農学部農学生命科学科植物資源科学コース
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萩原 巧海

実家や大学への道中で見つけた、食用になる植物または毒を持つ植物を紹介する。


撮影:平成27年6月29日 長野県松本市
イヌリンゴ Malus prunifolia
バラ科 離弁花植物
 中国が原産国の落葉高木。中国北部で広く栽培され、耐寒性が強い。花と赤く熟す果実を観賞する園芸種である。別名ヒメリンゴ。若枝には軟毛があるが、 成長すると無毛になる。葉は互生、単葉、鋸 歯。花は枝の先につき、つぼみは淡紅色だが開くと白色になる。果実は食べられるが酸味が強い。

撮影:平成27年6月29日 長野県松本市
ユスラウメ Prunus tomentosa
バラ科 離弁花植物
 中国が原産の落葉低木。耐寒性、耐暑性ともに強く、病害虫にも強い。葉は互生、単葉、重鋸歯で、全体に細かい毛を生じる。花は白色または淡紅色のものが 葉腋に1つずつつく。果実は球形だがかすかな縦割れがあり、熟すと赤くなる。食味は甘酸っぱくサクランボのようで、そのまま生食とされるほか、果実酒とし ても利用される。

撮影:平成27年7月12日 岐阜県中津川市加子母
クマイチゴ Rubus crataegifolius
バラ科 離弁花植物
 山地に生える落葉低木。葉は互生、単葉、重鋸歯。葉柄や茎にとげをもつ。根は地下を横に這い、地上のあちこちに茎を伸ばす。キイチゴ属の中では大型であ る。 密な群落を形成することがあり、除草作業の際には厄介な存在となる。花は白色で、短い枝先に集まってつく。果実は赤く熟す。食用になるが、酸味が強いもの は生食よりもジャムに適している。

撮影:平成27年7月9日 長野県松本市
ナワシロイチゴ Rubus parvifolius
バラ科 離弁花植物
 丘陵などの日当たりの良い場所に生える落葉低木。葉は互生、3出複葉または5出複葉、重鋸歯。茎や葉柄にとげをもつ。木本だが立ち上がらず、他の 草の上に覆いかぶさるように育つ。花は短く立ち上がる枝の先につく。色は紫だが、花弁が小さいので目立たない。果実は赤く熟す。食用になるが酸味が強く、 生食よりもジャムに適している。和名の漢字表記は「苗代苺」であり、苗代が見られるころに果実が熟すことからこの名がある。

撮影:平成27年7月12日 岐阜県中津川市加子母
ナガバモミジイチゴ Rubus palmatus
バラ科 離弁花植物
 山地に生える落葉低木。葉は互生、単葉、重鋸歯。葉がモミジのように裂けることからこの名がある。茎や葉柄にとげをもつ。根は地下を這い、地上のあちこ ちから茎を伸ばす。花は白く、葉の陰について下を向く。果実は黄色く熟す。酸味が弱く甘味があるため食味は良好であり、生食に向いている。東日本にはこの 種の変種であるモミジイチゴが分布する。

撮影:平成27年7月2日 長野県松本市
ミョウガ Zingiber mioga
ショウガ科
 東アジアが原産の多年生草本。葉は互生、単葉、全縁。茎に見えるものは葉鞘が積み重なった偽茎であり、本物の茎は地下にある。花には鞘状のがく、筒状の 先が3裂した花弁・おしべ・めしべが見られる。食用となるのは花穂および若芽の茎である。独特の香りがあり、薬味として利用される。戦いで命が残るという 意味の「冥加」にかけて、戦国武将がミョウガの紋を利用することがあった。

撮影:平成27年7月14日 長野県松本市
ユキノシタ Saxifraga stolonifera
ユキノシタ科 離弁花植物
 本州、四国、九州、中国に分布し、湿った日陰に生える常緑の多年草。雪が上に積もっても、その下に葉があることからこの名がつけられた。葉は互生、単 葉、鋸歯。花は長い花茎に多数つき、花弁は上の3枚が小さく、下の2枚が細長い。虎耳草という民間薬として、皮膚の炎症に対し用いられた。食用にもなり、 葉を天ぷらなどにする。また、葉の裏側の表皮細胞は赤い色素を含んでいて原形質流動が観察しやすいため、浸透圧の実験によく用いられる。

撮影:平成27年5月2日 岐阜県中津川市加子母
タラノキ Aralia elata
ウコギ科 離弁花植物
 山地に生える落葉低木。葉は互生、奇数二回羽状複葉、鋸歯。枝先に複数つく花序に白く小さな花を多くつける。果実は黒い。春の新芽は「たらのめ」と呼ば れる山菜である。独特の香りがあり、天ぷらなどにして食べる。脂質とタンパク質を多く含むため、山のバターとも呼ばれる。また、幹皮や根皮は健胃、整腸、 強壮作用をもつ民間薬として用いられる。ウコギ科の植物はタラノキに限らず、エゾウコギやコシアブラなど山菜や民間薬として有用なものが多い。

