信州大学 前期植物生態学ゼミ

工学部機械システム工学科 伊藤竜也

植物生態学の講義にて紹介された"普賢象"という桜の名前に 魅了された結果、仏教に関連した名前を持つ植物を調べるという内容に落ち着いた。 しかし植物を調べてからテーマ毎に選別するのではなく、 "仏教関連の名前"というテーマを先に決めてしまったのだから 普賢象以外に仏教関連の植物を探す当てなど無く、とても苦労する羽目になった。 なお植物の情報は殆どを 馬場多久夫著(2013)『葉でわかる樹木 625種の検索』信濃毎日新聞社  と 林弥栄監修、門田裕一改訂、平野隆久写真(2013)『山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花 増補改訂新盤』山と渓谷社 に頼っているので、掲載されていなかった植物等の情報量が少なくなっている。どうかご了承をば。

フゲンゾウ

フゲンゾウ バラ目バラ科サクラ属

大学構内にて撮影

室町時代には既に知られていたとされるヤエザクラの一種。バラ科の特徴であるガクが五つに分かれていることやヤエザクラの特徴である花弁が多いことの他に、フゲンゾウ特有の特徴として雌しべが葉化して花の中央から2本出ているというものがある。その葉化した雌しべが普賢菩薩が乗る普賢象の鼻に似ているとして、フゲンゾウという名前が付けられた。

前文でも書いた通り名前の、その響きの美しさでもってして私に仏教関連の名前を持つ植物のレポートを作らせた原因である。 これも前文で書いたことであるが、仏教関連の名前を持つ植物などフゲンゾウ以外にアテがなく、 レポート作成において苦労をするハメになった原因でもある。 市境を跨いで植物の写真を撮りに行くという苦行は、はたして私のためになっただろうか? 多分なっただろう。多分。

ナツツバキ(シャラノキ)

シャラノキ ツバキ目ツバキ科ナツツバキ属

長野県安曇野市三郷温5919 HAMAフラワーパーク安曇野にて撮影

落葉高木。樹高は10~15m、胸高直径は20~30cm、時に60cmになる。 葉は単葉で互生する。葉身は卵倒形または楕円型で低い鋸歯がある。葉の裏面、とりわけ葉脈上に長毛が散生する。

ヒメシャラ

シャラノキ ツバキ目ツバキ科ナツツバキ属

長野県安曇野市三郷温5919 HAMAフラワーパーク安曇野にて撮影

ナツツバキに似るも花、葉双方共に小ぶり

仏陀が入滅した際に四方のサラノキ四本の内、二本枯れたとされる。 枯れたサラノキが二本で沙羅双樹。日本には自生しない植物なので、代用品としてナツツバキがその座に収まった。 本物のサラノキとナツツバキとヒメシャラ、この全てがシャラノキと呼ばれるので微妙に名前がややこしい。 近辺で植物を探すのが億劫という理由で、安曇野市まで行く原因となった植物の一つ。

ボダイジュ

ボダイジュ アオイ目アオイ科シナノキ属

長野自動車道沿い了智上人墓にて撮影

落葉高木。樹高は12~20m。胸高直径は40~60cmとなる。互生単葉、葉身はゆがんだ三角状広卵形。 葉の表面は濃緑色で基部に少し毛、裏面には星状毛を密生する。中国原産。

シナノキ

シナノキ アオイ目アオイ科シナノキ属

大学構内にて撮影

落葉高木。樹高は20~30m。胸高直径は50~60cmとなる。

仏陀がその根元で悟りを開いたとされる木、菩提樹。 私が調べたこちらの物も沙羅双樹と同様に日本で代用品として使われている樹木たちである。 本来の菩提樹は日本ではインドボダイジュという名前になっており、中国原産のシナノキの仲間がボダイジュの名を賜っている。 そしてシナノキ自体もその日本式菩提樹と同一視されることがあるので厄介極まりない。

ガクアジサイ

アジサイ ミズキ目アジサイ科アジサイ属

信州大学近辺、民家の庭にて撮影

このガクアジサイに関しては全くもって自信が持てない情報しかない。暫定的にガクアジサイとして話を進める。

多数の両性花を中心として、装飾花が周りを縁どる。花序は直径12~18cm、装飾花は直径3~6cm

図鑑にアジサイの情報が載っておらず、自分で調べるにも行き詰ってしまった。 仏教において甘茶という植物がありそれがヤマアジサイの亜種であると聞いたのだが、 肝心のヤマアジサイを見つけることができなかった。 仕方なしにガクアジサイを調べるも、同定の手段が乏しいことに気付く。 これをレポートに載せることは心苦しいが、他にもアテがないので載せるしかなかった。

ハス

ハス ヤマガモシ属スイレン科ハス属

松本城堀にて撮影

仏教の伝来と共にやってきた植物。根である蓮根以外にも実、芽、花、茎が食用にされる。

図鑑の内容が他の植物に比べて特殊なので、上記の説明文は簡素になってしまった。 しかし、仏教関連の要素はまだ語られる程度にはある。泥の中より茎を伸ばし可憐な花を咲かすその様が人々の琴線に触れたのだろう、 仏教においてハスは智慧や慈悲の象徴とされ、さまざまに意匠される。 仏像の下の部分の花は正しくハスの花であり、その形に似ているが故にホトケノザという名前をとある植物が与えられ、 またそれっぽい見た目からホトケノザと呼ばれる植物とややこしいことになっているのである。


全体的に量が少なく、質も低いレポートとなってしまったことを心から悔やんでいる。 とりわけホトケノザなどのメジャーな植物を纏められなかったことが悔しい。 作業量の圧迫が酷かったであろうことはスマホなどでページを見てもらえれば理解して頂けるかもしれないがそれは関係ないことか。 取りあえず、自分で決めたテーマに沿った植物を探すという行動は苦しく楽しく、 そして確かに意味があったと実感出来ている。無駄ではなかったと胸を張って主張することができる。 最後に、快くナツツバキとヒメシャラの写真を撮らせてくださったHAMAフラワーパーク安曇野様への感謝を示しつつ、このレポートの終わりとする。 ありがとうございました。