レナード – ジョーンズ ポテンシャルの最小値がなぜ −ε になるのかわからない


レナード – ジョーンズ ポテンシャルの最小値がなぜ −ε になるのかわからない (p.691)

最小値なので、レナード – ジョーンズ ポテンシャルの式

 \displaystyle u(r) = 4 \varepsilon \Bigl\{ \Bigl(\frac{\sigma}{r}\Bigr)^{12} - \Bigl(\frac{\sigma}{r}\Bigr)^6 \Bigr\}  ... (16.24)

r で微分し、これが 0 となる r を求めます。

式(16.24) をプロットしてみます。

式中、カッコ内の第 1 項が分子間の反発力(グラフの赤線; 分子が近づくほどエネルギーが高く、不安定になる)、
第 2 項が 分子間の引力(グラフの緑線; 分子が近づくほどエネルギーが低く、安定になる) に起因するポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)を表しています。

両者を足したのが青線です。グラフはその位置でのポテンシャルエネルギーを表しており、その傾きがその位置で分子に働く力に対応しています(F = − dU / dr )。分子同士が十分離れているところから青線をたどってみます。

分子が十分に離れているときは分子間には力が働かず(グラフの傾きが0) ポテンシャルエネルギー U も 0 ですが、
分子間距離の数倍(2 σ ~5 σ)まで近づくと分子間には引力が働くようになり(傾きが正)、分子が近づくにつれてエネルギーは低下します。
r が 1.12 σ 付近まで来るとエネルギーは最小となります。 この位置では分子に働く力は 0 になります(傾きが 0)。分子の運動が小さければ、2 つの分子の距離はこの位置で止まり、安定になります 1)実際にはこの位置を中心に振動する。(r が大きくなったり小さくなったりする)
分子間の距離がさらに近づくと、分子間には反発力が働き(傾きが負)、エネルギーは急速に増大します。

正しく微分ができれば、\displaystyle r = 2^{\frac{1}{6}}\,\sigma のとき、ポテンシャルエネルギーは最小となることが分かります。(2 の 1/6 乗 = 2 の 6 乗根 = 約 1.12)

これを 式(16.24) に代入します。

 \displaystyle u(2^{\frac{1}{6}} \sigma) = 4 \varepsilon \Bigl\{ \Bigl(\frac{\sigma}{2^{\frac{1}{6}} \sigma}\Bigr)^{12} - \Bigl(\frac{\sigma}{2^{\frac{1}{6}} \sigma}\Bigr)^6 \Bigr\} 

 \displaystyle u(2^{\frac{1}{6}} \sigma) = 4 \varepsilon \Bigl\{ \Bigl(2^{-\frac{1}{6}}\Bigr)^{12} - \Bigl(2^{-\frac{1}{6}}\Bigr)^6 \Bigr\} 

 \displaystyle u(2^{\frac{1}{6}} \sigma) = 4 \varepsilon \Bigl\{ \Bigl(2^{-2}\Bigr) - \Bigl(2^{-1}\Bigr) \Bigr\} 

 \displaystyle u(2^{\frac{1}{6}} \sigma) = 4 \varepsilon \Bigl( \frac{1}{4} - \frac{1}{2} \Bigr) 

 \displaystyle u(2^{\frac{1}{6}} \sigma) = 4 \varepsilon \Bigl( -\frac{1}{4} \Bigr) 

 \displaystyle u(2^{\frac{1}{6}} \sigma) = - \varepsilon 

脚注

1 実際にはこの位置を中心に振動する。(r が大きくなったり小さくなったりする)