どうも,島野です.
 冬はですね,信州松本にいても植物観察ってできないんですよ.みんな葉っぱが散って.昆虫も見ない.ま,カモの仲間とかコハクチョウなんかは来るんです が.で,この季節は,それを逆手にとって,むしろ暖温帯の常緑樹やら常緑のシダなんかを見に行くのが良いですね.松本よりは暖かいし.3月とかになるとスギ 花粉攻撃が待っていますから,2月いっぱいまでですかね.
 そうしたわけで,伊豆半島に出かけてきました.


 現場を色々まわることになるんですが,西伊豆は堂ヶ島にある「らんの里・堂ヶ島」という観光施設を訪ねます.いや,ランそのものにはあまり興味はないん ですが,一応植物園相当施設は訪れておこうと思った次第です.
 入園料は千円ちょっとだったかな.忘れた.そのくらい.
クワズイモ
 中は,温室がいくつもあって,それを渡り歩いて見て回るスタイル.綺麗な洋ランが美しく展示されています.が,そちらはスルー.帰ってきてから写真を見 なおしても,全然ランの写真は撮ってなかった(笑).
 で,クワズイモ.サトイモ科です.以前宮崎の青島で見ました.毒が あります.人の顔なんか,簡単に隠れるぐらいの大きな葉を持ちます.
ガジュマル
 日本に生育していない洋ランには興味がないんですが,そこは温室ですから,日本の亜熱帯植物も一応あるわけですね.沖縄まではなかなかいけませんから, これは価値があります.
 で,ガジュマル.クワ科.幹から根っこがたくさんぶら下がっていま す.空中湿度が高ければ,これで水分吸収がokなんでしょうかね.自然状態の生育地で は,地中の根っこは海水につかったりしていますから.
ガジュマル
 葉はこんな感じ.常緑で,互生,単葉,全縁.いや,そんな植物はごまんとありますね.冬芽に注目.あ,冬芽って言わないのかな,亜熱帯植物では.ま,枝 の先の芽です.芽鱗痕とか無いサカキのような先がとがった,ツルンとした芽がつきま す.これが特徴.ガジュマル.
アコウ
 こちらは日本の亜熱帯における,もうひとつのビッグ・メジャー,アコウで す.
 葉柄が長く,葉身はやや先の方が幅広.私は葉全体を信州名物の五平餅に例えます(笑).
アコウ
 こちら,アコウの芽はガジュマルに比べると,普通の芽のようなタイプ.
アコウ
 幹に花が咲き,実が付くように見えます.写真の緑の丸が実.実際には,幹に短い短枝(たんし)がつき,その先につきます.実の付いている下の部分から, うにょっとしたものがでていますね?これが短枝.
ビカクシダ
 こちらは変わって,ビカクシダ.日本にはありません.いや,興味の 中心は日本の植物なんですが,これはあまりに立派だったので,つい写真に収めました. シ マモクセイの幹に着生しています.艶のある明るい茶色の部分から緑の葉っぱまで含めてビカクシダです.結構大きくて,端から端までは1mを超えるんじゃな いでしょうか.
オオタニワタリ
 オオタニワタリ.チャセンシダ科のシダです.この写真だと遠近感が 分からないため大きさが分からないと思いますが,葉一枚の長さは80cmとかありま す.かなり大型.
 信州に分布するこの仲間はコタニワタリ.北信方面で見ますね.以前,戸隠の記事で取り上げました.
 
オオタニワタリ
 葉の裏のソーラスを記録します.中軸に近いところに線状につきますね.
 後ろはランの花が写っています.普通の人はあちらを見ますね.
パパイヤ
 パパイヤ.五つに切れ込んだ葉がさらに切れこんで特徴的な形を示し ます.多分互生なんですが,木化した幹の下の方からは葉をつけず,幹の先端から葉をつ けます.こうした葉のつけ方はヤツデなんかと似ていますね.
シマトネリコ
 シマトネリコ.モチノキ科トネリコ属なんでしょう.信州の冷温帯で はアオダモなんかがこのトネリコ属.モチノキ科なので対生,そしてトネリコ属ですから 奇数羽状複葉です.これも亜熱帯のものなので,信州でアオダモかシマトネリコかを迷うことはありません(笑).
ハイビスカス
 ま,観葉植物なんですが,ビッグ・メジャーだけ紹介.ハイビスカスで す.ハーブ・ティーでハイビスカス・ティーってありますね.爽やかな酸味があって, 私は好きです.
 ただ,私がハーブティーを飲んでいると「似合わない」と言われるので,学生諸君には秘密です(笑).
ブーゲンビレア ブーゲンビリア
 こちらは,ブーゲンビレア.ブーゲンビリア,って言う表現のほうがよく見るでしょうか,Bougainvilleaeです.花びらのように見えるピンクのものは, 花びらでなく,葉が変化した苞(ほう)でしょうね.
 むかし南野陽子が日曜の夜にやっていたラジオ番組を思い出します.「オンキョー・ラディアン,まぶしい音ね」40代なかばのおっさんしか分からないと思いますが(笑).
 そういえばナンノもようやく結婚とか.おめでとうございます.先をこされました(笑).

