平均速度や根平均二乗速度、最確速度などいくつかの速度が出てきたが、それぞれどのようなイメージを持てばよいのか?

平均速度や根平均二乗速度、最確速度などいくつかの速度が出てきたが、それぞれどのようなイメージを持てばよいのか?

マクスウェル-ボルツマン式(p.1156 式(27.40))によって分子の速度分布が記述されるので、ここから上記の各速さ 1)ついついごっちゃにしてしまいますが、いずれもスカラー量なので、「速度(velocity)」ではなく「速さ(speed)」ですね。を求めることができます。

それぞれ図示すると (N2, 300 K)

となります。

定義と値は以下の通りです。算出法は教科書 p.1157 ~ 1159 を参照してください。

平均の速さ \langle u \rangle = \displaystyle \sqrt{\frac{8 k_{\rm B} T}{\pi m}} 全分子の速さの平均
根平均二乗速さ u_{\rm rms} =\langle u^2\rangle^{1/2} = \displaystyle \sqrt{\frac{3 k_{\rm B} T}{m}} 全分子の速さの二乗の平均のルート
(rms = root mean square)
最確の速さ u_{\rm mp} = \displaystyle \sqrt{\frac{2 k_{\rm B} T}{m}} 最も確率の大きい速さ
(mp = most probable speed より)
音速 u_{\rm sound} = \displaystyle \sqrt{\frac{5 k_{\rm B} T}{3 m}} その気体中を音が伝わる速さ

これらは、それぞれのイメージを持つというよりは、「用途によって使い分ける」と言えばいいでしょうか。

平均の速さ \langle u \rangle は 全分子の速さの平均値なので、特にここでの説明はいらないでしょう。

根平均二乗速度 u_{\rm rms} は、例えば、全分子の運動エネルギーの平均値を出すときに使います。
前に説明したように、u の平均値と u2 の平均値は異なるので、\langle u \rangle を使って\frac{1}{2}m\langle u \rangle^2 とやってもそれは運動エネルギーの平均になりません。
u_{\rm rms} は 二乗してからの平均になっていますから、\frac{1}{2}m u_{\rm rms}^2 は運動エネルギーの平均になります。

最確の速さ u_{\rm mp} は分子の速さの割合が重要な時に使うことになるでしょう。例えば 教科書 p.1163 Chap.27.5 では(授業ではとばしましたが) 分子の速さの分布をチョッパーと呼ばれる速度選別機(教科書 図27.9)で実測する話が出てきます。
この際の速さの分布(教科書 図27.10)のピーク位置は u_{\rm mp} と一致しているはずです。

脚注

1 ついついごっちゃにしてしまいますが、いずれもスカラー量なので、「速度(velocity)」ではなく「速さ(speed)」ですね。