で移動しつつ,私の携帯型音楽プレイヤー(三洋のラジオ付きのICレコーダを使っています)の曲を聞きつつ(聞かせつつ)過ごし ました.私はバロック好きなんですが,バッハから始まって,80年代の洋楽,10年,20年くらい前のJ-POPを聴いて,私のネタ切れのあとは, 学生諸君のポータブル・音楽プレイヤーで,お気に入りの曲を流してもらうという power play をしました.ある日,コントラバスS君の番,という感じになって,いろいろはやりのJ-popとかに混じりながら,(シャッフル・プレイになっていたの で)ドボルザークの新世界より,これが細切れにまぎれたりしました(笑).クラシックも,ポップスも,みんなシャッフル(笑)!

「ええと,確か第三楽章だっ け,これ?」と私.
 「はい,第三楽章ですね」とS君.クールに答えます.
なぜこんな組み合わせでシャッフルになっているかは華麗にスルー(笑).

で,なんでこんなシャッフルになっているかという話を聞けば,秋にドボルザークの新世界よりを演奏するとか.そのための耳稽古で,入っていると.そんな感 じで,私も,夏から,ドボルザーク,楽しみにしていました.

 で,第三楽章,第四楽章ですが,第一,第二楽章に比べ格段に良くなります.第一楽章からすすんでいって,第 四楽章は大変気持ちがよかった.たっぷり練習したことでしょう.ここ,大事ですよね.演奏者の皆さんが気持ちよく 演奏しているのもわかります.終わり良ければ全て良し,で,アンコールでエルガーの威 風堂々が演奏されまし た.かっこいい演奏でした.いいじゃないですか,これ(笑).

 いや,メインになるシンフォニーよりも,アンコール曲がwell trainedって感じなんですが(笑).ま,天国のエルガーは満足してもらっていると思います(笑).

  演奏されている学生の皆さんには,まず,それ自体を楽しんでいただくのが大切でしょう.皆さんが楽しく演奏する姿を見て,周りの皆さんがそれを魅力に 感 じたり,真似したりしたいと思ったら,これほど素敵なことはありません.これは,私のような酒飲みにはできない仕事です(笑).

 次回は来年の春.と言うか初夏,でしょうか.楽しみにします. 

 追伸その1.
 木管,金管はパートごとの演奏者が少ないので,うまいのも,ミスっちゃうのも目立っちゃいますよね(笑).ストリングスはたくさん人がいるので,ごまか し が効く,というわけではありませんが(笑).アンコールの威風堂々で,全員出てきて素晴らしい演奏というのは,各パートのメンバーが沢山出てきて,支え 合ったというのも,良かった要因ではないかと思ったりします,素人的に.じゃあ多ければ多いほうがいいかというと,あとはバランスの問題なんでしょうね (笑).

 追伸その2.
 今回はですね,ま,ドボルザークのCD買うか,という感じです.ご縁ですから.
 スラブ舞曲のCDは,セル&クリーブランドにしました.「新世界より」もセル&クリーブランドで親しんできたので,自分にとって聴きや すいものを,という感じもあります.「クリーブランドって,アメリカのオーケストラでしょ?ちょっと違うんでは?」という意見もありましょう.が,ジョー ジ・セルはドボルザークと同様,東ヨーロッパの出身で(ハンガリーですが),指揮者としてドイツで修行した人です.第二次世界大戦のとき,偶然オーストラ リアに出 ていて,その後の移動 先のアメリカに残った,というのがセルのアメリカ人生のきっかけ.きっかけは異なれど,ドボルザークに対する共感といったものもあるのかもしれません.(セルのクリーブランド.このCD,あたりでした)

   で,作品46と72の全16曲を聞くと,やはり演奏会の頭に持ってくるのは勢いのある1番8番だなと納得した次第です.ですが,一番良く聴く のは,作品72-2 の第10番ですね.冒頭からのメランコリックなメロディーがよく知られています.クラシックのコンピレーション・アルバムなんかでは,この,冒頭のところ だけで終わっちゃったりしますが(笑),曲が展開する中で明るいメロディになったりします.暗く空を覆う冬が終わり,むかえる春の喜び,みたいな(笑). いや,東欧は夏のハンガリーにいったことがあるだけなのでよくわかりませんが(笑).