 いくつかの温室を渡り歩いて(屋根が付いているので雨でもok),園内の野外コースに出ます.雨の日でも貸傘(無料)があるので,心配いりません.
 右奥にかすかに見えるのは,吊り橋.コースの一部です.

 吊り橋から.確か(笑).吊り橋の上でなくても,その付近から.西伊豆の海岸を望みます.晴れていたらかなり気持ちいいはず.
ゲットウ
 やや,見慣れない植物.というか,My新種ですが,日本のものではないかも.しばらく歩いて行くと別の個体に札が付いていて,「ゲットウ」という植物だ と分かりました.あとで調べると,九州南部から沖縄にかけて自生するとか.遠目にはハナミョウガ等に似ていますが,ハナミョウガは毛がふさふさでビロード状,こちらは無毛です.
 メモ帳を持ちあわせていなかったんですが,ダンディ坂野を頭に思い浮かべ,例のポーズで「ゲットウ」で暗記しました.ありがとう,ダンディ.
イソギク
 こちらはキク科の草本で,イソギクで良いですね.表面は紅葉して赤 くなっていますが,裏面は白い毛がびっしり.似た仲間も色いろあるんですが,これは自 然分布を考えて,イソギクでいいと思います.
ホウライシダ
 お,来ました.ホウライシダ.暖温帯といえばこれです.
ホウライシダ
 ホウライシダ,葉のアップ.裏面です.胞子嚢群がちょこっとだけ付いているのが見えますね.葉の先の縁に付いている膜状の部分がそうです.
 クジャクシダと同じアジアンタムです.あとで出てくるハコネシダに比べると,葉(小羽片)の先の切れ込みが深く,形が不揃いです.
トベラ
 海辺の低木,トベラ.温かい地方では道脇の植裁にもよく使われま す.互生,単葉,全縁で葉の先の方が広い倒卵形です.放射状に葉をつけますので,葉の付 け根の方が隣の葉と重ならない様にという適応でしょう.よく出来ています.
ユズリハ ヒメユズリハ ?
 海岸沿いはヒメユズリハかと思うんですが,葉身が長く,葉柄が短いですね.この特徴はユズリハなんですが...葉の裏が見られれば....ということで ペンディン グ.
ヒトツバ
 崖に生えたシダ.ヒトツバです.大量.
ヒトツバ
 葉の裏を見ておきましょう.胞子たっぷり.
タチシノブ
 タチシノブですね.あってますよね?
ホシダ
 こちらはホシダ.葉の先の部分が長くとがります.
イヌマキ
 樹木です.イヌマキ.確か千葉県の県の木じゃなかったかな.
アロエ
 アロエです.アロエも細かく言うといろいろな種類があるんですが, 我々が一般に「アロエ」と言っているポピュラーなものですね.で,なんで写真とったか というと花が付いているから.今回の伊豆の旅で,花の付いているアロエはたくさん見ました.信州じゃ見ませんよね?
オオイタビ
 木本のツル植物,オオイタビですね.以前,九州・福岡の柳川で見ま した.うーん,過去の経験,学習が生きていますね.
マルバグミ
 マルバグミです.海岸沿いに生育するグミの仲間.房総半島や伊豆半 島で見ます.この写真は葉の表面だけですが,裏面は白く褐色の斑点があり,なるほどグ ミだ,とわかるものです.
シノブ
 シダですねえ.これは分からないので佐藤先生行き.で,シノブだろうと のこと.ただ,普通のシノブは落葉.これは常緑っぽいので,ちょっと...ということ でした.ま温かい地方なので枯れていないという可能性が一つ,もうひとつの可能性は,ここが「らんの里」という事でここに本来無いものが過去に植えられ て,それが逃げ出した可能性がある,ということでした.
シノブ
 一応葉の裏も撮っておきましょう.近寄りすぎると,内蔵ストロボではレンズ自身が影を作るため,下の方は暗くなってしまいますね.
カワヅザクラ
 もうサクラが咲いています.もちろん早咲きのものですが,カワヅザクラで す.カワヅとは伊豆にある地名「河津」のことでしょう.地元のサクラということ ですね.
リュウビンタイ
 きました,リュウビンタイ.写真だと分からないと思いますが,高さ 1.5m位になる大型のシダです.以前,横浜国立大学時代,みんなで八丈島に行ったこ とがあって,その時見た以来ですかね.
 これは,図鑑によると伊豆半島に自然分布があるようです.この個体自体がどうかは別ですが.
ウラジロ
 で,「らんの里」を離れて南伊豆の植物を見ていきます.場所は加茂町.まずはウラ ジロ.定番ですね.
ヘラシダ
 伊勢神宮でも見た,ヘラシダ.べろーんと.
フウトウカズラ
 フウトウカズラですね.ツル植物です.
ヒメアリドオシ
 ヒメアリドオシですね.ただのアリドオシは,大きい葉と小さい葉が 交互につきますが,これはそうしたことはありません.
コセリバオウレン ?
 セリバオウレン...?いや,三回三出複葉に見えますので,コセリバオウレンで しょうか?静岡県にはウスギオウレンというのもあるらしいですが...
