さまざまな物理量を表すために、7 つの基本単位を基に組み立てられた単位系、SI単位を使うことがIUPAC 1)IUPAC: International Union of Pure and Applied Chemistry 国際純正・応用化学連合 によって国際的に決められています。
SI基本単位
SI単位系は以下の 7 つの基本単位の組み合わせで表される単位系です。
特に、長さの単位として m (メートル)、質量の単位として kg (キログラム)、時間の単位として s (秒) を使っていることに注意してください。(それぞれの頭文字をとり MKS単位とも呼ばれます。)
基本物理量 | 名称 | 記号 |
長さ length | メートル | m |
質量 mass | キログラム | kg |
時間 time | 秒 | s |
電流 electric current | アンペア | A |
熱力学温度 thermodynamic temperature |
ケルビン | K |
物質量 amount of substance |
モル | mol |
光度 luminous intensity |
カンデラ | cd |
固有の名称を持つSI組立単位
全ての物理量は上の 7 つの単位の組み合わせで表されます。
面積なら 長さ m を使って m2、
速さなら 単位時間あたりに進む距離ですから、長さ m と 時間 s を使って m s−1 、
といった具合です。
力は 単位質量(1 kg) の質量を持つ物体に、決まった加速度(1 m s−2)を生じさせる力を単位とするので kg m s−2 (キログラム メートル 毎秒 毎秒) が単位となります。
これは頻繁に使われるので N (ニュートン)という別名がついています。
このような別名がついている単位は SI組立単位 とよばれ、正式に認められているのはわずかに 22 種類です。
これらの物理量はいずれも使用頻度の高い重要なものです。
物理量 | 単位の記号と名称 | 他のSI単位による表し方 | 備考 |
平面角 | rad ラジアン |
(1) | 円の半径と円弧の比。180 ° = π rad |
立体角 | sr ステラジアン |
(1) | 立体角は円錐の頂点のような量となる。詳しくは http://ja.wikipedia.org/wiki/%……%E3%83%B3″>wikipedia 等を参照。 |
周波数 | Hz ヘルツ |
s−1 | 1 秒間に何回起こるか。 |
力 | N ニュートン |
kg m s−2 | 1 N の力は 1 kg の質量の物体に 1 m s−2 の加速度を生じさせる。 |
圧力 | Pa パスカル |
N m−2 | 1 Pa は、1 m2 あたりに 1 N の力が働いている。 |
エネルギー | J ジュール |
N m = kg m2 s−2 |
1 J は、1 N の力が働いている場の中で、力に逆らって 1 m 移動させるのに必要なエネルギー。(位置エネルギーのページを参照) |
仕事率 | W ワット |
J s−1 | 1 W は、1 s あたり 1 J のエネルギーを発生(消費)する。 |
電荷 | C クーロン |
A s | 電気量。1 C は1 A の電流が 1 s に運ぶ電荷。電流よりこちらを基本単位と考えた方がよいかも。(1 A = 1 C s−1) |
電圧(電位差) | V ボルト |
J C−1 | 「電位による位置エネルギー」参照。 |
電気抵抗 | Ω オーム |
V A−1 | オームの法則より。 |
コンダクタンス | S ジーメンス |
Ω−1 | 「電流の流れやすさ」で電気抵抗の逆数。電気伝導度(単位 S m−1)とは異なる。 |
電気容量 | F ファラド |
C V−1 | コンデンサに蓄えられる電荷はかけた電圧に比例する。その係数。 |
磁束 | Wb ウェーバ |
V s | |
磁束密度 | T テスラ |
Wb m−2 | |
インダクタンス | H ヘンリー |
V A−1 s | 巻線(コイル)は流す電流の変化(A s−1)によってその周囲に電圧を生じる(誘起起電力)。その係数。 |
セルシウス温度 | °C セルシウス温度 |
K | (t / °C) = (T / K) − 273.15。(定義) 273.15 K は 1 bar における水の融点。 |
光束 | lm ルーメン |
cd sr | 光の量を表す。1 cd の光源が 1 sr に放射する光の量。LED電球の全光束は730 lm などというように使われる。 |
照度 | lx ルクス |
lm m−2 | 光の密度を表す。1 lx では、1 m2 あたり 1 lm の光が照射されている。電球から遠くなると小さくなる。 |
放射性核種の放射能 | Bq ベクレル |
