解答
波動関数に対して得られる測定値には、「位置」と「運動量」のように、同時に正確には測定できない組み合わせがあります。(不確定性原理 )
一方で、「運動エネルギー」と「運動量」のように、同時に測定できる組み合わせもあります。
2つの測定値が同時に測定可能かどうかは、対応する演算子の演算順序を逆にしても結果が同じになるかどうか、すなわち、演算子が可換であるかどうか でわかります。
電子の位置と全角運動量を同時に任意の精度で測定できるか。
3次元の位置に対応した演算子 と
ベクトルで表される全角運動量に対応した演算子 について、可換であるかどうかを調べればよい。(教科書 p.142)
演算子 は を方向の単位ベクトルとして
である。
交換子 (教科書 4.38)を計算すると
このうち、について計算してみよう。教科書 p.129 表 4.1 より
である。 と はそれぞれ
であり、
なので、 と は可換である。
同様に、 と 、および と が可換であることも示せるので、
結局 となり、 と は可換であることがわかる。
従って、電子の位置と全角運動量は同時に任意の精度で測定できる。