植物生態学ゼミ 課題HP


(松本市 広沢寺のヤマブキ 5/9撮影)

このページには、6/15の植生ゼミの観察内容と、個人的に出かけた上高地でみかけた植物(ほんの少しですが)をまとめてみました。


6/15植生ゼミ:大学構内の樹木の観察

 植生ゼミを受けはじめてから、自分が今までいかに周りの植物について知らなかったか思い知らされました。それでも、 ゼミが始まって から2ヵ月がたち、少しずつ植物の見方も変わってきたように思います。6/15は久しぶりに晴れたので、野外に出て大学構内の樹木をいくつか観察しました が、普段 よく通る場所にある樹木もよく観察してみると、 今まで見落としていたことがたくさんあったことに気がつきました。


始業まで少し時間があったので、生協周辺の樹木 をいくつか観察しました。


最初に目にとまったのは、図書館横のイチョウ。種名のプレートがつい ているので、わかりやすいです。まあ、イチョウは葉を見ればすぐに判断できますが。

イチョウの葉です。イチョウは、一見すると広葉樹のようですが、実は針葉樹に分類されます。葉の切れ込みが特徴的ですが、図鑑によると、切れ込みの深さは 若い木ほど深 く、成木は浅くなる傾向があるとのこと。


続いて、生協前広場のカツラです。この樹にもプレートがついていたの で、種名はすぐにわかりました。

持参していた樹木の図鑑で、さっそく葉の形を照合。対生、鋸歯です が、鋸歯がとがらずフリルのようになっているのが特徴的です。なお、新鮮な落ち葉がカラメルのような甘い香りを発することから、「香出(かづ)」→「カツ ラ」という名称が定着したそうです。

ここまで観察したところで、時間になりゼミがスタート。生協前広場から スタートして、キャンパス内の樹木を観察していきます。


まずは、生協前広場のハルニレです。ニレ科の葉は、一見バラ科の葉と よく似ていますが、ニレ科の葉は形が左右不対称であるという大きな特 徴を持っているので、それで見分けることができます。また、葉柄が短い葉の表面がざらつく、といった違いもあるそうです。


葉を見ると、左右不対称になっているのがよくわかります。



続いて、図書館横に植わっているウラジロモミシラビソです。左がウラジロモミで、右がシラビソです。この二種はともにマツ科モミ属で、気孔線が白い葉の形が扁平と、共通する部分が多く、よく似ていますが、枝の部分の「しわ」の有無で見分けられます。しわがあるのがウラ ジロモミ、ないのがシラビソです。さっそく枝を比べてみましょう。


ウラジロモミの枝。よく見ると…





枝にしわがあります。

こちらはシラビソの枝。しわがありません。一見同じように見えても、こうして拡大すると、違いがよくわかりますね。


今度は理学部A棟前へ移動し、周りの植物を見ていきます。まずは、A棟の入り口横に植わっているモミの木です。モミもシラビソやウラジロモミと同じマツ科モミ属ですが、モミの 葉はシラビソやウラジロモミと比べて、葉先が二つに分かれたりくぼんだりしているの で、判別するのはそれほど難しくありません。


また、モミの気孔線は、成木ではそれほど目立たず、前述の二種と容易に判別できますが、若木の気孔線は白いので、モミの若木は気孔線だけでは判別できません。このモミ もまだ若いようで、気孔線が白くなっています。



続いて、ウッドデッキ前のカイヅカイブキです。鱗状の葉が特徴的ですが、この葉の形はヒノキ科に特徴的に見られるものだと、このとき初めて知りました。特徴的なのは 枝 葉のつき方で、水平方向に枝を 伸ばすヒノキに対して、カイヅカイブキは上方へ向かって立体的に枝を 伸ばします。そのため、ヒノキに見られるような葉の表裏の区別がありません。

白い線のように見えるのは気孔線です。同じ針葉樹でも、 マツやモミとは葉の形がだいぶ違いますね。


同じくウッドデッキ前のシナノキです。昔はこの樹の皮から紙を作っ て、 長野県から朝廷へ収めていたことから、信濃の国という国名が生まれたと聞いたことはありましたが、構内に植わっていることは知りませんでした。


シナノキの風散布種子。結構大きいです。根元についてい る包葉が、種子を飛ばす役割を果たしているようです。


こちらはカエデ。葉がカエルの手に似ていることからこの名がついたそ うです。先ほどのカツラの種名の由来もそうですが、植物の種名の由来 はなかなかユニークなものが多いですね。

由来の通り、カエルの手に似た葉に、薄い緑色の種子がついています。カエデの種子も風散布種子です。こちらの種子は、以前講義室で風散布種子の実験を行っ た際に 作ったものに似てますね。



二つの風散布種子を並べてみると、大きさも形もかなり異なっているのがよくわかります。同じ風散布種子でも、やはりそれぞれの種でかなり違うようです。

理学部A棟から、“近くて遠い存在”である医学部の敷地へ。入学してから一年以上たちますが、ほとんど足を踏み入れたことがありません。 
敷地に入ってすぐの場所に、立派なケヤキが植わっていました。


