阿智村の旧清内路村地区に大きなミズナラがあって,国の天然記念物になっているんですが,これが折れてしまって,今後どう保存していくかという委員会が開 かれました.

 これがそのミズナラ.今は写真向かって右側だけが残っていますが,以前は左側にも立派な枝があった,と.
 バランスが悪くなっていることもあり,まずは応急処置で下から支柱で枝を支えます.

 樹勢を見るための一つの方法は,休眠芽がきちんとあるかどうか,枝の先端に枯れ(梢端枯損,しょうたんこそん)があるかどうか.
 こちらは休眠芽も数多くついていて,枯れもみられません.

 こちらの枝は,ちょっと休眠芽が少ないかな.

応急処置.幹が落ちて内部がさらされてしまった部分は,そこから腐朽が入らないように,覆います.

 皆さんで今後を検討中.

 で,私,とあることに気づきます.

 ミズナラのある写真左側と右側で生えている草本の種が違います.
 左側は,山の自然の植物,という感じなんですが,右側は運動用のグラウンドとか,そんな造成地のような植物.

ミズナラに近い方.マイヅルソウですね.

それからタチツボスミレ.

そしてフキ.いずれも山の森林の林床や林縁なんかで見られるもの.

ところが,ミズナラから離れたところは舗装されていない林道に生えるようなウシノケグサ.

植被率が低く,土も「土壌」とはいえないような状態.どうやら土砂を盛って,平らに造成したようですね.

 さっきの部分を斜面の縁で見てみましょう.
 ミズナラに近い,奥の方は,自然の土壌が表面を張っているのでしょう,土壌中に空隙もあるためササが生育しています.ササは地下茎で繁殖するので,土壌 が発達していないと生育できません.
 手前の造成地は,土砂を固めただけなので,土壌が発達しておらず,ササが生育できません.こりゃ駄目だ.

 林道脇で,土壌断面が露出しているところを見てみましょう.ヒノキの子ですが,奥には根を伸ばさず(伸ばせず?),薄い表面だけを利用していますね.多 分林道工事などででた,植物の生育に適していない土砂を積んで造成したのでしょう.

  これじゃ厳しい.ミミズもいないでしょう.ミミズがいなければ,リターなんかを食べてもらえないし,土壌の団粒構造もできない.すると,土は水も空気も保 てない.それでは植物は育ちません.




 土壌の悪さが直ちに樹木の幹折れを招いたということではないでしょうが,ミズナラの樹勢を劣化させる遠因になったことが考えられます.

 今後,ミズナラを大事にしていくためにも,ミズナラの生育に適した(土壌)環境を整備することが必要でしょう.

 この土地を造成した方々は,この立派なミズナラを多くの人に愛でて欲しくて,良かれと思って行ったことでしょう.その気持は尊いです.次はミズナラため に,ということで今後の管理,よろしくおねがいします.




 ちなみに,粂野さんという樹木医さんが委員会に入っていらっしゃいます.重要な立場の方です.
 で,粂野先生に教えていただいたのですが,こうした部分の発根,養生には,ピートモス,炭,肥料なんかを混ぜてあてがうとのこと.実際に作業していただ くのは業者さんですが,ぜひよろしくお願いします.

 帰り,ちょっと地元の神社にお参りに行きます.清内路地区の氏神様でしょうか.





という感じでちょっといいところでした.道が細くて大変だけど(笑).




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