撮影:平成27年5月2日 岐阜県中津川市加子母
オニグルミ Juglans mandshurica var.sachalinensis
クルミ科 離弁花植物
 山野の川の沿岸に多く生える落葉高木。若枝に黄褐色の毛がある。葉は互生、奇数羽状複葉、全縁。雌雄同株であり、雌花は茎頂に直立した雌花序に数個つ け、2本の花柱は紅色。緑色の雄花は前年の葉腋から出た尾状花序につく。種子は食用になるが、殻が堅く綺麗に取り出すのは容易ではない。未熟な果皮や葉の 汁液はアレルギー性物質を含み、皮膚につくとかぶれを起こす。果実を素手で拾わないように注意する。

撮影:平成27年7月13日 長野県松本市
ナンテン Nandina domestica
メギ科 離弁花植物
 山地に生える常緑低木。葉は互生、3出羽状複葉、全縁。茎の先端に小さな白色の花を多数つけた円錐花序を出す。液果は赤く熟す。全株にドメスチン、葉に ナンジニンを含む。多量に摂取すると痙攣、知覚麻痺、呼吸麻痺を起こす。民間薬として実を咳止め、喘息に使用するが分量には注意が必要である。古来、赤飯 の上にナンテンの葉をのせるが、これは葉に含まれるナンジニンが熱と水分で分解して生じたチアン水素に防腐作用があることを利用したものである。

撮影:平成27年7月15日 長野県松本市
ヌルデ Rhus javanica var. roxburghii
ウルシ科 離弁花植物
 山野に生える小高木。葉は互生、奇数羽状複葉、鋸歯で、葉軸に翼がある。雌雄異株。茎の頂に黄白色の花をつけた円錐花序を出す。果実は短毛で覆われ黄赤 色に熟す。植物体を傷つけると白色乳液が出る。全株にウルシオールを含む。乳液が皮膚につくとかぶれを起こす。患部に触れた手で体のほかの部位に触れると 同様にかぶれるので注意する。木を燃やした時の煙でもかぶれる。葉にできる虫こぶからタンニンを多く含む五倍子が作られ、皮なめし(毛皮の劣化を防ぐ工 程)などに利用される。また、秋の紅葉が美しい。

撮影:平成27年5月2日 岐阜県中津川市加子母
ヤマウルシ Rhus trichocarpa
ウルシ科 離弁花植物
 山野に生える落葉高木。葉は互生、奇数羽状複葉、鋸歯で、葉軸は赤褐色を帯び、軟毛が密生している。雌雄異株。円錐花序に黄緑色の小さな花を多数つけ る。果実は刺毛に覆われ黄褐色に熟す。植物体を傷つけると出る乳液にはウルシオールが含まれているので、皮膚につくとかぶれを起こす。ヤマウルシの芽は前 述のタラノキの芽に似ていて、出芽する時期も重なっているので誤って採らないように注意する。見分け方は、タラノキの茎には棘があり、ヤマウルシにはない ことである。若葉だけで区別することは避けたい。

撮影:平成27年7月2日 長野県松本市
ドクダミ Houtttuynia cordata
ドクダミ科 離弁花植物
 山野の日陰に生える悪臭のある多年生草本。葉は互生、単葉、全縁。4枚の大きな白い片は花弁ではなく、ほう片であり、穂状花序についている多数の淡黄色 のものが花である。花期に刈り取り、日陰干ししたものを十薬といい、高血圧の予防などに使う。全草に光過敏性物質のフェオホルバイドが含まれているので、 多量に摂取したのちに日光に当たると皮膚炎を起こすことがある。

撮影:平成27年5月2日 岐阜県中津川市加子母
ムラサキケマン Corydalis incisa
ケシ科 合弁花植物
 山麓、低地の林縁に生える2年生草本。葉は互生、根生し、1~2回3出複葉をつける。裂片はくさび型で切れ込みがある。花茎の上に総状花序を出し、紅紫 色~白色の花をつける。全草にプロトピンなどのアルカロイドを含む。誤食すると酒に酔った感じになり、眠気、吐き気、脈の低下、呼吸麻痺、心臓麻痺などが 起こる。また、アゲハチョウ科のウスバシロチョウの食草でもある。
 野生の植物を食べるとき、誤って毒をもつ植物を口にしてしまうリスク はつきものである。食べられる植物を正しく同定できれば、食の幅は一層広がり、面白いものになるだろう。
 最後までご覧いただきありがとうございました。
出典:原色日本植物図鑑(保育社 1974年)
    日本の野生植物(平凡社 1989年)
    学研の大図鑑 危険・有毒生物(学習研究社 2003年)








































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