 で,今回の演奏台では取り上げられていませんが,せっかくなのでドボルザークの代表作を.という事で,弦楽四重奏「アメリカ」.CDは,安定感 をとってスメタナ四重奏団.今風じゃないのかもしれませんが.で,カップリングがチャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番.いやー,私はこっちに聴き入って しまって(笑),これ,久々に聴きました.多分25年ぶりとか,そういう感じ.
 昔はFM番組の放送をカセット・テープに録音して(エア・チェックと呼んでいた)手持ちのレパートリーを増やすが当たり前で,そのために番組表が乗って いる多くのFM番組 雑誌もあ りました(週刊FM,FM fan,FMレコパル,etc).で,チャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番は,そうしてエア・チェックした曲の一つでした.確か,チャイコ フスキー特集で,交響曲「悲愴」のついでだったような気もしますが,そのカセット・テープはもちろん今は行方不明(笑).旋律も忘れていました.で,これ の第 2楽章を聞いて,「ああ,これは・・・」と思いだしました.で,聴いているのは「アメリカ」じゃなくて,チャイコばっかり(笑).まいいか.うれしい誤算 です. (この演奏もあたりでした.スメタ ナ四重奏団.1966の吹きこみ)

 ドボルザークの代表作をこれを機会にCD買おう計画,最後はチェロ協奏曲です.CDはどれにしようかと迷いました.ネットで評判を集めたりして. 最後 まで迷ったのが「ロストロポーヴィチ&小澤征爾・ボストン」と「デュ・プレ&バレンボイム,シカゴ」.「老練の大チェリスト」対「夭折の天才チェ リスト」.で,さんざん 迷った挙句,結局両方買った(笑).(この 演奏は,ほんとうに素晴らしい.ロストロポーヴィチがこのチェロ協奏曲を録音したのは,これが最後とか.ジャケット写真の小澤征爾も若いです.この時代で すから,オケはボストン(注:この前まで間違ってロンドン,って書いてあった!そんな間違いすんな>オレ(笑)))

 デュ・プレはこの曲だけのCDもあるんですが(1500円くらい),どうせならEMIから出ている全集17枚組を,ということで,こちらを購 入.17枚組で確か4500円とかそれくらい(定価はもうちょい高いんですが).だったら,デュ・プレはこれで揃えてしまったほうがよろしい.(デュ・プレは17枚組.あとからチマチマ買い足す のなら,一気に買っておくのもいいかも.時間を見て,ゆっきり聴きます)

 どちらが好みか...というと,きちんとした聴き比べはこれから...酒飲んだあと,布団に入りながら聴くので,いずれも第一楽章の冒頭しか聴け ない (笑).しかも,チェロが入ってくるのが第一楽章の3分30秒を過ぎたあたりからなので,ほんとに酔っていると,音楽プレイヤーのスイッチを入れただけで 安心して,ロストロポーヴィチともデュ・プレとも会えないまま眠りに落ちてしまう(笑).そんなことできちんと聞く機会がなかったんですが,ここ数日にい たって,両方のチェロ協奏曲を聴くことができました.

 いや,この録音された演奏に付いて言えばロストロポーヴィチです.デュ・プレの境遇を慮っても,ロストロポーヴィチです.これは潜在的にロストロ ポー ヴィチの方がデユ・プレより優れているということでは,必ずしもありません.今回聞いた録音に関しては,ということです.年齢も経験も全然違うので,二人 の演奏家の ポテンシャルを比べられるものではありません.デュ・プレがあと20年,30年生きたら,現代にいたってどんな演奏をしてくれたかと思います.

 あ,ちなみに,youtubeではロストロポーヴィチとボストン・フィルの演奏が挙がっていますが,ロストロポーヴィチと小澤ボストンの方がはる かにい いです.これはyoutubeでオオチャクしないでCD買いましょう(笑).

 あのロストロポーヴィチのように長生きするのにはきちんと意義があって,解釈を洗練したり演奏を高めたりする,それだけの時間があるんですね. デュ・プ レは夭折してしまったので,残念ながら今生でその機会はなかった.ロストロポーヴィチは,天の恵みか本人の善行か,長生きすることでそれを可能にした. 長生きには意義があるんです,皆さん.若いうちにはできないことを出来る機会を得ます.それは皆さん次第ですが.ですから,早く死ねば芸術家としてカッコ いいわけではありません(笑).死ぬまで勉強,修行です.そうやって自分を高めることをしていくのが人生でしょう.前に向かって歩んでいれば,それが道半 ばで途 切れたように見えても,本人は悔いはないはず.ですから,デュ・プレが無念だったとは思いたくありません.前を向いて,それに向かって生きていったのです から.

 というところで,今回は.今回も信州大学交響楽団の演奏をきっかけに,様々な出会いのきっかけを頂きました.感謝.ありがとうございます.


(ちょっとだけ続きあり