解答
前述の
... (27.40)
の
部分、すなわち F (u) についてプロットしてみよう。
ここでは M = 28.01 × 10−3 kg、T = 300 K とする。(m = M / NA)
最も出現しやすい速さ ump ならば、この分布の頂点である。
これは F (u) を u で微分し、0 となる (分布曲線の傾きが 0 となる) ところを探せばよい。
計算は教科書 p.1158 に書かれており、
... (27.43)
となる。
さて、「最も出現しやすい運動エネルギー εmp」を求めるためには、速さの分布ではなく、運動エネルギーの分布を求める必要がある。
上の(27.43)式の速度から、εmp = (1/2)mump2 … とやりたくなるのですが、これは間違いです。
(u と ε は比例していないので、横軸を u から ε に変換するとグラフの形が変わり、頂点の位置もずれるため。)
運動エネルギーの分布式は 式(27.40) から求めることができる。
運動エネルギーの定義式
... (a)
を変形し、
... (b)
として、式(27.40) 右辺の u を ε に置き換えていく。
... (c)
u はひとつ残らず ε に置き換えなくてはならない。問題となるのは du の部分である。
(du はd × u ではなく一つの変数であり、u の「幅」を表しているので、残念ながらここは 式(b) を代入して解決、というわけにはいかない。)
ここで求めたいのは G(ε) dε という、後ろに dε がつく関数である 1)教科書では G(ε) ではなく、F(ε)となっていますが、分布の形が異なるので記号を変えました。。
du と dε の関係は、(du / dε) 、すなわち 式(b) の微分を求めれば得られる。
式(b) を少し変形して
これを微分することで
となり、これより
...(d)
と、du を dε を用いた形で表せる 2)du や dε は(d と u にばらさなければ)通常の変数と同様に扱ってよい。また 式(d) は、式(a) を微分して出てきた u に 式(b) を代入しても得られる。これを 式(c) に代入すればよい。
ε が大きくなると、式(d) の係数部分、 は小さくなる。これは次の効果による。
速さ u が 10 と 11、100 と 101 m s−1 の分子の運動エネルギーを考えると、m = 1 として
u / m s−1 | 10 | 11 | 100 | 101 |
ε / J | 50 | 60.5 | 5000 | 5100.5 |
となる。速さ 1 m s−1 の範囲にあった分子が、 10 m s−1 付近では 10.5 J の範囲に、
100 m s−1 付近では 100.5 J の範囲に広がる。速さが大きい領域ほど、エネルギーの分布に直したときは広い範囲に広がることになる。式(d) の係数部分はこの効果を表している。
これでようやく運動エネルギーの分布を表す式、G(ε) dε を得ることができる。
整理して
... (27.44)
約分により m が消えてしまったことに注目してほしい。これは分子の運動エネルギーの分布が 分子種(分子の質量)によらないことを示している。
G(ε) 部分を図示してみよう。(T = 300 K)
分布の形状は 速さ u の場合とずいぶん異なっている。
(横軸の単位は 本来 J だが、非常に小さい値になってしまうので、 kB で割った値を示している。グラフの横軸の右端は、u のグラフの右端 1500 m s−1 の分子が持つ運動エネルギー 3790 kB にほぼ合わせた。)
あとは G(ε) 部分
を ε で微分して、上の分布の頂点の位置(ε) を求めればよい。
ここは自力でやってみよう。上の式のうち
部分は 定数 (微分する ε に依存しない)なので、実質的には
部分を微分すればよい。
(解答の続きは 下記 第3ページ)
脚注