... (27.1)
ここでは、分子が壁と衝突するときにどのくらいの力を壁に及ぼすか、について計算しています。
授業で説明したように、物体の運動と力には次の関係があります。
... (1)
ここで m は物体の質量、a は加速度、F は物体に加わった力です。a と F はベクトル量です。
この式はニュートンの第二法則を表しており、運動方程式とも呼ばれます。
- ニュートンの第一法則 [慣性の法則] 力を加えない限り、静止している物体はそのまま静止し、運動している物体はその速度 1)速度はベクトル量。 を保つ(等速直線運動)。
- 第二法則 [運動の法則] (上式)
物体に力を加えると (F/m) に比例した加速度を生じる(等加速度運動)。 - 第三法則 [作用・反作用の法則]
2つの物体が相互作用するとき、一方が受ける力と他方が受ける力は向きが反対で大きさが等しい。
力が加わり続けるときは 式(1) でよいのですが、Δt の間だけ力が加わることを考えます 2)Δ(デルタ)と d の違いについてはこちらを参照 。
最初の速度を 、 力が加わった後の速度を とします。
(慣性の法則により、力が加わっていないときは は一定に保たれる。)
加速度は単位時間当たりの速度の変化なので、
a に 式(1) を代入
変形して
したがって、運動量 mv の変化が、 F と Δt の積 (力積(りきせき)という)に等しいことがわかります。
[運動量の変化がわかれば→加えた力と、力を加えていた時間の積がわかる] または[加えた力と、力を加えていた時間の積がわかれば→運動量の変化がわかる] というわけです。
授業での扱いのように、x 方向だけを考えれば、ベクトルはスカラー量に置き換えられます。
(ただし、符号については考えなくてはならない。右向きの v や F がプラスになる。)
上式の F は「分子が壁から受けた力」です。「壁が分子から受けた力」 Fw は、作用・反作用の法則により符号が反対向きになります。
さて、ようやく問題の Δt です。
運動量の変化からわかるのは力積です。
Δt は「力が加わっていた時間」であり、これに応じて F が変化します。
今知りたいのは、多数の分子がひっきりなしに容器の壁に衝突をしている状態での
「平均の」力です。
よって、 Δt は、分子が壁に衝突してから次に衝突するまでの時間(衝突間隔)とするのがよいでしょう。
1 個の分子が右の壁と衝突する間隔について考えます。
分子は右と左の壁に衝突しながら往復運動をします。壁との衝突は弾性衝突なので、(他の分子との衝突を考えなければ) x 成分の速度はずっと一定です。
x 方向の容器の大きさは a (加速度ではない。別の記号を使うべきでしたね。)としましたから、この往復分の距離 2a を、分子の x 成分の速度 ux でわることで、衝突間隔 Δt が求まります。