島野です.2011年12月3日,生態学会の中部地区会,冬大会です.春大会は信州の白馬でやった.冬大会は,大人たちで会合をするのと,学生諸君のポ スター発表会から成り立ちます.大勢の皆さんが集まりました.
 ついでに一泊して,身延山久遠寺の境内でシダを中心にフロラ調査をしましたので,その時のシダを紹介します.
 「なんでシダ?」かというと,生物科学科の佐藤利幸先生+佐藤研の学生諸君とお出かけしたので,これはシダを教わろう,ということです.
 チャンス!


やって来ました静岡大学.

ポスター発表賞の発表と表彰です.

で,夜は食事をすることになって...

駅北側にある繁華街でクリスマスイルミネーションを見たりしました.

クリスマス,私は何をするわけでもないですが,街がにぎやかなのはいいですね.

なんですが,静岡大学のキャンパスでサザンカなんかも観察していま す.真面目か!
カナリーヤシ タマシダ
 さて,翌日.静岡から山梨県を通って信州松本を目指しますが,高速の静岡インターへ向かう途中に怪しいフェニックスが.
 フェニックス,というのはこの仲間の総称で,種としては,カナリーヤシですね.ですが,幹の途中にモコモコがついています(笑).
タマシダ
 モコモコの正体がこれ,タマシダです.これがものすっごくたくさん ついていて,左の写真のようになっています.
 タマシダはツルシダ科.暖温帯に生育します.よくこうやって他の植物にくっついていますが,別に寄生して栄養をもらったりしているわけではありません. 生育立地として利用している,ということですね.

で,国道52号線を北上しますが,フロラ調査で身延山久遠寺によります.日蓮上人縁(ゆかり)のお寺.写真は山門です.
シノブ
 まずは,シノブ.黄葉して,もう今年のシーズンは終わりという雰囲 気.
ヒメノキシノブ
 こちらはヒメノキシノブです.ノキシノブに似ますが,ノキシノブは 葉の先端がとがるのに対し,こちらは先が丸まっています.これが特 徴.
タチシノブ
 遠くにタチシノブがったんで,写真を取ったんですが,遠いので小さ い.で,トリミングしました.シャープさはないですが,一応雰囲気だけでも.
オクマワラビ
オクマワラビだと教えられました.クマワラビは胞子をつ け手,その部分が枯れてなくなってしまいますが,オクマワラビは無くならない.じゃあ,胞子がない時はどうやって見分けるのかというと,クマワラビは裏が白いがオクマワラビはそれほどでもない,ということでした.な るほど,そんな見分け技が!
ゲジゲジシダ
 ゲジゲジシダ.よく見ると左右の羽片がずれてつきま す.で,さらに羽軸に葉があって,翼になっています.わかりやすい.

