菊池多賀夫先生が,ご逝去されました.突然のことで,大変驚いています.
菊池先生は,東北大学,岐阜大学,横浜国立大学で教鞭を取られ,多くのお弟子さんを育
てられました.
私が関わりを持たせていただいたのは,菊池先生が横浜国立大学の環境科学研究センターに大学院大学の教授として移られてからです.当時私は,千葉大学で
博士号の学位を取り,横浜国立大学の同所で期限付きの研究員(一応身分的には講師)を終え,電力中央研究所の,これまた非正規研究員として修行中でした.
横国(よここく,横浜国立大学を略してこう呼びます)で機会があるときに私が伺うと,快く迎えてくださいました.相手は名のある大先生,こちらは名もなき
若造ということでしたから,私のような者を受け入れてくださるというのは,大変なことなんです.
菊池先生は植物生態学者なのですが,特に地形と植生の関係について造形が深く,この分野で御著書も出されています(「地形植生誌」東京大学出版会).
そうしたご専門なんですが,植生地理,景観生態,その他,様々な分野にご理解があり,若者がそうしたテーマに取り組んだり,あるいは相談を持ちかけたり
すると,誰へだてなく話を聞いて下さり,的確な,ご自身の経験に裏打ちされたアドバイスをなさっていらっしゃいました.研究者として,師として,一人の先
輩としての人間として,本当に誰からも愛された方でした.
私は知らなかったのですが,なくなってから聞かされた話です.菊池先生は,横国に移る前にガンを患われており,それは完治,克服されていたようです.横
国の頃は定期的にガンの診断を受けられ,ご自分の体に注意をされていたとのこと.今回のガンが見つかったときにはさすがにご覚悟を決められたらしく,周り
の方々にお言葉を残されたようです.
暖かな語り口,優しいまなざし.まぶたから離れることはありません.写真は,菊池先生が2009年に開かれた鳥取の植生学会大会の懇親会でご挨拶をされ
ているところです.菊池先生の研究成果やその志は,後の我々が引き継いでいきましょう.菊池多賀夫先生の御霊(みたま)が安らかであるようにお祈り申し上
げます.
今までありがとうございました. | トップへ戻る