27-26 最確エネルギー

解答

前述の

  F(u) {\rm d}u = 4 \pi \displaystyle \left( \frac{m}{2 \pi k_{\rm B} T} \right)^{3/2} u^2 \exp \left( -\frac{mu^2}{2 k_{\rm B} T} \right) {\rm d} u   ... (27.40)

  4 \pi \displaystyle \left( \frac{m}{2 \pi k_{\rm B} T} \right)^{3/2} u^2 \exp \left( -\frac{mu^2}{2 k_{\rm B} T} \right)  

部分、すなわち F (u) についてプロットしてみよう。

ここでは M = 28.01 × 10−3 kg、T = 300 K とする。(m = M / NA)

最も出現しやすい速さ ump ならば、この分布の頂点である。
これは F (u) を u で微分し、0 となる (分布曲線の傾きが 0 となる) ところを探せばよい。
計算は教科書 p.1158 に書かれており、

  u_{\rm mp} = \displaystyle \left(\frac{2 k_{\rm B} T}{m} \right)^{1/2}   ... (27.43)

となる。

さて、「最も出現しやすい運動エネルギー εmp」を求めるためには、速さの分布ではなく、運動エネルギーの分布を求める必要がある。

上の(27.43)式の速度から、εmp = (1/2)mump2 … とやりたくなるのですが、これは間違いです。
(u と ε は比例していないので、横軸を u から ε に変換するとグラフの形が変わり、頂点の位置もずれるため。)

運動エネルギーの分布式は 式(27.40) から求めることができる。
運動エネルギーの定義式

  \varepsilon = \displaystyle \frac{1}{2} m u^2   ... (a)

を変形し、

  u = \displaystyle \left( \frac{2\varepsilon}{m} \right)^{1/2}   ... (b)

として、式(27.40) 右辺の u を ε に置き換えていく。

  4 \pi \displaystyle \left( \frac{m}{2 \pi k_{\rm B} T} \right)^{3/2} \left( \frac{2\varepsilon}{m} \right) \exp \left( -\frac{\varepsilon}{k_{\rm B} T} \right) {\rm d} u   ... (c)

u はひとつ残らず ε に置き換えなくてはならない。問題となるのは du の部分である。
(du はd × u ではなく一つの変数であり、u の「幅」を表しているので、残念ながらここは 式(b) を代入して解決、というわけにはいかない。)

ここで求めたいのは G(ε) dε という、後ろに dε がつく関数である 1)教科書では G(ε) ではなく、F(ε)となっていますが、分布の形が異なるので記号を変えました。
du と dε の関係は、(du / dε) 、すなわち 式(b) の微分を求めれば得られる。
式(b) を少し変形して

  u = \displaystyle \left( \frac{2}{m} \right)^{\frac{1}{2}} \varepsilon^{\frac{1}{2}}  

これを微分することで

  \displaystyle \frac{{\rm d}u}{{\rm d} \varepsilon} = \frac{1}{2} \left( \frac{2}{m} \right)^{\frac{1}{2}} \varepsilon^{-\frac{1}{2}}  

となり、これより

  \displaystyle {\rm d}u = \left( \frac{1}{2 m \varepsilon} \right)^{\frac{1}{2}} {\rm d} \varepsilon   ...(d)

と、du を dε を用いた形で表せる 2)du や dε は(d と u にばらさなければ)通常の変数と同様に扱ってよい。また 式(d) は、式(a) を微分して出てきた u に 式(b) を代入しても得られる。これを 式(c) に代入すればよい。

ε が大きくなると、式(d) の係数部分、\left( \frac{1}{2 m \varepsilon} \right)^{\frac{1}{2}} は小さくなる。これは次の効果による。

速さ u が 10 と 11、100 と 101 m s−1 の分子の運動エネルギーを考えると、m = 1 として

u / m s−1 10 11 100 101
ε / J 50 60.5 5000 5100.5

となる。速さ 1 m s−1 の範囲にあった分子が、 10 m s−1 付近では 10.5 J の範囲に、
100 m s−1 付近では 100.5 J の範囲に広がる。速さが大きい領域ほど、エネルギーの分布に直したときは広い範囲に広がることになる。式(d) の係数部分はこの効果を表している。

これでようやく運動エネルギーの分布を表す式、G(ε) dε を得ることができる。

  G(\varepsilon) {\rm d}\varepsilon = 4 \pi \displaystyle \left( \frac{m}{2 \pi k_{\rm B} T} \right)^{3/2} \left( \frac{2\varepsilon}{m} \right) \left( \frac{1}{2 m \varepsilon} \right)^{\frac{1}{2}} \exp \left( -\frac{\varepsilon}{k_{\rm B} T} \right) {\rm d} \varepsilon  

整理して

  G(\varepsilon) {\rm d} \varepsilon = \displaystyle \frac{2 \pi}{(\pi k_{\rm B} T)^{3/2}}\ \varepsilon^{1/2}\ \exp \left( -\frac{\varepsilon}{k_{\rm B} T} \right) {\rm d} \varepsilon   ... (27.44)

約分により m が消えてしまったことに注目してほしい。これは分子の運動エネルギーの分布が 分子種(分子の質量)によらないことを示している。

G(ε) 部分を図示してみよう。(T = 300 K)

分布の形状は 速さ u の場合とずいぶん異なっている。
(横軸の単位は 本来 J だが、非常に小さい値になってしまうので、 kB で割った値を示している。グラフの横軸の右端は、u のグラフの右端 1500 m s−1 の分子が持つ運動エネルギー 3790 kB にほぼ合わせた。)

あとは G(ε) 部分

  G(\varepsilon) = \displaystyle \frac{2 \pi}{(\pi k_{\rm B} T)^{3/2}}\ \varepsilon^{1/2}\ \exp \left( -\frac{\varepsilon}{k_{\rm B} T} \right)  

ε で微分して、上の分布の頂点の位置(ε) を求めればよい。

ここは自力でやってみよう。上の式のうち

  \displaystyle \frac{2 \pi}{(\pi k_{\rm B} T)^{3/2}}  

部分は 定数 (微分する ε に依存しない)なので、実質的には

  \displaystyle \varepsilon^{1/2}\ \exp \left( -\frac{\varepsilon}{k_{\rm B} T} \right)  

部分を微分すればよい。

(解答の続きは 下記 第3ページ)

脚注   [ + ]

1. 教科書では G(ε) ではなく、F(ε)となっていますが、分布の形が異なるので記号を変えました。
2. du や dε は(d と u にばらさなければ)通常の変数と同様に扱ってよい。また 式(d) は、式(a) を微分して出てきた u に 式(b) を代入しても得られる