2013年秋の長野県植物研究会.場所は飯田.今回は,県外講師として,タケ・ササがご専門の宇都宮大学名誉教授の小林幹夫先生お招きして,いろいろ教え ていただいたり,見ていこうということになりました.


会員の皆さん.

 小林幹夫先生.
 長野県植物研究会自体は,土日なんですが,実は先生とその他の研究者の方々が金曜日には飯田に来られていて,観察会・勉強会があり,私はそこから参加さ せて頂いております.
 金曜日編.
 まずはスズタケの仲間なんですが,ちょっと毛がある.毛がモサモサあると,ケスズなんですが,これ,アラゲスズタケ とかウスゲスズタケとか呼ばれているものだそうです.
 知らなかった.
 
 これがアラゲスズタケの実.花柄に毛が目立ちますね.


 こちらはヤダケ.弓矢に使ったタケということで,このネーミング.稈鞘と呼ばれる,茶色い皮の部分が長いです.

  ヤダケの稈鞘のアップ.毛が多いですね.

 ヤダケ.葉舌が三角形で長いのがわかりますでしょうか.

  ヤダケの稈鞘.長いので,緑のタケの部分が非常に少なく見えます.

 ササから離れますが,アブラススキ.ま同じイネ科か.
 花穂は垂れます.オオアブラススキの穂は垂れないのでこれが区別点.

 お,私も久々に見ました,マルバノキ.木曽にあるんですが,飯田下伊那でもたまに見られる.で,今回そのチャンスに恵まれました.
 マルバノキ,葉の基部は心形.裏は白っぽい.実がついていますね.

 こちらはカリヤス.ススキに似ますが,ススキと違い,花にのぎがありません.

 ね,花穂をこうすると,ススキはのぎがつんと出るんですが,これはでない.
 それと花穂の枝分かれが3,4ほんと少ないですね.

こちらもカリヤスです.

 イネ科,オオネズミガヤ.これは教えていただきました.ノギが長い.それから第二包穎が長いのが特徴.

 背景を黒にしてもう一枚.あんまり変わらないか.

 オオネズミガヤ,葉舌はほとんどありませんね.

 そんなこんなで金曜日は終了.私は飯田から一旦松本へ帰ります.

 で,土曜日.
 今回,自分がどれほどササを知らないかということを痛感しました.今までこれ,クマイザサだと思っていたんですが,違った.
 クマイザサはチマキザサ節,ですがこれ,アマギザサ節のマキヤマザサとのこと.

マキヤマザサ,茎は下から簡単に折れるとのこと.
 写真は葉舌のアップ.ルーペを使わなくても分かるくらい長いです.肩毛は初めあるんですが,落ちやすいとのこと.写真でも肩毛はありませんね.

 アキヤマザサ,フシが膨れます.

 それから,アキヤマザサ,葉の裏に毛があるのも特徴とか.以上アキヤマザサでした.

  さて,ササ以外.まずはトネアザミ.ナンブアザミの一つのタイプ.

 イヌトウバナですね.この写真じゃ分かりづらいんですが,  萼の毛が長いんですよね.短ければミヤマトウバナでいいんですが.

 おなじみ,オクノカンスゲ.

 オクノカンスゲです.

 コウシンヤマハッカですね.カメバヒキオコシの変種になっています.ですが,カメバヒキオコシのような葉の形では全然ありませんね.

 コウシンヤマハッカ,花序を横から見ます.いいですね.

 ササの道を進みます.

 ヒメヘビイチゴ.黄緑色っぽい鮮やかな色をしますね.

 アケボノソウです.葉の三行脈が目立ちます.
 アケボノソウ,こちらは花が咲いていました.リンドウ科.

 ヒメキンミズヒキ.ちっちゃい.写真を取るのも大変.小さいので植物に寄ると,ピントの合う範囲が狭くなって...

 ヤマニガナ.頂小葉...とは言わないかな(笑),葉の先端が三角形になりますね.ムラサキニガナは葉の先端が切れ込み,三方にわかれます.ま,花が咲 いていれば色が違いますが(笑).

 ヤマニガナ.花は終わってしまいました.

