2014年,長野県植物研究会の秋の例会です.今回は木曽を訪れ,王滝村に泊まる一泊二日の観察会でした.


 木曽福島の近くに集合.私は嫁,娘と早めに来ていたんですが,最終的にコンビニでお金をおろしていたので,遅刻.
 自動車に分乗して川沿いの林道を目指します.坪井君,お世話になりました.

 いい色ですね.ツリフネソウ.


 ゲンノショウコです.東日本は写真のように白っぽい花ですが,西日本は濃いピンク色の花が多いですね.ここは白っぽかったです.

  ヤクシソウ.葉身の基部が耳たぶ状に茎を抱きます.この葉の形が薬師如来さまの後ろのメラメラと燃え上がっている炎に見立ててヤクシソウとい う名前になりました.

  トネアザミです.私が若い頃は,これ,ナンブアザミの変種かなんかだったんですが,今は独立種らしいです.

 ナンブアザミもトネアザミも,総苞片が反り返るのが特徴.トネアザミはこの部分が細いですよね.ナンブアザミは太い印象.
 内側の総苞の緑色の真ん中がピンクでここが粘ります.藤田くん,いつも教えてもらってありがとう.

 トネアザミ,葉にも変異があって,これは比較的切れ込むタイプ.

 こちらは葉のあまり切れ込まないタイプのトネアザミ.難しいですね.

  ホツツジ.花が穂になってつくことからのネーミングでしょう.雄しべが長く突き出しているのが確認できます.似たミヤマホツツジはこの雄しべが上向きに 90度折れ曲がるようにカーブしています.
 葉も違いますが.

 トウゴクミツバツツジ? にしては葉柄が長いか.サイゴクミツバツツジやダイセンミツバツツジも分布するはず.
 ちゃんと葉の裏の毛を見ないといけなかったんですが,この時は見ていませんでした.写真がない.

  クサコアカソですね.コアカソは木本,クサコアカソは草本という違いがありますが,鋸歯の数が違います.
 コアカソは片側の鋸歯が10くらいまで.クサコアカソは10より多い鋸歯をつけます.あと,葉が大きくですよね,クサコアカソ.

 ヤマニガナ.花は終わってしまいました.葉の形が特徴.長い柄があって,先端は三角形.ムラサキニガナはこの三角形の部分が3つに切れ込みます.
 ま,花が咲いていれば紫色なので間違えないですが.

 うーむ,初見.藤田くんに教わりました.ビッチュウヤマハギとのこと.吹き付け緑化由来の侵入種.
 

 成熟した葉にも白毛が残るのが特徴とのこと.花も豪華ですね.ヤマハギなんかに比べると,葉も花も全体に大きいですね.
 これ,県内の分布に関する報告って,ちゃんとあるのかな.

 ミツバベンケイソウ.ですがいい写真でなくて申し訳ないです.

 フサザクラです.渓谷沿いに分布しますね.サクラと名がついていますが,いわゆるバラ科のサクラとは関係ありません.ツルンとした幹肌に皮目が横に入 り,これがサクラに似ているというところからの名前です.

 クサボタンです.対生,三出複葉,切れ込み+鋸歯.クサ,といっていますが,半低木です.

 アオミズですね.ミズとの違いはまずサイズが大きいんですが,アオミズは花柄があるのに対し,ミズはありません(無いことになっている).
 葉で見るときは,葉のサイズが違いますので,鋸歯の数なんかが圧倒的に違います.ミズは少ない.

 ヒヨドリバナ.よく草原で見る高茎草本ですね.

  ナガミノツルキケマン.多分.実にならないとわかりませんが.

 こちらはキツリフネ.送粉昆虫が来ていますね.なんですかね.
 距(きょ,筒状の部分)を細くすることで,他の花の花粉が雌しべにつくようになっていますね.

 ミヤマイタチシダ.光沢があるのが特徴のひとつ.あとは...