ケヤキも風散布種子をもつ樹木です。葉の間に丸い種子が見えます。ケヤキのような大木は、種子をつ けるようになるまでに年数がかかるかわりに、できるだけ高い有利な位置で光合成を行うという戦略をとっているという話をゼミで聞いたとき、植物の間にも歴 然とした競争があることを実感し、ちょっとした 衝撃を受けました。それ以来、植物の生存戦略に対して興味がわいてきました。

ケヤキの近くに植わっていたコノテガシワという樹木。A棟前で学習し たので、一発でヒノキ科とわかりました(^^;カイヅカイブキとヒノキの枝ぶりが異なっているのと同じように、ヒノキが枝を水平面に広げるのに対し、コ ノテガシワは枝を垂直面に広げるという違いがあります。コノテガシワ という種名も、その枝ぶりを子供の手にたとえたところからきているそうです。



コノテガシワの葉は、カイヅカイブキと同様 に葉の表裏の区別がありません。ヒノキやカイヅカイブキに見られた白い気孔線が無いのも特徴の一つです。青っぽくて丸いものはコノテガシワの実です。面白 い形をしてますね。どことなく金平糖に似ている気がします。

医学部から戻ってくる途中、医学部図書館の前あたりにスズカケノキが 植わっていました。特徴的な形をした大きな葉が目を引きます。


スズカケノキの実です。葉も大きくて目立ちますが、実のなり方も独特です。スズカケノキという種名は、実が鈴に似ていることによるそうですが、個人的に は、実がつながっている部分が、山伏が修行のときに肩にかける結袈裟の形に似ていることと、修行のとき着用する法衣が「鈴懸(スズカケ)」という名称であ ることに由来しているのではないかと考えました。

最後を締めくくるのは、ヤマボウシです。丸い葉に弧を描くように伸びる葉脈は、ミズキ属の特徴だそうです。そういえば、ハナミズキの葉脈も弧を描いていたのを 思い出しました。梅雨時に咲く白い花が美しいことからこの名がついたそうですが、白いのは花弁ではなく、がくの部分だそうです。

6/3 上高地の植物
去 年の新入生ゼミナールからおよそ一年ぶりに上高地へ行ってきました。少しですが、見かけた植物を掲載します。



早朝の上高地。いい天気です。

遊歩道のいたるところでクマイザサが繁茂しています。朝だからよけい にわかりやすかったのですが、高木の間から差し込んでくる光をうまく受けて共存してい ることがわかりました。去年は、そんなところまで考えが及びませんでした。


植物図鑑を忘れていったので、現地で直接確認することはできなかったのですが、葉が 対 生というシソ科の特徴が見られたので、帰ってきてから シソ科であたり をつけて調べ、ラショウモンカズラだとつきとめました。このような ちょっとしたことを知っておくだけでも、だいぶ探す範囲を絞れるということを実感しまし た。

ヤマドリゼンマイですね。見ただけでわかった数少ない植 物の一つです(^^;湿った場所にまとまって群生するので、日陰などでも見かけます。去年の野外調査実習で行った志賀高原の湿原でも、大群落を形成してい ました。


ウエンストン碑近くの遊歩道の脇で、群生している黄色い花を発見。しかし図鑑が無いので種名がわかりません。何か特徴はないかな〜とよく見ると…

花びらの枚数が5枚です。ということはバラ科かな?と考えて、帰ってから調べてみました。時期と花の形から、たぶんキジムシロだと思います。


シラカンバです。上高地が位置する1500mという標高 は、植生分布において山地帯と亜高山帯の境界に位置します。そのため、上高地ではその両方の植生を見ることができます。山地帯と亜高山帯の樹木で比較しや すいものといえば、このシラカンバとダケカンバが代表的。こういったことを標高から連想できるようになったのも、去年との大きな違いです。

河童橋を通り過ぎ、明神へ向かいます。ここでも、遊歩道の脇にクマイザサが大群落を形成しています。


この画像ではわかりにくいですが、シナノキです。大学に植わっている 木よりもかなり大きいですね。帰って図鑑を見て知りましたが、シナノキは樹高が15mを超えることも珍しくないという大型の樹木だそうです。

クマイザサほどではありませんが、ニリンソウもこの時期遊歩道脇でよ く目にします。ニリンソウは、高木が葉をつけていない春の間に、花を咲かせて子孫を残す、春植物の一種です。高木が多く光が届きにくい林内では、木本植物 と共存す るために、春植物という戦略をとる種も多数存在します。


明神橋の上から、梓川とその河岸に群生するケショウヤナギを撮影。河 岸沿いに自生しているケショウヤナギは、1属1種という珍しい樹木 で、日本では上高地と北海道の一部にのみ生息していま す。標高1500mに位置しながら、広大な平坦地が広がるという特殊性のおかげで、上高地は寒冷な気候を好むケショウヤナギの数少ない群生地になっていま す。

明神ニノ池です。現在は池ですが、過湿な環境を好む植物によって少しずつ湿地化してきているようです。長い時間をかけて、少しずつ湿地へと変化していくで しょう。

以上、ほんの少しですが上高地についてまとめました。今回、植生や植物 について去年までと違った見方ができるようになって、素直にうれしかった部分があった一方、まだまだ勉強(+体験)不足だと感じたことも多々ありました。 植生ゼミをきっかけに、身の回りの植物について図鑑を片手にいろいろと調べてみようと思います。今回上高地に出かけて、時間を かけて植物や植生を見てまわったことは、そのためのいい動機付けになりました。






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