19-3 実在気体と仕事

解答

体積を変えた時の圧力について計算する。
ファン・デル・ワールス状態方程式に従う、とあるので 式(16.5) を P について解き

  \displaystyle P = \frac{R T}{\bar{V}-b}-\frac{a}{\bar{V}}  

から計算できる。これを図に示すと、下記の赤線になる。

図中には理想気体の式から計算した場合を青線で示した。

  \displaystyle P = \frac{R T}{\bar{V}}  

圧力が高い状態では、実在気体のふるまいは理想気体の状態方程式からずれる。
より実在気体のふるまいをよく再現するファン・デル・ワールス状態方程式は高圧(図の左側)で理想気体の式からずれている。一定の圧力(例えば 60 bar のあたり)をみると、赤線は青線よりも左側にずれており、理想気体の状態方程式から期待されるよりも体積が小さい、すなわち「密」であることがわかる。
なお、70 bar 付近にはファン・デル・ワールス状態方程式が示す相転移点(凝縮圧力)での独特のふるまいが現れている。(教科書 図16.7 参照)

さて、もしこの過程が可逆過程(P = Pex)として生じるなら、2.00 dm3 → 0.750 dm3 の圧縮の仕事は下図の赤い部分の面積を計算すればよい。

しかし、この問題では「一定のPexで」とあるので、不可逆過程である。
また、Pex > P でないと圧縮は起こらない。

よって、「一定」かつ「最小」の Pex での仕事は下図の赤い部分の面積となり、求める Pex は、系の体積が 0.750 dm3 のときの圧力となる。

(Pex の扱い方がよくわからない場合、問題19-7 も参照してください)

体積が 0.750 dm3 のときの圧力を求めるために、

  \displaystyle P = \frac{R T}{\bar{V}-b}-\frac{a}{\bar{V}^2}  

に数値を代入する。ただし、用いる単位系(bar, dm3)に合わせ、定数としては

a = 3.6551 dm6 bar mol−2

b = 0.042816 dm3 mol−1

R = 0.08314 dm3 bar K−1 mol−1

を用いる。

  \displaystyle P = \frac{(0.08314 {\rm\ dm^3\ bar\ K^{-1}\ mol^{-1}}) (300 {\rm K})}{(0.750 {\rm\ dm^3\ mol^{-1}})-(0.04282 {\rm\ dm^3\ mol^{-1}})}\ -\ \frac{(3.655 \rm\ dm^6\ bar\ mol^{-2})}{(0.750 \rm\ dm^3\ mol^{-1})^2}  
  = 35.27 \rm\ bar - 6.50 \ bar  

  = 28.8 \rm\ bar  

圧縮の際の圧力(Pex)は一定である。このときに得られる仕事は、赤い部分の面積を求めればよい。

  \displaystyle w = -\int P_{\rm ex} {\rm d}V = -P_{\rm ex} \cdot \Delta V  

  = -(28.8 \rm\ bar) (0.750 - 2.00)\ dm^3  

  = 36.0 \rm\ bar\ dm^3  

  = 36.0 \rm\ (10^5 \ Pa)(10^{-3} \ m^3)  

  = 3600 \rm\ J  

  = 3.60 \rm\ kJ  

(教科書ミスプリ k 抜け)

授業では実在気体はほとんど扱いませんでしたので、
この問題はややこしく感じられると思います。
あきらめずに次の問題に進んでください。