エンタルピー H は
と定義される物理量です。
上式の P と V は「その状態における」圧力と体積であることに注意してください。
状態 1 から状態 2 に系が変化するとき、エンタルピー変化 ΔH は
となります。
ここで Δ(PV) は、系がする仕事 とは(似ていますが)異なります。
次のグラフを見てください。横軸は V、縦軸は P (正確には周囲の圧力 Pex)です。
等温可逆過程(圧力が変わる)で、体積 0.5 dm3 から 2 dm3 へ膨張する過程を考えましょう。
膨張過程で系がする仕事 は、 の部分の面積です。
一方、 は 終状態の PV(の面積) – 初期状態の PV( の面積) となります。
理想気体の等温膨張の場合、
( – ) は 0 となり、 の面積とは特に関係はありません。
これが定圧過程では意味を持ちます。
定圧過程では下の図のように、
(終状態のPV ) – (初期状態のPV ) = (膨張過程で系がする仕事 )になっていることがわかります。
というわけで、定圧過程では Δ(PV) 項が系がする仕事に一致し、内部エネルギー変化 ΔU と合わせ
「熱の出入りとエンタルピー変化 ΔH が等しくなる」ことがわかります。
エンタルピーは、「ある状態での」内部エネルギー U に、そのときの圧力 P と体積 V の積を加えたものですから、系の状態によって決まる量(状態関数)です。
等温可逆過程でも ΔH は定義できます。
理想気体の場合は PV = 一定なので、
Δ(PV) = 0 となり、(上の等温可逆過程のグラフで = になっている)
ΔU = 0 (温度が等しいから)
ΔH = 0
となります。
(定圧過程以外では、ΔH には重要な意味はない。)
具体的に計算した例などを参照してください。
仕事 w は「系がエネルギーを得るとき」をプラス(正)とするので、
のように、本来は − (マイナス)がつきます。
(膨張のときは系がエネルギーを失うので w < 0)
上の説明では(負の面積というのはややこしいので)、「系がする仕事」(w とは符号が逆)として部分を説明しました 。
また、圧力一定の場合は P が一定値なので、Δ(PV) は PΔV と書いてもよくなります。
Δ(PV) = P2V2 − P1V1
P2 = P1 なので、これを P として
Δ(PV) = PV2 − PV1 = P(V2 − V1) = PΔV
これもわりとごっちゃにされがちの点だと思いますので注意してください。
「なぜ「定圧過程のときだけ」、q とエンタルピー変化 ΔH が等しくなるのか」への1件のフィードバック
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