27-35 水素分子の衝突頻度

解答

与えられているのは圧力なので、数密度 ρ を理想気体の式を用いて圧力で表す(ρ= nNA / V )。

\displaystyle \rho = \frac{P N_{\rm A}}{R T} 

代入して

\displaystyle z_{\rm A} = \left(\frac{P N_{\rm A}}{R T}\right) \sigma \left(\frac{8 k_{\rm B}T}{\pi m} \right)^{1/2} ... (1)

あとは数値を代入していけばよい。
圧力が非SI単位である Torr と bar で与えられているので、途中 SI単位の Pa (パスカル)に換算する。

なお、Torr (トル) は水銀圧力計 1 mm 分の圧力で、歴史的な経緯から真空系の圧力を示すのに使われる。

1 Torr = 133.322 Pa
1 bar = 105 Pa

まず P 以外の項を計算してしまおう。

\displaystyle z_{\rm A} = P \left(\frac{N_{\rm A}}{R T}\right) \sigma \left(\frac{8 R T}{\pi M} \right)^{1/2} = P \rm(2.42 \times 10^{20}~J^{-1})(0.230 \times 10^{-18}~m^2)(1776~m~s^{-1})
 = P \times (9.89 \times 10^4 \rm~Pa^{-1}~s^{-1}) ...(2)

途中、(1)式の3つめの項に相当する部分(1776 m s−1)は、水素の平均速さ。 1)正しくは、相対速度にするために \sqrt{2} 倍した方が良いと思われる。(27.50)式参照。 

1つめの項(2.42 ×1020 J−1)に相当する部分は J−1 という謎の単位になっているが、これに圧力 Pa をかけると、m−3 と、数密度の単位 ( 1 m3 あたりの個数)になる。

(2)式の P に圧力を代入すると

1 Torrの場合

\displaystyle z_{\rm A} = P \times (9.89 \times 10^4 \rm~Pa^{-1}~s^{-1}) = (133.32~Pa) \times (9.89 \times 10^4 \rm~Pa^{-1}~s^{-1})
\displaystyle \rm = 1.32 \times 10^7~s^{-1}

1 bar の場合

\displaystyle z_{\rm A} = P \times (9.89 \times 10^4 \rm~Pa^{-1}~s^{-1}) = (10^5~Pa) \times (9.89 \times 10^4 \rm~Pa^{-1}~s^{-1})
\displaystyle \rm = 9.89 \times 10^9~s^{-1}

と衝突頻度が求まる。

圧力が高いほど数密度が大きくなるので、衝突頻度が大きくなることがわかる。

脚注

1 正しくは、相対速度にするために \sqrt{2} 倍した方が良いと思われる。(27.50)式参照。