島野です.ええとですね,私,河川水辺の国勢調査のアドバイザーっていうんでしょうか,あれをやらせて頂いています.で,大町ダムの調査を担当するコン サルタント業者さんに「ぜひ現場を見たい」と申し上げていたところ,現場を見るっていうか,現場で一緒に調査することになりました(笑).手伝いというよ りも,私が種名を挙げていって,業者の方がメモをとるという感じで,メインですか.いやはや.
 業者さんとしては,一人分仕事がうきますし,アドバイザーとかになっている島野の実力も見えるし,一石二鳥でしょう(笑).
 はい,勉強させていただくつもりで,同行させていただきました,大町ダム.今回はダムの下の川に面した森林を歩きます.


 マイマイガです.春先さんざん幼虫(毛虫)を見ていたんですが,成虫はこちら.4-5cmありますかね.結構大きい.
 カキ,リンゴ,ナシなんかの広葉樹の葉を食べる害虫.ドクガ科です.

 さて,ヨグソミネバリ.カバノキ科.枝を折るとサロメチールの臭がします.筋肉痛の時に塗るやつ.サリチル酸メチルを含んでいるため.

 ウツボグサ.いいですかね.日頃,花で覚えていると,こういう葉だけの状態の時に思い浮かびません.葉で覚えるのも大事ですね.

 こちらはヤマホタルブクロの葉.ホタルブクロかヤマホタルブクロかは花が咲いて萼片の反り返りぐあいを見ないとわからないですが,この辺だとヤマホタル ブクロですね.

 ツガです.実が枝先について,この付き方が枝に対し90度,直角につくようにみえるのがツガ.コメツガは枝先にまっすぐつくように見えます.もちろん重 みで見は下をむくんですが.

 ウスノキ.スノキ,オオバスノキに似ますが,スノキもオオバスノキも,枝には2列になって毛が生えるんですが,ウスノキは枝全体に生えます.

 ヒメノガリヤス.ノガリヤスに似ますが,ノガリヤスは小花の先から「のぎ」がでますが,ヒメノガリヤスはでません.

  オオチドメ.別名をヤマチドメ.写真中央の丸い葉がそうです.チドメグサとの見分け方ですが,葉の後ろに高く花茎がでています.オオチドメ(ヤマチドメ) は,花の方が葉の高さより高くつきます.チドメグサは花が葉より下.

 ウメガサソウ.白い小さな花をつけますが,今回は花なしでした.

 サワフタギですね.久々だったので,現場でちょっと迷いましたが.葉の縁の鋸歯が外向きに伸びます.これがサワフタギ.タンナサワフタギは葉の鋸歯が波 状になって葉の先端の方に曲がって伸びます.

 ニシノホンモンジスゲですね.ぱっと見の特徴は葉が細い.

 もう季節的には遅い感じですが,花序の方も写真をとっておきましょう,ニシノホンモンジスゲ.

  こちらはミヤマカンスゲ.ニシノホンモンジスゲに比べると葉が太いですね.オクノカンスゲと似るんですが...

 根元の部分を見ます.茶色ならミヤマカンスゲ,赤紫だとオクノカンスゲ.
 これ,写真を取るときにストロボを炊くと,どっちも同じような色に見えてしまうのが困るんですが.

  花の萼片を見ないと私は即断できないんですが,ミヤマトウバナとのこと.ちなみに後でミヤマトウバナの萼の写真が出ますので,そちらでははっきり.ただ, 葉の形や全体の雰囲気は抑えておかないといけませんね.

  サルナシ.葉柄が赤く太くトゲがごつい.あ,マタタビに対してですが.

 マンサクですね.春先,展葉に先立ち,黄色い花を咲かせます.まず咲く→まんず咲く→まんさく,です.

 ヒナウチワカエデ.葉の切れ込みの部分がよく見るとヘアピンカーブになっています.ここが特徴.

 ナツトウダイ.この仲間は花をルーペで覗いてイボがあるとかないとかで見分けますが,それは,また今度.

 ナツノタムラソウでしょう.花から雄しべが出ていればナツノタムラソウ,でていなければアキノタムラソウ.あとはナツノタムラソウで茎などに腺毛が多け ればケナツノタムラソウ,別名ミヤマナツノタムラソウ.

 カノツメソウです.セリ科.左下に3つに分かれた葉が見えます.これがカノツメソウの葉で,ま,この葉で見分ける感じですね.

 トリアシショウマ.私が勉強していた頃はアカショウマの変種扱いだったと思いますが今はどうなんでしょうか.
 頂小葉などが心形というか,耳たぶ状になります.これがトリアシショウマ.ならないのはアカショウマ.

 エゾユズリハ.雪国要素.雪に埋まることで寒さを回避し,常緑の葉を保ちます.

  ナニワズ.私も久々に見ました.現地では「えー,なんだっけ,日本海側に出るオニシバリ...」と言った感じで「大阪の地名が入っていたよな...」でナ ニワズと思いだしました.

 シダは不得意なので,教えてもらいます.イッポンワラビとのこと.

  ソーラス丸いんだそうです,イッポンワラビ.

 ミゾソバなんですが,葉のくびれる部分が余り括れないものをヤマミゾソバというらしいです.
 
 アケボノソウですね.リンドウ科.花咲いていると見事なんですが.

 コウシンヤマハッカですかねー.クロバナノヒキオコシ?参りました.ですが,また秋の調査で確認して頂けるとのこと.おまかせ.

 こちらはエイザンスミレ.花の時期はヒゴのように細い葉ですが,花が終わると葉が大きくなります.

