16-7 気体の分子量決定

解答

まず理想気体の状態方程式

  PV = nRT  

を変形し、PρM の関係式を得ます。

(n = m / M,    ρ = m / V)

  \displaystyle P M = \rho R T  

問題には 5 つの測定点が示されていますが、上の式からわかるように、測定点 1 つだけでも M を求めることが可能です。測定には誤差がつきものですから、5 つの測定点を使ってできるだけ正確な値を求めることを考えましょう。

(1) 単純に平均値を使う

まず思いつくのは、各測定点について M を計算し、その平均値を求める方法です。

  \displaystyle M = \frac{\rho R T}{P}  
P / bar 0.1000 0.5000 1.000 1.01325 2.000
ρ / g L−1 0.1771 0.8909 1.796 1.820 3.652
M / g mol−1 44.175 44.444 44.799 44.804 45.547

5 つの M の平均値を出すと 44.75 となります。

しかし、上の計算結果を見ると、M は一定ではなく、P が大きくなるにつれて M が大きくなっていることがわかります。M の変化は系統的に起こっている(ランダムな変化ではなく、P の増加とともに M が変化している [系統的変化]) ので、実験上の測定誤差によるばらつきではなく、なにか「理由」があるのでしょう。化学反応が起こって実際に M が大きくなっているとは考えられないので、数式の扱いに問題があると思われます。

(2) PM をプロットし、非理想性の補正まで考える

P に伴って M の計算値が変わってしまうのは、気体の非理想性のためだと考えられます。実在気体では「分子自身の占める体積と分子間力のために」理想気体から挙動がずれます。「圧力が高くなるほど、温度が低くなるほど」ずれが大きくなります。

P が 0 bar に近づくと、そのふるまいは理想気体に近くなります。P の増加に伴い 気体のふるまいが理想気体からずれてくるので、理想気体の状態方程式を使って導いた M の値が真の値からずれてしまっていたのです。
このように P の値によって M がずれていくことを逆に利用し、この非理想性の効果を補正します。先に表で示した PM についてプロットします。

これはよい直線関係を示しており、「分子量のずれ」と P が比例している 1)「分子量」と P が比例しているのではありません。「比例」というのは x が 2 倍になった時に y が 2 倍になるような関係、数式で書くと y = kx の関係のことを指します。グラフのように、切片があるときは「比例」ではありません。(「分子量のずれP が 比例」なら正しい) ことが示唆されます。(他に、 P2 に比例している可能性などがあった。)

エクセルの最小二乗法(「物理化学実験」のページ参照)を用いて算出した赤の近似直線は 0.7237 P + 44.086 であり、 P = 0 での分子量、すなわち赤線の切片 44.09 が分子量としてふさわしいと思われます。

このように、測定点の結果を基に、測定範囲の外側の値を求めることを、「結果を外挿(がいそう; extrapolation)する」といいます。

脚注   [ + ]

1. 「分子量」と P が比例しているのではありません。「比例」というのは x が 2 倍になった時に y が 2 倍になるような関係、数式で書くと y = kx の関係のことを指します。グラフのように、切片があるときは「比例」ではありません。(「分子量のずれP が 比例」なら正しい)