 ウスゲクロモジ.別名ミヤマクロモジ. 葉は薄く,かつ倒卵形です.

 このウスゲクロモジ,葉の裏は,脈が浮き上がるのも特徴とか.
 ま,表を見るだけでわかりますが.

 一方,こちらはただのクロモジ.葉は厚く 表面はやや光沢があります.葉をちぎったり,枝を折るとクスノキ科独特の香りがしますが,いたずらに傷めるのはやめましょう.

 こちらはクロモジの葉の裏.あまり脈はうきでない,と.
 クロモジの枝は,高級和菓子の楊枝や,茶道で主菓子(おもがし)を取るときの箸に使われたりします.

  コカンスゲ.葉は細いんですが,葉の断面はM字型.葉を根元方向にさすると痛い.っていうかやっちゃダメ.太平洋型の分布.

 一応コカンスゲの根元を撮ったんですが,リターが多くてよくわかんないですね.失敗.一応,葉鞘の色が茶色いんですが.

 シハイスミレ.私は一見,フモトスミレかと思ったんですが,藤田プロは一言「シハイスミレです」.藤田くんが言うならそうだね.
 裏は紫でやはりフモトスミレに似ます(笑).葉は尖り基部は心形で全体に無毛とのこと. フモトスミレのほうが葉が丸っこく,シハイスミレは長い印象で すね.
 花が咲いていれば,フモトスミレは花が白く距が2mmと短い,シハイスミレは濃いピンクで距が5-7mmと長いので分かるんですが.

 カンボク.葉は対生で切れ込み+鋸歯とカエデの仲間のような特徴なんですが,ガマズミの仲間なのでなんというかアジサイのような花が咲きます(雑な説明 ですみません).でカエデは翼果,こちらは液果.

 オニルリソウ.ムラサキ科です.毛が濃い(多い).近縁のサワルリソウは毛が少なくサイズも小さいですね.

 オニルリソウの実.

  イヌトウバナ.ミヤマトウバナと似ますが,イヌトウバナは萼に直角に生える毛が長く伸びます.

 オヤマボクチ.あまりいい写真でなくてすみません.

  ヨメナ.冠毛は短いです.ノコンギクは長くて目立ちますね.

ヤマニガナ.写真の物は2mほどと,背が高かった.

  ジガバチソウだそうです.私は未熟でバルブを見たり花のパーツの細かさを見ないと確信できないんですが,見る人が見るとわかる.
 葉の立ち上がり具合とか,鋸歯の深さを見れるんですね.経験は大事.

 タマアジサイです.夏の花ですが,まだ咲いていました.蕾が丸く,それでタマアジサイ(玉紫陽花)という名前です.
 山地帯の渓谷沿いにでます.礫(レキ)ではなく,土壌のある立地.

 オオネズミガヤ?ネズミガヤの仲間には違いないです.
 似た仲間にはミヤマネズミガヤやネズミガヤがありますが,これら2種は包穎が小穂の半分の長さ.キダチノネズミガヤとコシノネズミガヤもそうです. オオネズミガヤはこれらより包穎が短いはずなんすが.

 私は,基本,サンプル(標本)は持って帰らないんですが,これは穂の部分だけ研究用に.うん,オオネズミガヤでいいですかね.

 オゼサトメシダ だそうだ.蛭間くんはサトメシダと言っていたんですが,藤田くんが「うーんサトメシダにしますか」というので,話を聞くと,サトメシダの人里に多いタイプはサトメシダ,山にあるタイプはオゼサトメシダと分けるんだそうな.

  典型的なものは葉の表面や羽軸に毛があるということなので写真をとったのですが,よくわかりません.左の写真とこの写真はオリンパスのTG-3を使用.寄れます.が,色がちょっと.









そんなことで,この日は終了.渓谷沿いの,気持ちいい林道歩きでした.


 翌日.王滝村の林道歩き.ここは一般自動車の通行は禁止されているので,安心して歩くことが出来ました.