 ハクウンボクですね.葉柄内芽.

 ツリバナ... spでいいですか?葉の形が少しサワダツのような形に見えなくもないですが...ヒロハ,オオバではないです.

 こちらはオクノカンスゲ.根元を見ると...

 ご覧のように赤紫色です.
 ですが,先ほどミヤマカンスゲのところで述べたように,ストロボ写真にすると難しいです.

 アサノハカエデですね.葉の質が麻の布のようだということでこのネーミング.

 こちらはオオモミジ.イロハモミジやヤマモミジと比べ,鋸歯が細かく揃っています.葉もやはり少し大きい.葉の切れ込みはヒナウチワカエデのようなヘア ピン型にはなりません.

 カモシカの糞とのこと.現地でカモシカをご覧になっているんでしょう.
 シカの糞とカモシカの糞,見た目で区別は難しいです.説明を受けたこともあるんですが.ただ,カモシカは溜糞をするので,写真のような糞塊の糞粒が200粒以 上だとカモシカの可能性がグッと高まります.

 ムラサキシキブ.庭先によく植わっているのは,コムラサキの方ですね.

 フクロシダとのこと.教わっちゃいました.

 裏をめくると,ソーラスもついていました.パチリ.

 クルマバソウですね.この仲間はなかなか難しいんですが...

 アワブキ.ちょっと色が悪いですね.
 切った枝を火にくべると,枝先から泡が出るのでこの名前.友人がやってみたことがあるんですが,ホントだった.

 なんだこれ,ハギなんですが,非常に大きい.コンサルの方の話では,外来のオクシモハギかも知れないとのこと.

 ね,大きいでしょう.

 葉裏は白い毛がびっしり.

 こちらはミヤマトウバナでいいですね.ちゃんと萼の毛が短い.長いのはイヌトウバナ.

 河原にでます.オオバヤナギ.

 葉の裏が白いのはバッコヤナギに似ているんですが...

 バッコヤナギの葉裏が白いのは白毛のためですが,オオバヤナギは毛ではなくて,葉の裏それ自身が白いんですね.ですから毛の有無を見ればわかります.

 ドロノキ.これもヤナギ科です.

 カワラハハコ.キク科.葉は細いですね.

 イタチハギですが,河川水辺の国勢調査では,クロバナエンジュと呼ばれています.ま,どちらでもいいですが.葉を揉むと柑橘系の臭がすると教えていただ いたのですが,たしかにそうでした.新しいな.

  ホッスガヤ.今まで写真をきちんと取る機会がなかった.季節の問題とか...花穂の部分を見るとヨシなんかにも似ているんですが...

 ご覧のようにはは細いです,ホッスガヤ.葉舌が長いですね.
 ホッスガヤ,名前は法具(仏具)の払子(ほっす)から来ています.花の穂の感じね.

  トクサのようなんですが,イヌドクサ.どこが違うかというと...

 このイヌドクサ,トクサと違い輪生枝を出すんですね.イヌスギナを非常に長く間延びさせたような印象.
 初見でした.ありがたや.

 コミネカエデです.

 アラゲアオダモ.アオダモ,ケアオダモ,アラゲアオダモと順に毛深くなっていきます.

 オオヤマザクラでいいですね.日本海要素.葉が大きい.

  ベニバナイチヤクソウ葉の表面がテカっていますね.

 マンサク,実がついていました.写真をパチリ.

 コバンバコナスビですね.現地で私がコバンバコナスビというと,なんですかそれ,という話に.図鑑にはでていないので,スマホでネットにアクセス.検索 してチェック.アドレスがshinshu-u.ac.jpとなっていたのでよく見たら自分のサイトでした(笑).

 ミズでいいですね.真ん中の主脈から伸びる側脈がほぼ90度に近く外へ向かいます.

 後はアオミズなんかは花枝がありますので,一応確認のための見ておきましょう.大丈夫ですね.

 イタヤカエデなんですが,変種で色々分けていますね.私はあんまりガンバってわけなくていいんじゃないかと思うんですが(笑).で,分けるとなると,オ ニイタヤ.

 葉裏の脈の分岐点,茶色い毛が密生していますね.

  林を抜けて,林道を戻ります.なんだかんだ3時間ばかりみっちりやりました.
 で,ヤブタバコ.上に伸びた茎が途中で横に広がります.

 こんな感じ.ヤブタバコ.花は秋ですかね.

 穴を見つけます.キツネでしょう.巣穴を掘ろうとしたところ,石にあたって断念したようです.

 イチヤクソウ.先ほどのベニバナイチヤクと比べると,花の色だけでなく,葉の模様も違いますね.

 ユキグニミツバツツジ.比較的最近...といっても20年位前でしょうか,新しく分けられたツツジです.

 葉の裏はこんな感じ.気をつけるのはダイセンミツバとかでしょうかね.

 さて,私知らなかったんですが,今増えている外来種で,シラホシムグラかも,ということです.花は白で葉は長く,葉の付け根に白い長毛があるということ なんですが...
 たしかに普通のヤエムグラは花が黄色というか黄緑というかで,白くはないですね.

 実もついていました.

 どうなんですかね,シラホシムグラなんでしょうか.県内で報告されているのかどうか.もしそうなら,初報告になるかも,ですね.今度の河川水辺の調査の 報告書.




という訳で,久々にみっちりフロラ調査をやりました.仕事でやると,見たものは全て記録しないといけないので,やはり大変です.

また,プロと一緒に歩くという機会もなかなか無いので,色々勉強になりました.ありがとうございます.




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