 あ,ヤマニガナの葉のアップです.

  オククルマムグラです.茎に毛があるのが特徴です.写真は花の終わった後のみ.2分果なんですが,一つが発育不良なので一つに見えます.

 オククルマムグラの茎.毛というか小さいトゲというか,他の植物に引っかかります.

 ミヤマツチトリモチですね.寄生植物.似たツチトリモチは温かい海沿いに出現.

 こちらもミヤマツチトリモチ.カエデ類の根に寄生するとのこと.
 これ,きのこに見えますが,双子葉植物になっています.APGでは分類未確定とか(笑).

 コバノフユイチゴ.別名マルバフユイチゴ.葉の先が尖らず丸いですね.

  近寄れなかったんですが,ヒメノガリヤスでいいでしょうね. ノギがでないので.

 アブラガヤのうち,アイバソウと呼ばれているものです.
 こちらも,コウシンヤマハッカ

  あー,藤田くん,これなんだっけ,ということでカワチブシ. 葉は深く切れ込む 全体無毛 西の分布 東には同じく無毛の サンヨウブシ があるが深くは切れ込まない

カワチブシ,全体に無毛.そして...

 葉は深く切れ込みます,カワチブシ.
 西の分布で,東には同じく無毛のサンヨウブシがありますが,サンヨウブシは深くは切れ込まないということで区別できるはずです.

 キンミズヒキなんですが,たまに1mとかせの高いのがあって,毛がモサモサしてるのありますよね.藤田プロによると,種としてはキンミズヒキなんです が,オオキンミズヒキとして区別されているらしい.うん,大きくて毛が多い.

 ね,毛が目立ちます,オオキンミズヒキ.

 こちらは花序.背の高いぶんたくさん付いている印象がありますね,オオキンミズヒキ.

 ホソバガンクビソウ.なるほど,葉が細いですね.スマートな印象.

 ホソバガンクビソウ,上の葉はほとんど葉柄がなく葉身がくさび形になって茎につながる感じですが,茎の下の方の葉は葉柄がありますね.

 オオウラジロノキ.この写真じゃわかりませんね.

 なんとか葉のアップを.

 葉の裏はびっしりと白毛.

 そんな感じで,土曜日のエクスカーションは終了.で,宿に帰るんですが,小林先生をお誘いして,飯田の愛宕神社へ.
 同行された三樹さんが,飯田地方のタケササの分布を,長野県植物誌で調べていらして,愛宕神社にクリオザサ (ゲンケイチク)があるという情報があるので,急遽行ってみることにしました.

 で,これがそれなんですが,クリオザサで記録されていましたが,実際には葉鞘に毛があるということで,変種のカリワシノというササであることがわかりま した.

 私としては,どちらも聞いたことすらなかったので,カリワシノをその変種のクリオザサで記録した,その人がすごいなと思っています.
 いやあ,奥が深いわ.

夜は和やかに情報交換.私は泊まらず,食事の後,松本へ帰りました.あ,嫁の運転ね.

 明けて日曜日は小林幹夫先生の講演会.大学を引退してなおエネルギッシュに問題提起などをされています.
 うーん,こうでなくてはいけないんだな>オレ.

 講演会に続いて,小林先生によるタケササの同定会.
 これ,ハチク.ハチクとマダケは似ているんですが(というか,私は区別できてなかった),これ,枝の最下部を切って穴がなければハチク, あればマダケだということ.

 左の写真の切ったところ,切り落とした方をアップで.なるほど,穴がありませんね.でハチク,と.







 そんなことで,三日間の勉強会でした.

 ここには出していないんですが,ササの見分け方の資料や論文を小林幹夫先生から頂いて,これ,ちょっと,県内のササの分布はきちんと整理しないといけな いかなという感じ.一仕事になりそうです.

それでは.

おまけ

  金曜日,東大千葉演習林の久本洋子先生も師匠の小林先生と一緒に来られていたのですが,路上にてナナフシモドキを発見.触覚が前足より短いのでナナフシモ ドキ.頭より先に出ている2本の長いのは,触覚ではなく,前足です(笑).
 ナナフシは触覚のが長い.




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