植 物生態学ゼミ~学 校内で見つけた植物 

     信州大学理学部生物科学科  日台 雄斗  


草本ー春 Spring

イヌナズナ
 
イヌ ナズナ(アブラナ科)  
ナズナに似ているが食用にならない事からイヌナズナという名が
付いた。(ヘビイチゴなどをはじめとして、動物名が付く植物は
食用にならないらしい)
当のナズナ(またの名をペンペングサ)の方は花の色が白く、
明らかに見分けはつくのだが…。



ナズナ

ナズナ(アブラナ科)通称:ぺんぺん草
夏になるとすぐに枯れることから「夏無(なつな)」で、これが訛って「ナズナ」という名前になったという説がある。
春の七草のひとつに数えられる…が、春になるとどこにでも生える雑草でもある。木も生えてないような荒れた土地のことを指す言葉に「ぺんぺん草が生える」 という言葉があるのも理解できるくらいどこからでも生えてくる。
かつては冬の間の貴重な野菜として、また、下痢・肝臓病・高血圧などに効果を示す民間薬として利用されていたらしい。
最近ではそれに取って代わるものがたくさんある関係でいつの間にか雑草扱いされている…。

オランダミミナグサ(ナデシコ科)
ナデシコ科だけど名前通り外来種。大 和じゃな い撫子。
葉がネズミの耳に似た形なのでこの名前。
セイヨウタンポポ同様在来種(ミミナグサ)を圧倒している。
ナデシコ科の花は5枚の花弁をもつ1cm位の小さい花を咲かせるものが多いが、自己主張はしないけれどもよくよく見てみると可愛らしいのがナデシコ科、と 自分は勝手に解釈している。


セイヨウタンポポセイヨウタンポポ(分解)
セイヨウタンポポ(キク科)
春になると公園などでほぼ確実にみられるお馴染みのタンポポ。
実は右の写真の花が30個以上も集まって左の写真のように
なっている。
受粉しなくても種を作ることができ、なおかつ悪い環境条件下で
も生息可能なため、近年在来種のタンポポはセイヨウタンポポに
取って代わられている。


カラスノエンドウ(マメ科)
果実か熟すると黒くなることからカラスの名が用いられている。
果実の形はサヤエンドウを小さくしたような感じになっていて、
中には種子が5個程度入っていた。
食用にもなるらしい。

スズメノエンドウ(マメ科)
カラスノエンドウに比べて小型なので、カラスに対してスズメの名を用いられた。
花・葉・果実どれを見てもカラスノエンドウを一回り小さくしたような感じになっている。種子も2個。
学校にはなかったが、カラスノエンドウとスズメノエンドウの中間に位置する種があり、ラ スノエンドウとズメノエンドウのと いうことでカスマグサと呼ばれているらしい。
命名者のセンス に脱帽。




左から順に

スズメノチャヒキ
ナガハグサ
ホソムギ      (すべてイネ科)

<スズメノチャヒキ>(スズメノチャヒキ属)
カラスムギ(別名チャヒキグサ)という食用にならない植物に似ていて、穂が小さいことからカラスに対してスズメということで(?)この名前がついた。
基本的に小さい植物はスズメノ…やヒメ…という名前になるようだ。

<ナガハグサ>(イチゴツナギ属)
葉は長くない。左においてあるスズメノチャヒキと比較して3分の1も無い。
命名者は何を思ってこの名前を付けたのだろう か


<ホソムギ>(ドクムギ属)
穂が茎に沿ってきっちりと互生しているため、細く見える。


同じイネ科でも、属によって葉や穂の形態が大きく異なることがこの3種を比べることで実感できた。
…でもイネ科の種は1万種以上あるらしいと聞いて、「これらを形態の似たもの同士(属)に分類して、そこからさらに細かく見て1種1種定義していった昔の 人たちの苦労がどれほどのものであったのだろう…。」と思った。



<草本ー夏 Summer






エノコログサ(イネ科)通称:ネコジャラシ
どこにでも生える。
空き地や河川敷はおろか道路端のコンクリートの割れ目からでも
生えてくるというかなりの生命力の持ち主。

