解答
電子が、エネルギーの異なる二つのエネルギー準位を取る確率の「比」 N1/N0 は、次のボルツマン分布式で書かれる。
ここで ΔE は二つの準位(準位1 と 準位0)のエネルギー差である。
下記の図に示したように、準位0 を基準とすると、それより高いエネルギーを持つ準位1 に存在する電子の割合は指数関数に従って減少する。
(ΔE = 0 のとき、N1/N0 = 1 、すなわち N1 = N0 になっている。)
この式を使って、基底電子状態を取っている原子の数 N0 に対する、原子が各準位を取る確率(Nx/N0)を計算してみよう。
例として 第 1 励起状態の 300 K についての計算を示すと
となる。3 行目の準位(第2励起状態)だけは縮退度(同じエネルギーを持つ準位の数)が他の準位に比べて 2 倍なので、確率も 2 倍する必要がある。
全ての準位について計算すると
原子 | 電子配置 | 項の記号 | 存在確率の比 | |||
300 K | 1000 K | 2000 K | ||||
Li | 1s2 2s | 2S1/2 | 基底状態 | 1 | 1 | 1 |
1s2 2p | 2P1/2 | 第1励起状態 | 9.0 × 10−32 | 4.9 × 10−10 | 2.2 × 10−5 | |
2P3/2 | 第2励起状態 | 1.8 × 10−31 | 9.7 × 10−10 | 4.4 × 10−5 | ||
1s2 3p | 2S1/2 | 第3励起状態 | 2.1 × 10−57 | 1.0 × 10−17 | 3.2 × 10−9 |
上記の 2 行目の数値が解答となる。
一般に電子準位はエネルギー差が大きいので、室温ではほとんどすべての原子が基底状態にある。
それでも、温度が上がるにつれて励起状態にある原子の割合は増えていることがわかる。
ここでは基底状態に対する各準位の存在比を計算した。確率とするためには全ての準位の数値の和を取り、それで割らなくてはならない。(規格化 = 全体の和を 1 にする)
が、この問題では励起状態の存在確率はほとんど 0 に近いので、基底状態 に対する存在比をそのまま確率とみてよい。