T(t)X(x) で割っているけど、X(0) = 0 だから、0 で割ってはいけないのでは?

式(2.4)から(2.5)に行くときに、両辺を T(tX(x) で割っているけど、X(0) = 0 だから、全ての x, t で式が成り立っていないのではないか?
\displaystyle T(t)\frac{{\rm d}^2 X(x)}{{\rm d}x^2} = \frac{1}{v^2}X(x)\frac{{\rm d}^2T(t)}{{\rm d}t^2} ... (2.4)

から

\displaystyle \frac{1}{X(x)}\frac{{\rm d}^2 X(x)}{{\rm d}x^2} = \frac{1}{v^2 T(t)}\frac{{\rm d}^2T(t)}{{\rm d}t^2} ... (2.5)

の変形のところで、両辺を T(tX(x) で割っています。

X(x) は x = 0 のところで 0, すなわち X(0) = 0 ですから、0 で割っていることになります。そうすると、(2.5)式は x = 0 のところでは ∞ となり、破綻している(式が成り立たない)のではないか、という指摘ですね。

(2.5)式の左辺

\displaystyle \frac{1}{X(x)}\frac{{\rm d}^2 X(x)}{{\rm d}x^2}  ... (2.5-l)

についてみると、たしかに x = 0 のところで  X(0) = 0 となり、分母が 0 になっています。しかし、後で示すように \displaystyle \frac{{\rm d}^2 X(x)}{{\rm d}x^2} も x = 0 のとき 0 なので、0/0 (0分の0) になっています。

0/0 というのも扱いがよくわからないので、数式で見てみましょう。

(まだやっていませんが) X(x) の解は、のちのち

\displaystyle X(x) = B \sin \frac{n \pi x}{l}

と求まります。

これの 2階微分を求めると

\displaystyle \frac{{\rm d}X(x)}{{\rm d}x} = \frac{n \pi}{l}B \cos \frac{n \pi x}{l}\\ \\ \frac{{\rm d}^2X(x)}{{\rm d}x^2} = -\left(\frac{n \pi}{l}\right)^2 B \sin \frac{n \pi x}{l}

となります。

x = 0 のときは、 X(x) も \displaystyle \frac{{\rm d}^2 X(x)}{{\rm d}x^2} も 0 ですね。

x = 0  を代入する前に、数式のまま (2.5-l)に代入してみます。

 \displaystyle \frac{1}{X(x)}\frac{{\rm d}^2 X(x)}{{\rm d}x^2}\\ \\ = -\frac{1}{B \sin \frac{n \pi x}{l}} \left(\frac{n \pi}{l}\right)^2 B \sin \frac{n \pi x}{l}\\ \\ = -\left(\frac{n \pi}{l}\right)^2

以上のように、うまい具合に 0 になる数式( sin部分 )同士が約分され、式全体は ∞ や 0 ではなく、ある定数 \displaystyle -\left(\frac{n \pi}{l}\right)^2 となりました。

以上のように、「0 で割る」ように見えても、そのとたんに数式が破綻するわけではないのです。具体的には

\displaystyle \frac{f(x)}{g(x)}

で関数 f(x) も g(x) も x → +0 のとき 1) x → +0 は、「x がプラス側から 0 に近づくときに」、という意味です。 に 0 に収束する際、f の方が g より収束が早ければ、∞ にはなりません。例えば、x2/x や 4x/x は、見方によっては 0 で割っている(0/0になっている) のですが、→ 0 でも ∞ には なりません。


脚注   [ + ]

1.  x → +0 は、「x がプラス側から 0 に近づくときに」、という意味です。