「確率にするために Σ exp(−βEj ) で割る」というのがよくわからない

「確率にするために Σ exp(−β Ej ) で割る」というのがよくわからない

分配関数 Q のところですね。
教科書(マッカーリ・サイモン17章)の記法に従い、少し丁寧に説明します。

教科書では小文字の a は「ある状態にある系の」を表しています。(p.733 式(17.4) の下 1 行目)
授業で説明したように、系はとびとびのエネルギーを持つ複数の状態のうちのどれかひとつの状態にあります。
また、アンサンブル中には系は無数にあります。
というわけで、「状態 k にある系の数」(ak)というのを考えることができます。

ボルツマン分布則は、2 つの状態について、この a の比が、次の式で表せると言っています。

 \displaystyle \frac{a_j}{a_k} = {\mathrm e}^{-\beta (E_j-E_k)} = {\mathrm e}^{-\beta \cdot \Delta E}  ... (17.10)

ここで Ek は状態 k にある系のエネルギー、\beta = \frac{1}{k_{\rm B} T} です。(kBボルツマン定数)

式(17.10) は次のようにも書けます。

 \displaystyle a_k = C \cdot {\mathrm e}^{-\beta E_k}  ... (17.11)

C は定数です。
全部の状態の中で、系が状態 k を取る確率 pk は、
(状態 k をとる系の数)/(全部の系の数) になるので

 \displaystyle p_k = \frac{C \cdot {\mathrm e}^{-\beta E_k}}{C \cdot \displaystyle \sum_j {\mathrm e}^{-\beta E_j}} 

となります。C を約分すると、

 \displaystyle p_k = \frac{{\mathrm e}^{-\beta E_k}}{\displaystyle \sum_j {\mathrm e}^{-\beta E_j}}  ... (17.13)

となり、冒頭の「確率にするために \displaystyle \sum_j \mathrm e^{-\beta E_j} で割る」という形になります。

系の数の「比」を扱うので、式(17.11) の定数 C は消えてしまいます。
教科書では系の総数 A を経て導出しています。 E_j = 0 となるのがどの状態かは決まっていないので、(私は授業で基底状態と説明してしまいましたが)、教科書ではこれを巧みに避けて式の展開が行われています。

式(17.13) の分母が分配関数 Q であり、これから系の様々な巨視的な性質が導かれるというのは、授業で述べたとおりです。

 \displaystyle Q(N,\, V,\, T) = \displaystyle \sum_j {\mathrm e}^{-\beta E_j}  ... (17.14)