モルエントロピー S の温度依存性(図21.2)は物質によってどのくらい変わるのか

モルエントロピー \bar{S} の 温度依存性(図21.2)は物質によってどのくらい変わるのか

窒素とベンゼンのモルエントロピー (マッカーリ・サイモンより)

モルエントロピーは 0 K からその温度までの熱容量の積分

  \displaystyle \Delta \bar{S} = \int_0^T \bar{C}_P {\rm d}T  

と、相転移に伴うエントロピー増加

  \displaystyle \Delta_{\rm trs} \bar{S} = \frac{\Delta_{\rm trs}\bar{H}}{T_{\rm trs}}  

の和になっています。(定圧過程の時)

相転移温度や相転移時のエンタルピー変化(融解熱、蒸発熱など)は物質によってもちろん大きく異なりますし(問題16-23参照)、熱容量も分子の持つ運動モードの違い(問題18-20参照)などによってかなり違います。

上のような温度に対する S の曲線が様々な物質について示されたデータベースのようなものが簡単に参照できるとよいのですが、あまり良いものがありません。
しかし、上記のグラフの 298 K の値ならデータテーブルがあります。
教科書p. 906 の表21.2 (298.15 K におけるさまざまな物質の標準モルエントロピー)がそうですね。

値は最小のダイヤモンド (2.4 J K−1 mol−1) から 最大の ヨウ素(g) (260.7 J K−1 mol−1) まで、かなりの範囲にわたっています。一般に、相転移を経ていない固体のモルエントロピーは小さく、2回相転移している気体のモルエントロピーは大きくなっています。(それにしてもダイヤモンドは小さいですね。。。)
モルエントロピー S は物質によって大きく異なっている、と言ってよさそうです。

逆に言うと、温度によるエントロピー変化あるいは熱容量は、物質の個性=性質を探る良いツールになりうるということです。