 日中シンクロ(ある程度明るいのにストロボを光らせる)をしていますので,ちょっとその分画像がダブってしまっています.
コバノヒノキシダ
 これも遠くてトリミング.コバノヒノキシダです.写真の崖の手前に 川(谷)があって,これ以上近寄れなかったんです(涙
イワトラノオ
 こちらは谷の手前側なので,寄って写真を取ることが出来ました.イワトラノオ. チャセンシダ科.ちょっとコバノヒノキシダに似ますね.
オオバノイノモトソウ
オオバノイノモトソウ.これも暖温帯のシダ.松本では見 ませんね.イノモトソウ科です.
シノブ
 シノブの落葉したものがあったので,ひろって撮影.フラッシュでピ カッと.
ヒメワラビ
 前回までメシダの仲間のようなことを書いていたんですが,私の聞き間違い.佐藤先生にうかがって確認したら,ヒメワラビとのこと.大変失礼しました.
ヒメワラビ
「メ」は女,「ヒメ」は姫です.で,シダとかワラビとかよくある名前なので,勝手に勘違いして間違えてしまいました.こちらはヒメワラビの拡大.
トラノオシダ
 こちら,トラノオシダ.下に長く垂れる葉を虎の尻尾に例えていま す.チャセンシダ科チャセンシダ属.コバノヒノキシダに外見がちょこっと似ますが.コバノヒノキシダは暖温帯のものですね.
トラノオシダ
 葉の裏はこんな感じです,トラノオシダ.
フモトシダ
 これは良い,立派なフモトシダですね.以前,三重の志摩地方でみた やつは,葉がまばらですが,こっちは立派.ソーラスはカップ状とのこと.
オオイタチシダ
 オオイタチシダ.オシダ科.県の大塚先生の本「信州のシダ」によれ ば,似たヤマイタチシダに比べ葉身の先が急に細くなるとか.
 両方共,葉のオモテ面が脈にそって裏側に引っ込む感じがありますね.
ミゾシダ
 これもよく見るとのことですが,普通すぎて特徴がない感じが.ミゾシダで す.
ミゾシダ
ミゾシダ,羽軸に毛があるとのこと.これが特徴とか.でもそんなのいっぱいあるし.
 みると葉の先端の方は羽片が羽軸に対して交互に出ています.うーむ.
ゼンマイ
 よく見る普通種も写真に収めておきましょう.ゼンマイ.黄葉です な.
ビロードシダ
 こちらはビロードシダ.神戸で蛭間くんに教わったやつ.こっちはす ごく長い.手触りは確かにビロード状.
久遠寺
 久遠寺の本堂です.でかい.建物はここだけでなく,まだまだたくさんあります.
ハコネシダ
 切通し斜面を見ていきます.ハコネシダ.これはちっちゃい.ホウラ イシダに似ますが,ハコネシダは葉の先が2つに割れてその間にソーラスをつけますが,ホウライシダは葉の先全体に付けます.あ,この話,西伊豆や神戸の回 にも書いたな.ググったら自分のサイトが出てきて笑った.
ミツデウラボシ
 ミツデウラボシ.こんな風に,よく崖に着生しています.時間がたっ て成熟したものは葉が3つにわかれますが,写真のように分かれていないものでも胞子をつけて,成熟状態になります.
アカハナワラビ
  アカハナワラビだそうな.フユノハナワラビに似ます よね.アカハナワラビは,フユノハナワラビに比べ鋸歯が細かいとか.なるほど.今度そうした視点で見てみます.
 ナツノハナワラビ位全然違うと分かりやすいんだが(笑).
クジャクシダ
 クジャクシダ.ちょっと貧弱化な.その上はコバノヒノキシダでしょ うね.
フモトシダ
 これもフモトシダ.いいね.フモトシダを見るなら身延山久遠寺.そんな事言ったらおこられちゃうかな(笑).

 山はそろそろ冬支度ですね.
オオイタチシダ
 オオイタチシダ,再び.ちょっと遠いですが,葉の表面の脈にそって 引っ込んだ感じが見て取れます.
ハカタシダ オオバノイノモトソウ
 2種写っていますが,右上がハカタシダ.コバノカナワラビやホソバ カナワラビに比べ,葉のサイズが大きい割に羽片が少ない.で,羽軸が広く開いているように見えますね.いずれもオシダ科カナワラビ属です.
 左下は先程も出たオオバノイノモトソウ
イヌワラビ
 イヌワラビは,羽軸周辺が紫色になるのが特徴なんですが,こうやっ て枯れかけてしまうと,わかりづらいですね.
 ですが,佐藤先生のお墨付きをいただきましたので,安心.イヌワラビです.
オクマワラビ
 オクマワラビ.こっちは葉の裏が白くない.
クマワラビ
 で,こちらがクマワラビという.葉の裏が白いといいますが,葉のオ モテ面もオクマワラビに比べるとちょっと白いですね.
クマワラビ
 で,見てみましょう.クマワラビ葉の裏.確かに白っぽい.なるほどねーソーラスつ いてなくても分かるんだ.
クマワラビ
  おまけにクマワラビの特徴を上げると,鱗片(羽軸に付 いている細かい鰹節みたいなヤツ)が明るいとか.写真に収めておきましょう.
身延山久遠寺
 久遠寺名物の階段.ダッシュで登りきれ!しかし,これを登るとシダには会えないので,男坂を登っていくのがおすすめ.
久遠寺
 黄葉の美しい時期でした.

 ここだけを目標に来るのは,ちょっと大変ですが,静岡方面に出たときの「ついで」であれば,ここは結構な狙い目です.お寺なので採取はできませんが.春, また緑の季節に,皆さんもどうぞ.

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