マルバフユイチゴ
 マルバフユイチゴ.別名コバノフユイチゴ.実が付いていますね.ただのフユイチゴはもっと葉の先がとが ります.
アオノクマタケラン
 うーむ,アオノクマタケランだと思います.葉は無毛なのでハナミョ ウガではありません.分布もないし.さっきのゲットウでもないし.アオノクマタケラ ン,図鑑やネットで花の写真を見るとみんな花茎は立っています.これは実になったからでしょうか,垂れてしまっています.実の数が少なく見えますが,これは 花茎の先がちぎれていたためで,動物が食べてちぎった可能性も考えられます.
 また見に行って確かめたいと思います.花の時期とか.
コモチシダ
 また小さいんですが,コモチシダですね.子供(胚珠)を持つところ までいっていません.
マツザカシダ
 オオバノイノモトソウの子供...かと思いつつ,どうやら,マツザカシダ.佐藤先生曰く,葉の真ん中が白い斑を持つものが多い,ということで.
クラマゴケ
 こちらもシダです.クラマゴケ.ヒメクラマゴケという近似種があり ますが,ヒメクラマゴケは大きな葉と小さな葉があるので(二型葉といっていいのか な),見分けられます.
マメヅタ
 これもシダです.マメヅタ.暖温帯の着生シダですね.石垣や大きな 木の幹肌につきます.
ハコネシダ
 ハコネシダですね.ホウライシダやハコネシダと同じ属,アジアンタ ム.ホウライシダは葉の先が切れこむというか分かれますが,こちら,ハコネシダは細か く切れこむもののわかれるまで行きません.この点,パーツ,パーツはクジャクシダに似ているかも.
ツボクサ
ツボクサですね.ヤマケイの野に咲く花図鑑だと,このツ ボクサの写真が良くないので,現物でツボクサを見ていても,野に咲く花図鑑ではツボクサと分からな いのではないかと思います.土佐のなんとかっていう図鑑(今手元にない)のツボクサ写真が良くて,私はこれでツボクサを知りました.
アシタバ ハマウド ?
 アシタバかハマウドです.見分け方は...葉柄を切ったとき,アシタバは黄色い汁出るんですが,ハマウドはほとんどでないことで見分けら れます
 今回はちぎりませんでした.食べたりするんならともかく,種の同定のためだけにわざわざちぎる必要を感じませんでした.本格的な仕事ならまた別ですが.
イワガネゼンマイ
 お,暖温帯ですね.イワガネソウか,イワガネゼンマイです.詳しく見ると...
イワガネゼンマイ
 イワガネゼンマイでした.裏面の脈を見たときに,側脈が別れたら別 れたまんま.これがイワガネゼンマイ.イワガネソウは,一度別れた側脈がまたくっつき ます.
 ま,両者の雑種があったりして面倒らしいですが,基本は上記のとおり.
富士山 Mt. Fuji
 日を改めて,西伊豆.駿河湾ごしの富士山です.
ユキツバキ
 海岸沿いで植物を見ていきますが,まずはヤブツバキ.花が咲いてい ます.日本海側のユキツバキは,葉を裏面から透かした時,脈が明るく透明に透けて見え ますが,ヤブツバキは透けません.
ボタンボウフウ ?
 いやあ,これ,どうなんでしょうかね.いろいろ考えても,ボタンボウフウの葉の小さいものなんじゃないかと思えるんですが...時間を見つけて,図鑑で ちゃんと調べてみます.セリ科までは間違いないですね.
ハマボッス ツルナ
 こちらも海岸植物らしくなってきました.左の,葉の中央に明瞭な脈がある,葉のツルツルの植物がハマボッス,右側のアカザの葉のブ厚くなったようなのが ツルナ.ハマボッスは,以前佐渡に行ったときにみて,こ のサイトでも紹介しました.右のツルナは食べられるそうで,おひたしとかみそ汁の具とかにいいらし いです.やったこと無いけど.
ハマオモト
 ハマオモトですね.海岸に出現する植物ですが,この個体については 植裁かもしれません.
ラセイタソウ キヅタ
 真ん中したのギザギザの葉,ラセイタソウですね.周りはキヅタ
コモチシダ
 前日も見ましたが,コモチシダ.これも子供(胚珠)はまだ持ってい ませんでしたが,このサイズになると確信が持てます.
オニヤブソテツ
 オニヤブソテツ.これも海岸沿いの植物.葉がテカテカしているのが 特徴です.海岸以外でヤブソテツの写真を取るとき,暗くてストロボを炊くとヤブソテ ツでも葉が光ったりするんですが,これは,ストロボとたかなくても葉が光っています.信州では...見ないと思いますが.

 そんなことで,二泊三日の調査を終えました.この調査で論文を書いて云々ということにはなりませんが,勉強.バックグラウンドの知識を増やし(深め)将 来にそなえる,ということです.車で移動したので,行きがけに沼津漁港のお店で近海地魚のお寿司をいただきました.


トップに戻る