理学部理学科物質循環学コース
16S6003B 市川桂菜
「松本キャンパスの植物の紹介」
植物生態学ゼミにおいて松本キャンパス内で観察した植物のうち、いくつかとりあげて紹介します。

○草本類


アヤメ(Iris sanguinea)
キジカクシ目アヤメ科アヤメ属
・日本産
・花期:5〜7月
・多年草
 花茎は高さ30〜60p。花は紫色で、外花被片に黄色の網上の模様(アヤメ模様)がある。虫媒花で、やや乾いた草地に生える。
※アヤメに似た植物に、カキツバタやノハナショウブが挙げられる。いずれも紫色の花をつけるが、アヤメ模様はない。それぞれ水辺、湿地に群生する。ノハナ ショウブの葉には太い中脈があるが、カキツバタには無いため、葉はだらりとしている。黄色の花をつけるキショウブは、ヨーロッパ原産である。また、ショウ ブはオモダカ目ショウブ科ショウブ属で、アヤメ属のカキツバタなどとは、全く別の植物である。

トゲチシャ(Lactuca serriola)
キク目キク科アキノノゲシ属
・ヨーロッパ原産
・花期:7〜9月
・1〜2年草
 高さ1〜2mにもなる。葉は単葉で互生し、切れ込みがあるものと無いものがある。葉の裏面の主脈にはとげが1列に並ぶ。1949年に北海道ではじめて確 認された。関東ではあまり見ない。

ウマノチャヒキ(Bromus tectorum)
イネ目イネ科スズメノチャヒキ属
・ヨーロッパ原産
・花期:6〜7月
・1〜2年草
 高さ20〜50p。葉は互生単葉で、表面に細かくやわらかい毛が生えており、触るとビロード状である。風媒花のため、花粉を飛ばしやすいよう、花は上方 についている。小穂は長さ1.2〜2pで、5〜8個の小花がある。小穂は重ならないように枝分かれしている。芒を持ち、長さ1.2〜1.5o。

ナギナタガヤ(Vulpia myuros)
イネ目イネ科ナギナタガヤ属
・地中海沿岸原産
・花期:5〜6月
・1〜2年草
 高さ30〜50p。花が一方向に並んでついているのが特徴。この種に独特な特徴であり、属は独立している。葉は細く、ふちは内側に巻く。明治初期に入 り、各地に帰化している。

オッタチカタバミ(Oxalis dillenii)
カタバミ目カタバミ科カタバミ属
・北アメリカ原産
・花期:5〜7月
・多年草
 日本産のカタバミは茎が地表を這うのに対し、これは地下茎が縦に立ち上がるため、この和名がある。葉や花はカタバミと同様、黄色の五弁花をつける。葉は 三出複葉であり、形はシロツメクサのものと似ているが、シロツメクサはマメ科であり、別物である。

カラスノエンドウ(Vicia sativa ssp. nigra)
マメ目マメ科ソラマメ属
・日本産
・花期:3〜6月
・つる性越年草
 葉は羽状複葉であり、互生、先端がつるとなる。花はチョウ型であり、紅紫色。このようなマメ科植物によく見られる特徴を持つ。
※カラスノエンドウ、カスマグサ、スズメノエンドウはそれぞれ似ているが、花やマメの大きさで見分けられる。スズメノエンドウはカラスノエンドウより小型 である。カスマグサはカラスノエンドウとスズメノエンドウの中間的な形なので、カラスとスズメの間という意味でカスマと名付けられた。

ゼニアオイ(Malva mauritiana)
アオイ目アオイ科ゼニアオイ属
・ヨーロッパ原産
・花期:6〜8月
・多年草
 高さ60〜90p。葉は掌状に浅く5〜7つ切れ込む。花は淡紫色で濃紫色の筋があり、直径約2.5p。花の形を銭に見立てたものという。江戸時代に渡来 し、観賞用によく植えられているほか、野生化もしている。

ビロードモウズイカ(Verbascum thapsus)
シソ目ゴマノハグサ科モウズイカ属
・地中海沿岸原産
・花期:8〜9月
・2年草
 高さ1〜2m。河原や荒れ地などに生える。葉や茎がビロードのような灰白色の毛で覆われている。茎の先に長さ20〜50pの総状花序をだし、黄色の花を 密につける。

