植物生態学ゼミ、フィールド調査

撮影日 2008年7月1日
2008年7月 4日 提出
信州大学農学部森林科学科
08A2027A 田邊大輔

今回、私が選んだ調査地は、アルプス公園内に流れる沢 の河畔林です。
ヤブをかき分け、沢登りを楽しみつつ、身近な環境について調査してきました。
私はデジカメを持っていないので、ポジフィルムでの撮影になりました。

  
アルプス公園に接しているリンゴ農園付近を流れる沢 は、前日の降雨によって増水しているようでした。この沢は、たまたまこの界隈をジョギングしてたときに発見した沢で、『西大門沢川』と言い、源流はアルプ ス公園、松本城の西を通り、奈良井川へ注いでいます。

左の写真は登り始めて15分くらいのところにあった砂防ダムですが、こ れより下流はすべて護岸が施されており、道路と交差する部分にカルバート(トンネル)が置かれています。しかし、この砂防ダムを越えると、右の写真のよう に、ナチュラルな蛇行した沢へと変容しました。

まず目に飛び込んできたのは、辺り一面に広がるヘビイ チゴ畑!思わず『ワオ!』の一言。
河畔林の林床でスゲ類と住み分けているようでした。一瞬、光が射した瞬間を収めました。
そして右の写真はヘビイチゴの実を食べたと思われる『食跡』です。この辺にはどんな動物
が生息しているのでしょうか。シカの寝床と足跡に似たものなら見つけたのですが・・・。
残念ながら糞を探す余裕がありませんでした。

ヘ ビイチゴ (バラ科ヘビイチゴ属)ROSACEAE Duchesnea chrysantha
やや湿ったところに生える多年草で、茎は地をはい、節から根を出してふえる。
小葉は長さ2〜3.5cm。葉腋から長い柄をだし、黄色の花を1個つける。
果実の大きさは1.2〜1.5cm。
  



林床に小さくて可愛い葉っぱを見つけました。
ヤマネコノメソウ(ユキノシタ科)に似ていますが・・・




  
林床のところどころに生えている、高さ1mくらいの草 があります。ヤブマオでしょうか。エゾイラクサに葉の形が似ていたので、やたらと触れるのは遠慮しました。天ぷらにしたら美味しそうですね(笑)。


ヤ ブマオ(イラクサ科カラムシ属)は山野にふつうに生える多年草で、高さ1〜2mになります。葉は対生、先端は尾状にとがり、葉の先ほど粗く て大きな鋸歯になります。花期は8〜10月。オニヤブマオは葉裏にビロード状の毛が密集します。
天然更新した若いケヤキがありました。ふつう河畔林と 言えばヤナギを思い浮かべますが、ここはケヤキがとても多いですね。葉と枝ごと風に乗って種を散布する『枝散布種』です。
ニレ科、学名はZelkovaserrata(Thunb.) Makino
落葉高木で樹高は高さ20〜30mにもなります。

大きなケヤキに出会いました。胸高の直径で80cmはありそうです。住 宅の梁や桁などの構造材や、家具(主にテーブルの天板)に使用されることで有名です。樹皮はなめらかで、老齢になると鱗状になり、はがれ易くなります。

イヌザンショウ(ミカン科)で す。丘陵帯から山地帯にふつうに見られる落葉低木で、樹高は2〜3m になり、葉は奇数羽状複葉で互生、小葉の長さは1.5〜4cmでサンショウよりも葉は小さく、小葉は11〜23枚あります。

沢ぶちで見つけたのは、クサノオウ(ケシ科クサノオウ属)です。日のあたる道ばたや草地、林縁などによ く生えます。棒状のものは果実で、中に種子が多数入っています。クサノオウは茎や葉を切ると乳液が出ることから「草の黄」だという説や、鎮痛の作用がある と言われることから「草の王」とも。

サワグルミ(クルミ科)の 大木がありました。胸高直径は60cm程でしょうか。オニグルミよりも沢によく生えることからサワグルミと言われます。葉は奇数羽状複葉で互生します。材 質はとても固く、濃い茶色をしている為に、多くは家具に利用されます。英名ではウォールナットと言います。
風か何らかの要因によって沢に倒れたケヤキの倒木を発見しました。樹皮 にはコケ類が蔓延っています。倒れてからだいぶ経ったのでしょう。
よし!対岸へファイト一発だ!とはいかず、危険なのでやめました。
シダ類が群生していましたが...わかりませんでした。
お、倒木更新!ではないですね。倒木に種が落ちて育ったヒメジョオンで す。
もういちどケヤキ(ニレ科)を ご紹介します。シルエットになった幹の造形がとても美しいですね。よくよく観察すると樹間、つまりギャップが開いているのがわかります。その要因として は、人為によるものか、自然によるものがありますが、ここの場合はたぶん前者の方でしょう。
草地のようなところにサワグルミが群生しています。樹間はうつ閉する部分と、ギャップがある部分に隔 たりがあります。地面に落ちた実生が発芽する条件が異なったのでしょうか。林床は湿地のように水はけの悪い土地です。木の太さがほとんど同じなので、同時 期に育ったと推測できます。
デリケートな生態系なので人間が手を入れてはいけないハビタットです。
おまけ


クリ(ブナ科)
Castanea crenata Sieb. et Zucc.


南松本駅から西へ自転車を走らせると、農業用水路の縁にクリが林立しているのが目に留まりました。私有地なので勝手に入るのは遠慮しましたが、遠くからで もクリの花があることは、視覚からでなくても、その独特の臭気を嗅ぐことによって容易に判断できます。

栗は住宅構造材でも、とくに湿度や水の影響を
受けやすい部分、例えば土台や台所によく使われる木です。また、非常にねじれやすい材料としても知られ、山で伐採して天然乾燥を経て利用できるまでに4・ 5年はかかると言われています。
考察

まず、身近にこのよ うなフィールドがあることに驚きました。しかし、そうでなくても、植物や生き物を観察する想いと力があれば、どんな発見でも日常の中で起こりうるというこ とを、この授業から学ぶことができました。
植物の分類から始まり、図鑑の引き方、実践的なフィールド調査、webの作成に至るまで、島野先生に手取り足取りご教授いただきました、島野先生ありがと うございました。
参考資料

阿部正敏『葉による野生植物の検索図鑑』(株)誠文堂新光社
馬場多久男『葉でわかる樹木』 信濃毎日新聞社
『山渓ハンディ図鑑1/野に咲く花』 株式会社 山と渓谷社







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