「エントロピーが増大する」のと「ギブスエネルギーが減少する」との関係がよくわからない

「エントロピーが増大する」のと「ギブズエネルギーが減少する」との関係がよくわからない
下にいろいろ書いてありますが、

  • 孤立系では S が増大するとき自発過程
  • 閉鎖系では
    • 一定体積のときは A が減少するとき自発過程
    • 一定圧力では G が減少するとき 自発過程
  • 開放系では 化学ポテンシャル μ を使う

という使い分けで良いと思います。

孤立系では系のエントロピーが増大する 方向(ΔS (系) > 0)に自発過程が進みます。 1)孤立系では、系の中のいかなる変化も周囲に影響を与えることはありませんから、ΔS (周囲) = 0 となります。
この「エントロピーが増大する方向が自発過程」というのは閉鎖系や開放系でも成り立つのですが、その場合は周囲のエントロピーの変化分も考えなくてはなりません。

例えば系が閉鎖系のときを考えると

ΔS (系) + ΔS (周囲) > 0

が、変化が自発的に進む条件となります。

ただし、周囲のエントロピー変化は、系とエネルギーをやりとりした結果生じていますから、仮に系と熱 q をやりとりしたと考えると、周囲のエントロピー変化は

ΔS (周囲) = – q / T

と書くことができます。q は系がエネルギーを得るとき + の符号を取りますから、周囲が得たエネルギーとしては – がつきます。

さて、もしこの変化が定圧条件で起こるなら、熱 q は「系の」エンタルピー変化 ΔH(系) で書き表せます。

q = ΔH(系)

よって、閉鎖系で定圧で変化が起こる際に、それが自発的に生じる条件は

ΔS (系) – ΔH (系) / T > 0

となります。 2)ΔS (系) と ΔH (系) / T って同じなんじゃねえの? と思った人もいるかもしれませんが、化学反応や不可逆過程の場合は違う値になります。そして、自発的に進むのは不可逆過程です。
「定圧」という条件付きですが、登場する量は全て系のもので、周囲に関するものはなくなりました。

これを T 倍し、 −1 倍すると左辺はエネルギーの次元を持つようになります。 3) −1 倍する事によって、位置エネルギーと同じように(転がるボールはより低いところに行こうとする)、系の G がより低いほうが安定、という関係になります。

ΔH (系) – T ΔS (系)  < 0

−1 倍したので不等号の向きが変わっていることに注意してください。

この左辺をギブズエネルギーとすることで、(G = H − TS)
等温*定圧条件で  それ( G )が減少するときにその変化は自発過程、という便利な「系の熱力学量」 G が得られます。

*等温という条件はどこから入ってくるのか?
G = H – TS より、ΔG = ΔH – Δ(TS) ですが、T が一定であれば
ΔG = ΔH – TΔS となり、上の不等式の左辺と一致します。

脚注

1 孤立系では、系の中のいかなる変化も周囲に影響を与えることはありませんから、ΔS (周囲) = 0 となります。
2 ΔS (系) と ΔH (系) / T って同じなんじゃねえの? と思った人もいるかもしれませんが、化学反応や不可逆過程の場合は違う値になります。そして、自発的に進むのは不可逆過程です。
3 −1 倍する事によって、位置エネルギーと同じように(転がるボールはより低いところに行こうとする)、系の G がより低いほうが安定、という関係になります。