16-6 真空と分子数

解答

理想気体の状態方程式を変形して物質量を求める。

  \displaystyle n = \frac{PV}{RT}  

各値を代入する。
ガス定数 Rの中から適切な単位を持ったものを選ぶ。

  \displaystyle n = \frac{(10^{-12} \rm\ Torr)(1.00 \rm\ cm^3)}{(8.314 \rm\ m^3\ Pa\ K^{-1}\ mol^{-1})(298 \rm\ K) }  

唯一 SI単位系ではない Torr (トル)について、
Torr のところに 133.322 Pa を代入して単位換算する。

  \displaystyle n = \frac{(10^{-12})(133.322 \rm\ Pa)(1.00 \times 10^{-6}\rm\ m^3)}{(8.314 \rm\ m^3\ Pa\ K^{-1}\ mol^{-1})(298 \rm\ K) }\\  \\  \displaystyle n = 5.381 \times 10^{-20} \rm\ mol  

分子の個数 N を求めるので、アボガドロ定数 NA をかけてモルを個数にする。

  \displaystyle N = n N_{\rm A} = (5.381 \times 10^{-20} \rm\ mol)(6.022 \times 10^{23} \rm\ mol^{-1})  
  \displaystyle N = 32400  

モル体積  \bar{V} の方は、1 cm3 あたりの物質量を途中求めているので、これの逆数になる。

  \displaystyle \rho_{\rm N} = 5.381 \times 10^{-20} \rm\ mol\ cm^{-3}  
  \displaystyle \bar{V} = \frac{1}{5.381 \times 10^{-20}} \rm\ cm^3\ mol^{-1} = (0.1851 \times 10^{20} \times 10^{-6}) \rm\ m^3\ mol^{-1}  
  \displaystyle \bar{V} = 1.85 \times 10^{13} \rm\ m^3\ mol^{-1}  

モル体積は最初の式から

  \displaystyle \bar{V} = \frac{V}{n} = \frac{RT}{P}  

として求めても良い。

1 cm3 あたり 3 万個というと、ずいぶんいっぱいいるように感じるかもしれませんが、 10−12 Torr (≈10−10 Pa)は人類が作り出すことのできる最高レベルに近い真空です。ターボ分子ポンプ やクライオポンプ などの特殊なポンプを組み合わせ、かつ真空容器の金属の表面や構造内部に吸着・吸蔵された気体分子を注意深く取り除かなくては到達できません。

宇宙空間は真空というイメージがあると思いますが、スペースシャトルが飛ぶような高度 200 km 程度の低軌道では 10−4 Pa 程度の圧力があり、高度 36000 km の静止軌道衛星でようやく 10−11 Pa 程度の極高真空になります。

(数値は清水 肇、榎本祐嗣、一村信吾「超高真空」(オーム社)より)