マルバハッカ(Mentha suaveolens)
シソ目シソ科ハッカ属
・ヨーロッパ原産
・花期:8〜10月
・多年草
 葉は広楕円形でやや茎を抱き、対生する。葉の裏、茎には白い毛が生えている。葉を手でこすると、独特の刺激臭を発する。この性質によって、ユーカリ、メ ントール、ハッカなどと同様に、赤ん坊向けの虫除けとして使われることもある。このような使用のために栽培もされるが、野生化もしている。
※ハッカは日本産。

ヘラオオバコ(Plantago lanceolaca)
シソ目オオバコ科オオバコ属
・ヨーロッパ原産
・花期:6〜8月
・1年草
 葉は長さ10〜20pのへら形で平行脈。茎は四角柱状で、花茎の高さは20〜70p。花茎の先に小さな白い花を穂状につける。花序は1〜1.7pで、花 は下の方から咲いていく。江戸時代末期に渡来したといわれ、現在では各地の道端や荒れ地、牧草地に帰化している。特に北海道に多い。

オオイヌノフグリ(Veronica persica)
シソ目オオバコ科クワガタソウ属
・ユーラシア、アフリカ原産
・花期:3〜5月
・2年草
 明治の中頃に気づかれ、現在は全国的に広がっている。茎の上部の葉腋から長さ1〜2pの花柄をだし、ルリ色の花を1個つける。
※イヌノフグリは日本産であり、葉腋から長さ1pの花柄をだし、淡紅白色の小さな花を1個つける。タチイヌノフグリはユーラシア、アフリカ原産であり、葉 腋に青色の小さな花を1個つける。

ノヂシャ(Valerianella locusta)
マツムシソウ目スイカズラ科ノヂシャ属
・ヨーロッパ原産
・花期:5〜6月
・1〜2年草
 茎は対生に数回分かれ、高さ10〜30pになる。葉も対生で、やわらかい。枝先に小さな花をびっしりとつける。花弁は5枚。野の萵苣(レタス)でノヂ シャであり、食用として栽培もされる。
○木本類


キャラボク(Taxus cuspidata Sieb. et Zucc. var.nana Hort. ex Rehder)
イチイ科
・日本産
・常緑低木
 常緑高木のイチイの仲間だが、これはイチイの変種(=var.)であり、膝程度までしか高くならない。
 葉は線形でらせん状に互生する。葉の長さは1.5〜2.5p、表面は暗緑色で、光沢はない。カヤの仲間は葉が硬く、握ると痛いがこれは痛くない。
 秋になると赤い実をつける。実の赤いところはヒトも食べられるが、種には毒がある。鳥がこの実を食べることで、種子を運ぶ(鳥散布種子)。

レッドロビン(Photinia x fraseri Dres. ‘Red robin’)
バラ科
・常緑小高木
・樹高3〜6m
 葉は単葉で互生する。葉縁には細かく鋭い鋸歯がある。新芽は赤く、1年ほど経つと緑色になる。
 カナメモチなどの野生種の交配により作られた。新芽の赤い期間が野生種よりも長く、日本では生垣などに使われる。葉柄に鋸歯の先端の一部が残らないこと から、カナメモチと区別が可能である。

カツラ(Cercidiphyllum japonicum Sieb. et Zucc.)
カツラ科
・日本産
・落葉高木
・樹高25〜30m、胸高直径50〜80p
 葉は単葉で対生する。形は広卵円形または円形で、カマボコ状の鋸歯をもつ。表裏面共に無毛。
 陽樹であるため、幹に近いところから葉を開き、枝を伸ばして日光が当たれば開く、さらに枝を伸ばし日光があれば開く、を繰り返すため、枝の先の葉が小さ く、開いたばかりのものとなっている。
※対して、陰樹は安定して暗い環境に育つため、葉を一度につける、一斉展葉が見られる。
 このように葉のつき方において、環境に応じて無駄なエネルギーが消費されないような戦略がとられている。

ヤマモミジ(Acer amoenum Carr. var. matsumurae Ogata)
カエデ科
・日本産
・落葉小高木
・樹高5〜10m、胸高直径10〜30p
 葉は単葉で対生する。葉縁は7〜9深裂し、各裂片にはやや大きい不整の重鋸歯があり、先端は尾状の鋭尖頭となる。葉脚は心形で、基部から7〜9本の掌状 脈が出る。
 風散布種子を持つ。実一つに翼(よく)一つからなるものが二つ合わさった形をしており、これにより回転しながら落ちる。回転しながら落ちることで滞空時 間を延ばし、風に飛ばされやすくしている。
《参考文献》
・山と渓谷社「山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花 増補改訂新版」林弥栄監修
・信濃毎日新聞社「葉でわかる樹木」馬場多久男著
・Wikipedia





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