もう少し考えてみる
この問題で与えられた波動関数を 𝜙(x) と書くこととして、教科書本文の ψn(x) と比較してみよう。
…(1) …(5)ψn(x) ではエネルギーは
…(6)である。ψn(x)のエネルギー E1 を単位として考えると、得られるエネルギーは n = 1, 2, 3, 4, 5 … のとき、それぞれ E1, 4E1, 9E1, 16E1, 25E1 … ととびとびの値になる。ψn(x) ではそれぞれの ψ1(x), ψ2(x), ψ3(x) … について計算して求められる は 0 であり、エネルギーは各基準振動ごとにぶれずに決まった値が得られる。
この問題の 𝜙(x) について得られたエネルギーの平均値は ≅ 1.22 E1であり、 E1 より少し大きい。
また 𝜙(x) のエネルギーの分散 から 標準偏差 を求めると ≅ 1.92 E1となり、ばらつきがかなり大きいことがわかる。
𝜙(x) からは、実際には E としてどんな測定値が得られるのだろうか。
𝜙(x) と n = 1 の時 の波動関数 ψ1(x) をプロットして、形状を比較しよう。
重ねてみると形状はずいぶん異なっているが、𝜙(x) は ψ1(x)から真ん中あたりで 上に、両サイドで下にずれているので、n = 3 の ψ3(x) を、適当な係数をかけて加えてやればうまく再現できるのではないだろうか。
合計値が赤の点線 で、𝜙(x) をかなり良く再現した。赤の点線は赤の実線と比べ、左から上、下、上、下、上、とわずかにずれているので、さらに n = 5 の ψ5(x) を、適当な係数をかけて加えてみると
𝜙(x) をほぼ完全に再現できる。
このように、𝜙(x) は、ψn(x) の重ね合わせで表現できる。
…(7)1 次元のシュレーディンガー方程式を解いて得られる ψn(x) が の固有関数であり、エネルギーの測定に関しては正しい(基準となる) 波動関数のセットだと考えられる。𝜙(x) のような、(境界条件を満たしている)他の波は、全て ψn(x) の重ね合わせとして表現される。
𝜙(x) についてエネルギーの測定を行うと、 ψ1(x) に対応したエネルギー E1、ψ3(x) に対応したエネルギー E3 (= 9 E1)、ψ5(x) に対応したエネルギー E5 (= 25 E1) … という「とびとびの値」のいずれかが得られる 1)n が奇数のものだけが現れるのは、偶関数、奇関数に関係しています。(x を−a/2 平行移動したときに 𝜙(x) は偶関数で、偶関数(xを−a/2平行移動した ψ奇(x) )の和で表される。) 。
振幅の2乗から、E1 が測定される確率は 97.7%、E3 が測定される確率は 2.2%、E5 が測定される確率は 0.1% …となる 2)ψn(x) の振幅を An として、En が測定される確率 pn は 。
その結果、𝜙(x) について E の平均値は 1.22 E1, E の標準偏差は 1.92 E1 となる。
ここでは詳しく述べませんが、𝜙(x) を再現する各基準振動の振幅(係数)は、フーリエ級数の考え方を適用することで求めることができます。
脚注