試験について2017(物化III)

2017年度 試験

結果を掲示しました。(8/8)

平均点

 0.54 (平均点56点)
問題 得点率
1 (仕事や熱の計算)  0.64
2(i) (S-T, G-Tグラフ)  0.54
2(ii) (G-Pグラフ)  0.50
3 (冷凍機の性能係数)  0.55
4 (化学ポテンシャル)  0.49
5 (不可逆過程)  0.50
6 (相境界の傾き)  0.42
7 (定数表からの物性値計算)  0.56

答案は南支援室で返却します。得点に一喜一憂しすぎることなく、内容を「きちんと理解」するのに役立ててください。必要のある人はよく理解を進めて、追試験に臨んでもらいたいと思います。

解説

問1 (20点) 等温膨張過程の計算方法は繰り返し説明しました。定容冷却と断熱膨張はそれぞれ w=0, q=0となるので、cV=(3/2)R がわかっていれば他の量を計算できます。US は状態関数なので、異なる過程を経ても ΔU や Δはそれぞれ同じ値になります。(ΔのA1, A2の和とBは同じ値になります。) 〇ひとつ1点、等温膨張が全部できている、ΔU のA1, A2の和とBが同じ値になっている、などで加点して、完答で20点です。

問2 (22点)
(i) Sグラフは相転移時に「ジャンプ」がありますが、GTグラフでは相転移点は「折れ曲がり」となります。S は 0 K では 0 からスタートします(熱力学第3法則)。傾き(Sグラフの傾きは  cp / TGTグラフの傾きは −S に対応)やジャンプ幅の大きさにも気を使ってほしいところです。
(ii)のGPグラフでは、グラフの傾きは V となります。メタンでは水の場合と異なり、V(g) >> V(l) > V(s) です。(まちがいの例→) GPグラフで、温度と同じように左から 固体-液体-気体 としている人が何人かいましたが、相図との対応を考えると低圧から順に 気体-液体-固体 です。

問3 (12点) カルノーサイクル(逆カルノーサイクル)について、よく理解できているかどうかを問う問題でした。系のエントロピーは(1周すると) ΔS =0。低温部から熱を吸収する際の周囲のエントロピー変化(減少)は ΔS(周囲, 低温) = −qc/Tc。高温部に熱を放出する際の周囲のエントロピー変化(増加)は ΔS(周囲, 高温) = −qh/Th。エントロピー増大則から ΔS(系)+ΔS(周囲, 低温)+ΔS(周囲, 高温) ≥ 0 (最大効率になるのは = の時), エネルギー保存則から qq+ w = 0, として導きます。

問4 (12点) 化学ポテンシャルは授業で2度登場しています。
\displaystyle \mu = \left( \frac{\partial \bar{G}}{\partial n}\right)_{P, T} 2つ(以上)の相、あるいは化学種の間の平衡を扱うときに使用します。少し難しい問題でした。

問5 (12点) 通常、「エントロピー」といった場合は系のエントロピーのことを指しますが、この問題では 「その変化に関わったすべての物質のエントロピーの和」として答えてもらうことを想定しています(そうでないと「エントロピー増大則」と対応しない)。系と周囲に「温度差」があるときの熱移動、同じく系と周囲に「圧力差」があるときの圧縮、膨張過程はすべて不可逆過程となります。または「混合のエントロピー」等のように周囲のエントロピーが変化しない過程の計算をしてくれれば一番きれいな回答となったと思います。(まちがいの例1→) 等温(可逆)膨張では系のエントロピーは増加しますが、周囲のエントロピーが同じ量 減少するので、不可逆過程ではありません。(まちがいの例2→) 圧縮過程では外の圧力のほうが高くないと進みませんが、逆に低く設定して計算されている例がありました。

問6 (12点) 数値を求める際の単位換算については何度か取り扱ってきたので、その確認も兼ねて出題しました。クラウジウス式中の ΔH や ΔV は相転移に伴う変化です。気液境界の傾きなので、ΔV は {(気体の体積)-(液体の体積)}としなくてはなりません。V(g) >> V(l)なので、液体の体積は無視してもよいでしょう(液体の体積の影響は0.2%)。 気体の体積はこの問題では理想気体の式から求めることとなります。(まちがいの例1→) ΔV に液体の体積だけを入れている人が多くいました。 (まちがいの例2→) V(g) を 22.4 L mol−1 として計算してしまうと、これは 0°C, 1 atm の時のモル体積なので、沸点(78.4°C)での体積からは、22%ずれてしまいます。(まちがいの例3→) ΔH と Δの比をとるので、両者とも g あたり、または mol あたりのいずれかにそろえる必要があります。

問7 (15点) KPとΔの算出は豆テストで出題していましたが、GH のどれを使うかで混乱している人がいました。確認が必要です。(i) KP は ΔG から計算します。KPとしては \displaystyle K_P = \frac{P({\rm NO})^2 P({\rm O_2})}{P({\rm NO_2})^2} を使うでしょうから、Δの計算には 係数をかける必要があります。(ii) (定圧過程の)熱はΔH から計算します。生成物(右)から反応物(左)を引きます。(iii) エントロピーは「ひっかけ問題」のようになってしまいましたが、テーブル中の S° だけは定義が異なる ということを何度か述べました。 酸素の  は(示していませんが) 205.2 J K−1 mol−1 で、この問題は「系のエントロピーはガスが 1 mol 増えているから増加」が正解です。
ΔrH > 0 なのでこの反応は吸熱であることがわかります(酸化(燃焼)反応の逆反応ということからも吸熱であることが想像できる)。吸熱反応の場合、周囲のエントロピーは減少し、系のエントロピーは通常増加します。

  • 試験範囲 マッカーリ・サイモン Chap. 19, 20, 21, 22, 23, 26(授業で扱わなかったところを除く)
  • 2017年8月2日(水) 13:00~
    試験日を変更しました。3日に受験できない人は、至急飯山に連絡してください。
    2017年8月3日(木) 13:00~ 12番講義室
    教科書、ノート、通信機器の使用禁止
    関数電卓貸与
    試験の一部は豆テスト演習問題の類題を出します。
    (演習問題はこのページの右側のメニューから選択、現在18問)
  • 合格点 60点
  • 出席率8割以上、豆テストの成績優秀者は出席点を加点
  • 再履修者は昨年分の得点の20%を加点
  • 試験前の質問は随時

2017年度 追試験

結果を掲示しました。(9/27)

2017年9月26日(火) 13:00~ 12番講義室

出席状況が良好で、本試験で45点以上の人を対象に追試験を行う予定です。

  • 単位認定者も受験できます。(高得点の場合は成績評価を上げます。 本試験と追試験の点数の高いほうを採用します。ただし、難易度が異なる場合は追試験の得点に適当な倍率をかけて調整します。)
  • 試験範囲 本試験に同じ
  • 教科書、ノート、通信機器の使用禁止
    関数電卓貸与
  • 試験前の質問は随時