上 高地植物
理学部物質循環学科 14s6025f 王


T.はじめに
 6月21、22日に理学部物質循環学科の野外調査として上高地に行ってきました。大正池をスタートし、田代湿原を経て梓沿岸を歩き、河童橋を渡って信州 大学山岳科学総合研究所にたどり着きました。標高1500mのところに生息する植物をたくさん観察することができたので、ここで紹介していきます。


U.事前調査
@ケショウヤナギ
 若木の木肌が白く、枝は晩秋から早春にかけて紅色で美しく、化粧をしたようだということからケショウヤナギと呼ばれる。ヤナギ科としては珍しく風媒花で ある。種子には綿毛がついており、風に乗ってよく飛散する。葉は互生である。
Aオノエヤナギ
 葉身は長さ10-15cmで線形である。先端は細くとがり、基部は狭いくさび形で、縁には波状の浅い鋸歯がある。表面には光沢があり、裏面は淡緑色で無 毛のものと、有毛のものがある。上の個体は裏面に短毛が散生しており、脈には多い。葉脈は裏面に隆起し、新葉の縁は裏面に巻く。
Bカラマツ
 日本で唯一の針葉樹林であり、上高地全体では天然自然林が多い。陽光樹である。
Cカンボク
 スイカズラ科ガマズミ属の落葉小高木。樹高5-7mくらいで葉は枝に対生し、形は広卵形であるのが特徴的。花期は5-7月で白色の小さな両性花の周りに 大きな5枚の装飾花が縁取る。秋に赤い実をつける。
Dシウリザクラ
 樹高15-20m、直径40-60cm。開花時期は6月で、花は白く穂状に先端へと順番に咲く。葉がハート型ではなく樹高が高いのがウワミズザクラと違 う。寒いところで生える。
Eオシダ
 オシダは夏緑性のやや大型のシダ植物。ブナ林域の谷筋の崩積土の集積するうなどに生育する。ブナ林では林床にササが生育することが多いが、ササの生育が 困難な、礫を多く含む場所に生育することが多い。地下茎は持たず、根茎から放射状に長さ60-120cmのはを放射状に出す。
Fレンゲツツジ
 4-6月に葉が出たのち、葉が開くのと前後して直径5cmほどのロート状の花をつける。つぼみの様子が蓮華に見えることから名づけられた。庭木としても よく利用され、花は朱色。また、全木が有毒であり摂取すると痙攣を引き起こす。
Gベニバナイチヤクソウ
 葉に長さ3-5cmの葉柄があり、葉身は円形または卵状楕円形で、長さ3-4.5cm、幅2-3.5cmになる。葉の先端は丸く、基部は丸いか、やや心 形になり、縁には目立たない細かな鋸歯がある。花期は6-8月上旬。葉の間から長さ15-25cmになる花径を伸ばし、8-15個の花がつく。花径は赤み を帯びている。
Hニッコウキスゲ
 花期は5月上旬から8月上旬で草原・湿原を代表する花で、群生すると山吹色の絨毯のようで美しい。高さは50-80cmで、花径の先端に数個のつぼみを つける。花はラッパ状で、大きさは10cmぐらいで、花びらは6枚。朝方に開花すると夕方にはしぼんでしまう一日花。


V.現地調査
1.2.
 ケショウヤナギ、オノエヤナギ:梓沿岸部で観察された。ケショウヤナギの数量が明らかに多く、樹高は沿岸部が1m前後で、その後ろは20-25mにもな る。後ろに聳えた木は沿岸部の木の生長型である。また、花期は松本盆地で4月下旬、上高地ではそれより1か月遅れているといわれている。しかし、花は観察 されなかった。左側がケショウヤナギで、右側がオノエヤナギである。
                              

3.カラマツ:マツ科の針葉樹にもかかわらず、落葉する。標高 1500mあたりのところに生えていた。本来はカラマツとコメツガの比較をしたかったが、コメツガを判別することができなかった。また、環境省によると、 カラマツは乾燥したやせ地や多湿な湿原周辺にも生育し、河川の氾濫など環境の変化にもよく耐えるが、極端に湿ってくると枯れる。
4.カンボク:葉は枝に対して対生し、形は広い卵形で3分裂していた。 カンボクの樹高は5-7mと言われているが、上高地で観察できたものは2-3mほどであった。また、花期は5-7月なので、今回は花をしっかり観察するこ とができた。アジサイと少し似ている。

                                     

5.シウリザクラ:ウワミズザクラととてもよく似ていて、ほとんど判別 できないが、上高地に行ったのが6月下旬であったことを踏まえて、シウリザクラであると判定した。樹高はだいたい10m前後だった。

                                   

6.オシダ:根茎いた。から放射状に長さ100cmほどの葉を放射状に 出していた。比較的に広い範囲で生えていた。
7.レンゲツツジ:ロート状の花を観察できた。上高地に行ったのが6月 下旬ということもあり、多少散っていたレンゲツツジもあった。樹高は1-2mくらいだった。

                          

8.ベニバナイチヤクソウ:花期は6-8月上旬なので、花はしっかり観 察できた。全体的に20cm程度の高さで、花径は事前調査の通り赤みを帯びていた。花は桃色で、下向きに咲いていた。梓川沿岸で観察できた。
ニッコウキスゲ:花期は5-8月上旬なので、花は観察できた。草原や湿 原で群生するといわれているが、観察されたニッコウキスゲは群生していなかった。

                                 

W.注意事項
 1-5は木本植物で、6-9は草本植物である。Uの事前調査とVの現地調査の番号は対応している。また、使用された写真は6月21日に撮影したものであ る。

X.最後に
 雨天だったが、事前調査で調べた植物を観察できてよかった。この時期にサクラは見られないと思っていたが、山之上では気温が低くシウリザクラを見られた ことに驚いた。また、調べていくうちに7月に咲くサクラもあることが分かった。しかし、ノリウツギを観察できなかったのは残念だった。草本は事前の調べで 当日少しわかったが、木本はヤナギとカバしかわからなかった。これからは木本の見分け方を身に着けたい。上高地研修を経て、今まで全く興味のなかった植物 に関心を示すようになったのは自分の中で一番の進歩だと思う。