21-19 標準モルエントロピー

まず数式を元に熱容量をプロットする。

熱容量は T の多項式で表されている。(式の中に単位?→19-19 参照)

 \displaystyle C^\circ_P / R = a + bT +c T^2 + d T^3  ... (1)

エクセルの一番左の行に T を 0 ~ 1000 K まで 1 K 刻みで用意し、
上式の a, b, c, d を入力すれば CP が表示されるようにしてみよう。

0~15 K はデバイの T3 則を使う。(教科書p.900)

 \displaystyle C_P / R = \frac{12 \pi^4}{5}\left(\frac{T}{\Theta_{\rm D}}\right)^3 
エクセルで計算した CP
エクセルで計算した CP

計算式の切り替わる温度 (15 K など)は行を2つ使って、前の計算式と後ろの計算式
(145.5 K なら固体の式と液体の式)の両方を計算している。

図示すると

21-19-2
シクロプロパンのCP

熱容量 CP はおおむね温度とともに増加していることがわかる。(振動エネルギーの影響→18-20参照)
液体領域は相転移前後の固体や気体に比べ、熱容量が大きい。

エントロピーの変化は CPT で割って積分すれば求められる。
(1)式を使えば

 \displaystyle \Delta S = \int^{T_2}_{T_1} \frac{C^\circ_P}{T} \, {\rm d}T  = \int^{T_2}_{T_1} \left( \frac{aR}{T} + bR +cR T + dR T^2 \right) {\rm d}T 
 \displaystyle \Delta S = aR\ln\frac{T_2}{T_1} + bR(T_2-T_1) + \frac{cR}{2}(T_2^2-T_1^2) + \frac{dR}{3} (T_2^3-T_1^3) 
... (2)

(2)式の T1 にはその式が有効な温度範囲の最初の温度(例えば15 K ~ 145.5 K なら 15 K) を、
T2 には S を求めたい温度(エクセルの一番左の列の温度) を用いる。

(2)式は定積分なので、T1 からの ΔS になっている。0 K からの S の絶対値を求めたいので、
前の式で計算した最後の温度 (例えば 15 K) での S を加える。

この操作は計算式の温度範囲が切り替わるたびに行う。
145.5 K では 固体→液体 の相転移が起こるので、相転移に伴う エントロピー変化分も加える。

 \displaystyle \Delta S_{\rm fus} = \frac{\Delta_{\rm fus} \bar{H}}{T_{\rm fus}} = \frac{5.44 \rm\ kJ\ mol^{-1}}{145.5 \rm\ K} = 37.4 \rm\ J\ K^{-1}\ mol^{-1} 

240.3 K でも同様の操作を行う。

21-19-3

得られた S を図示すると次のようになる。

シクロプロパンの S
シクロプロパンの S

上記の昇温操作は全て 1 bar で行われているので、上図がシクロプロパンの標準モルエントロピーとなる。
テーブルなどに与えられている 25°C の標準モルエントロピーは 上図青線の 298.15 K の値 237.2 J K−1 mol−1 である。(非理想性の補正 0.54 J K−1 mol−1 を加えるとより正確になる。)

相転移温度で不連続に S が増加している所に注意してほしい。これは相転移に伴う熱の吸収によるもので、ジャンプ幅は 融解時より蒸発時の方が大きい。
(グラフでは、ここを垂直な縦線でつないでも良い。)

下記にエクセルファイルを置くが、これは参考として、
ぜひ自力でグラフを描画できるよう挑戦してもらいたい。

21-19.xlsx