 いい天気でした.素晴らしい.

 まずはアキノウナギツカミ.一般には湿地に生育します.この日も林道歩きですが,やはり湿った立地に生育していました.

 アキノウナギツカミの花.まだ開ききってはいないですね.タデ科.

 アキノウナギツカミ,何が特徴かというと,「ウナギをつかめる」と形容された茎のトゲ,そして,葉は茎を抱くような形をしている様ですね.

 キリシマミズキだそうな.私はパッと見, コウヤミズキかと思ったんですが,コウヤミズキに似て葉が細いのが特徴とか.例によって藤田プロの解説です.

  もう少し細かく見ると,キリシマミズキは葉柄に毛があるとのこと.コウヤミズキにはないということなので,そこがポイントですか.

  ということで,キリシマミズキの葉柄を撮影.確かに毛がありますね.コウヤミズキにはないということで.

 シロモジですね.木曽は西日本要素がでます.松本の方はダンコウバイが生育します.

 これも写真がひどくてすみません.モンシロチョウです.アブラナ科が食草,吸蜜はいろいろ.これはクサボタン.

 ウスギヨウラク.図鑑では花の写真ばかりで,葉の様子はよくわかりませんね.

 ウスギヨウラクの葉の裏の様子.葉の裏は真っ白.網目状の脈がよく見えますね.

 イヌコウジュ.シソ科.ヒメジソの葉(菱型)を長楕円形にしたような形.裏面をめくると...

 裏面をめくると,ヒメジソと同じように油点がびっしりあります.緑色のポツポツがそうです.

 ハスノハイチゴですね.バラ科.葉柄は葉の中心の方についていて,盾状(たてじょう)というやつです.で,この葉の付き方がハスと同様ですので,ハスノ ハイチゴという命名になったのでしょう.

 こちらは初見,ハクサンカメバヒキオコシ.この写真では,葉が三裂していますが,普通のカメバヒキオコシは,先端の部分だけが長く伸びる形をしていて, それを知っていると,この形は異様です.ハクサンは石川,福井,岐阜にまたがる白山のこと.

 ん,またでましたね.オオネズミガヤでいいですかね.

 包穎は...この写真では分かりませんね.

 あ,コカンスゲの全体写真です.よくわかんないですよね.

 ヒナウチワカエデですね.雪の少ない太平洋側に分布します.木曽が太平洋側とは言い難いかもしれませんが,雪の少ない地方ということでは,まあ,そうで しょうかね.
 標高の高いところはもちろん雪が多いですよ.御嶽山とかね.スキー場がありますし.

 藤田プロが周りの人とこれがなんだかんだと言っています.ん?
 「藤田くん,違うじゃん,これ,ドウダンの系統でしょ」
 「あ,そっちか,うん,これ,チチブドウダンだ」とのこと.

 よく公園で植わっているドウダンツツジは葉の形がひし形.これはもう少し丸みを帯びています.葉の質感などはよく似ています.葉の裏のテカリ,脈の走り 方.

 そんなこんなで二日間の観察会を終えます.
 おまけ.信州大学農学部出身で,現在,白馬五竜高山植物園の偉い人になっている坪井君から白馬五竜高山植物園で出している図鑑をいただきました.500 円だか1000円だか,忘れましたが良心的な値段..

 植物園で見られる植物をきれいな写真と簡潔な説明で,いい冊子じゃないですか.

 それと,クッキーを頂きました.私は甘いモノは食べないんですが,クッキーにコマクサの絵とか...

 ニッコウキスゲの絵なんかが描かれていて,好きな人が見れば,結構いいおみやげなんじゃないでしょうか.
 はっ,これって,私,ステルス・マーケティング(ステマ)に利用されているんでしょうか(笑)? そういうの,困るんですが(笑).
坪井くんはお子様が生まれて,奥様と親子三人水入らずで楽しく生活なさっているとのこと.お幸せに!















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