温度 T と分子の速度 u の関係とは?

温度 T と分子の速度 u の関係とは?

温度 T と分子の運動には密接な関係があります。分子の速さの分布はマクスウェル-ボルツマン分布で表され、温度が高くなるにつれて分布は速さの大きい方へと移っていきます。(教科書 27 章 2、図 27.2 参照)

運動している 1 つ 1 つの分子はそれぞれ運動エネルギーを持っています。

分子 1 個の(並進の)運動エネルギー \varepsilon_{\rm trans} の平均値 \langle \varepsilon_{\rm trans}\rangle は、温度(絶対温度)と比例関係にあります。

  \displaystyle \langle \varepsilon_{\rm trans}\rangle = \frac{3}{2}k_{\rm B}T  

(k_{\rm B}ボルツマン定数)

この関係は非常に重要です。
(この関係は授業では教科書 式(27.9) においてPV = nRT を使って導きました。また、17章では統計熱力学からもこの式が導かれることが示されます。)

この関係は温度 T が決まれば分子の運動エネルギー \langle \varepsilon_{\rm trans}\rangle が定まる ことを示しています。
逆に言うと、分子の運動エネルギー \langle \varepsilon_{\rm trans}\rangle が決まれば温度 T が定まる ともいえます。

すなわち、温度とは分子の運動エネルギーそのものと言ってもよい、ということです。

(これは単原子理想気体のときの話で、多原子分子だったり、液体や固体の場合は並進運動に加え回転運動や振動運動が加わるので、話は少し複雑になります。物理化学III問題19-19参照)

(並進の)運動エネルギー\varepsilon_{\rm trans}は次の式で表せます。

  \displaystyle \varepsilon_{\rm trans} = \frac{1}{2}m u^2  

(m は分子の質量)

その平均値 \langle \varepsilon_{\rm trans}\rangle は速度の2乗の平均値 \langle u^2 \rangle を使って

\displaystyle \langle \varepsilon_{\rm trans} \rangle= \frac{1}{2}m \langle u^2 \rangleとなるので、

  \displaystyle \frac{1}{2}m \langle u^2 \rangle = \frac{3}{2}k_{\rm B}T  

(教科書 式(27.10) 付近)

という関係式が導かれます。

最初の質問に対してはこの式を示し、「(理想気体の並進の)分子の運動エネルギーは絶対温度に比例する」ことを説明すればよいと思います。