s−1 | 放射能の量を表す単位。(放射能は放射線を出す能力のこと) 1 秒間に 1 つの原子核が崩壊して放射線を放つ放射能の量が 1 Bq。 核種によって崩壊速度は決まっているので、その量によって定まる。例えばラジウム226が 1 g あると放射能の量は 3.6 × 1010 Bq。 |
吸収線量 | Gy グレイ |
J kg−1 | 一定質量の物質が放射線のエネルギーをどれだけ吸収したかを示す量。被曝線量。 1 kg あたり 1 J 吸収したとき 1 Gy。 |
線量当量 | Sv シーベルト |
J kg−1 | 被曝による影響の指標。吸収した放射線の生体への影響は放射線の種類によって異なる(同じ 1 Gy でも α 線と γ 線だと α 線の方が影響が大きい)。よって吸収線量に影響の度合いに応じた線質係数をかけ、生体への影響を示している。(X線 = 1, γ 線 = 1, β線 = 1, 中性子(10 keV 以下) = 5, 中性子(10−100 keV) = 10, 中性子(100 keV−2 MeV) = 20, α 線 = 20)。 |
酵素活性 | kat カタール |
mol s−1 |
圧力の定義の意味するところ・・・「単位面積あたりにかかる力」に対応した N m−2 を覚えておけば十分です。
ただ、次の 2 つ、力とエネルギーについてはよく出てくるので、 SI基本単位での表し方も覚えておくべきでしょう。
力 | N (ニュートン) = kg m s−2 |
エネルギー | 1 J = 1 N m。 J (ジュール) = kg m2 s−2 |
CGS単位系
上で述べたように、SI単位ではMKS単位系 ~長さの単位として m (メートル)、質量の単位として kg (キログラム)、時間の単位として s (秒) を使うことになっています。
しかし、これだと大きすぎるということで、より小さい量を表すために CGS単位系~長さの単位として cm (センチメートル)、質量の単位として g (グラム)、時間の単位として s (秒) を使う場合があります。
ややこしいことに、これらの組立単位にも別の名前がついていたりするのです。
これらは全て MKS単位に接頭語を付けることで代用できるので、できるだけCGS単位は使わない方がよいでしょう。
単位の換算のために、CGS組立単位について下記に示しておきます。
基本物理量 | 名称 | 記号 | MKS単位との対応 |
長さ length | センチメートル | cm | 10−2 m |
質量 mass | グラム | g | 10−3 kg |
時間 time | 秒 | s | |
力 force | ダイン | dyn | 10−5 N |
エネルギー energy | エルグ | erg | 10−7 J |
加速度 acceleration | ガル | Gal | 10−2 m s−2 |
表面張力 surface tension | dyn cm−1 | 10−3 N m−1 | |
粘性率 dynamic viscosity | ポアズ | P | 10−1 Pa s |
動粘性率 kinematic viscosity | ストークス | St | 10−4 m2 s−1 |
無次元量
比(物質量分率(モル分率)、質量分率、体積分率など)は下記の記号を使って表されることがありますが、これらの記号は使用しないことが強く勧められています。(特にppなんとかシリーズは今後は一切使わないことにすべき、とある)。
問題のひとつは、例えば % で表される「比率」が、物質量(モル量)の比率なのか、質量の比率なのか、体積の比率なのかあいまいになってしまうことです。比を表すときは何の比率なのかを明記しなくてはなりません。
比を表すとき、小中学校で使い慣れている % (0 ~ 100 で割合を表す)を使いたくなりますが、化学レポートでは 物質量分率(モル分率)や質量分率(0 ~ 1 で割合を表す)を使うようにしましょう。
例: 水とエタノールの混合溶媒において
× 水の割合 50 %
○ 水のモル分率 0.5
名称 | 記号 | 値 |
百分率(パーセント) percent | % | 10−2 |
千分率(パーミル) permille | ‰ | 10−3 |
百万分の一 part per million | ppm | 10−6 |
十億分の一 part per billion | ppb | 10−9 |
一兆分の一 part per trillion | ppt | 10−12 |
例えば 質量分率を ppm で表す代わりに、 mg / kg を使う。
質量分率 1.3 ppm → 1.3 mg / kg
単位なしで 質量分率 1.3 × 10−6 としてもよい。
また、個数や回数は単位が付かない量(無次元量)です。
1個や1回とは書かず、単に 1 と書きます。
脚注
↑1 | IUPAC: International Union of Pure and Applied Chemistry 国際純正・応用化学連合 |