0 Kに近づくと あらゆる物質のエントロピーは 本質的に 同じ値 ( 0 ) になる、
というのが熱力学第 3 法則の述べているところです。
エントロピー増大則 からすると、エントロピー変化が生じなくなる ということはその反応が自発的に進まなくなるということを意味します。
しかし、反応に伴うエントロピー変化には、反応熱が発生することによる周囲のエントロピー増加分があります。
系のエントロピー変化だけでなく、熱の出入りによる周囲のエントロピー変化分を加味しなくてはなりません。
このあたりは、ギブスエネルギー G を使って考えるとよいでしょう。
... (1)
(閉鎖系において、等温定圧条件では G が減少するのが自発過程)
(1) 式の右辺を T で割って −1 倍すると
... (2)
となります。最初の S が系のエントロピー変化を、次の −H/T が反応熱の発生による周囲のエントロピー変化を表しています。 1) G は(2)式を T 倍して−1 倍 している。−1 倍しているので、[Sの増加が自発過程]が[Gの減少が自発過程]とひっくり返っている。
(1) 式に戻って説明すると
0 K に近づくと、反応しても S は 変化しなくなるけど、 H は変化するので、反応は進行できるよ、
となるでしょうか。
なお、0 K に近づくと分子の運動エネルギーが小さくなり、反応の活性化エネルギー以上のエネルギーを持った分子が極端に少なくなるので、反応の速度は非常に遅くなるはずです。
ちなみに「トンネル反応」という現象があり(参照)、この場合は低温になるほど反応が顕著に生じます。この場合でも、反応はエントロピー増大則には従っている=ギブスエネルギーは減少しているはずです。
脚注
↑1 | G は(2)式を T 倍して−1 倍 している。−1 倍しているので、[Sの増加が自発過程]が[Gの減少が自発過程]とひっくり返っている。 |