穂の先端についている毛は芒(のぎ)といい、拡大すると多数 の突起が付いている。(おそらく種子を動物に食べられないようにするためのものと思われる)



ムラサキエノコログサ(イネ科)
←左側写真のエノコログサの変種。
一見するとわかりづらいが穂が紫色で、
他の部分はほとんど差がない。

こちらも芒を拡大すると多数の突起がついている。
エノコログサに混ざって一緒に生えていることが多く、よく見てみると違いが分かる。

ムギクサ(イネ科)
遠くから見るとエノコログサに似ているような気がしなくもな いが、これはオオムギ属に分類されていて、エノコログサとは完全に別物らしい。
昔この草もネコジャラシだろうと思っていたのは自分だけでは ないはずだ…と思う。

アヤメ(アヤメ科)
英名はIris(アイリス)。
昔は端午の節句に風呂に入れるショウブ(サトイモ科)をアヤメと呼んでいたらしい。
ちなみに、アヤメに近い種にハナショウブという種がある。
紛らわしい。


<木本 Trees




エ ドヒガン(バラ科)
一般的な桜であるソメイヨシノと比較して花が小さく、
木が高い。
ちなみにソメイヨシノはこのエドヒガンとオオシマザクラの
雑種。
オオシマザクラは花が大きいが葉が早く出てきてしまう。
エドヒガンは葉が出てくるのが遅いが花が小さい。
その双方の長所をとった結果がソメイヨシノらしい。

フジ(マメ科)
つる性の木本。柱などに右巻きに巻き付いている。
花からはよい香りがし、観察当日も花の近くを熊蜂が舞ってい た。
秋になると果実から水分が抜けていき、ある程度水分が抜けた ところで果実がねじれて中の種子が自動的にまき散らされるようになっているらしい。
ぜひ秋にはその様子を見てみたいと思う。

ヒイラギ(モクセイ科)
若い葉(左写真)には葉全体に鋭い鋸歯があり、成長した葉 (右写真)は一部のみに鋸歯をもつ。
この鋸歯はかなり鋭く、実際左の写真を撮ろうと木に近寄った 時に顔や手に当たって若干痛い思いをした。
これだけ鋭い鋸歯で守られていれば食べようとする虫もいな い…?(実際ヒイラギは病気や虫害に比較的強いそうだ)
また、この鋭い鋸歯を利用して、防犯目的でヒイラギを生垣に植えたりすることもあるらしい。





クサボケ(バラ科)
高さ1m程度の落葉樹。
そんなに鋭くない鋸歯を持っている。
カリンに近い性質を持っていて、果実からはよい香りがするとのこと。
大気汚染に強くない関係で近年では数が減っているらしい。
植え替えは簡単なので、庭木として利用される。(ちなみに自分の祖母の家の庭先にもあった)

トチノキ(トチノキ科)
5~7枚の小葉で一枚の葉を構成している(掌状複葉)。
家具の材料や街路樹として利用される。
(ちなみにパリ市街の街路樹であるマロニエはこのトチノキの 近縁種であるセイヨウトチノキのこと。)
見た目がクリの実に似ているトチノキの種子(栃の実)は渋抜きすれば食用にもなり、かつては不作の年の貴重な食料だった。


サルスベリ(ミソハギ科)
幹が太くなる時に外側の古い層がはがれて内側のすべすべした 面が現れるためにこの名前が付いた(※ただし猿は滑らない)。
花(8月に咲く)がきれいで、病気に耐性があり、さらに必要 以上に大きく成長しないため、庭や公園・学校などに植えられている(自分の家の近くの公園や小学校にもあった)。
葉は互生するが、右、左、右、左…と交互につくのではなく、右、右、左、左、右、 右、左、左…という付き方をしているのが特徴。


<感想>
普段何気なく目にしている樹木や雑草と呼ばれるような草でも、こうやって いつもとは違った見方をしてみるとやっぱり面白いものだなあと思いました。
これから先も生物のことを勉強していくにあたって、この「面白い」という感じを忘れずにやっていきたいと思います。
ありがとうございました!



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