熱機関の効率を導出するとき、エントロピー増加を 0 とするのはなぜか
... (20.33)
「熱機関を自発的に動かすためにはエントロピーの総和を増加させなくてはならない。(ΔS ≥ 0)
ここでは極限としての最大効率を求めるため、ΔS = 0 について計算を行っている」
という説明ではどうでしょうか。
私が授業でした話と、教科書の解説のやりかたが違っているので、混乱を招いたかもしれません。
上式が 0 になるのは、系(熱機関)が「循環的」だからです。授業で示したカルノーサイクルならば、4 つの過程のあと系は元の状態に戻ります。したがって、状態関数である系のエントロピーの値も元の値に戻ります。
(教科書にはあらわに書かれていない)周囲のエントロピーについて考えましょう。
高温熱源は熱機関に熱を渡すので、エントロピーが減少します。
低温熱源は熱機関から熱を受け取るので、エントロピーが増加します。
(は負)
全体のエントロピー変化 ΔStot (= ΔSengine + ΔSh + ΔSc )は
(熱機関のエントロピー変化 ΔSengine が 0 なので)
となります。式(20.33)と符号が逆ですね。
熱機関がが自発的に動くためには全体のエントロピーが増加する必要があります。
... (1)
熱機関が受け取る熱 を、できるだけ多く、 放出する熱 に振り分ければエントロピーの増加分 ΔSc を増やせるので、式(1)の不等式で有利になります。
しかし、できるだけ多くの仕事 w を取り出したい… と考えると、式(1)が成り立つ範囲で、できるだけ への振り分けを減らすことになります。
というわけで、最大効率は式(1) で 等号を取った時に得られます。
ちなみに マッカーリサイモンでは 記号 δ (デルタの小文字)は、経路関数の微小量を表すときに使われています。(教科書 p.815)
私は授業の中では、経路関数については δ を使わず、単に q とか w と書いていました。